静かな旅
私は照りつける太陽を背に、馬車に乗っている。
リズムよく揺れる馬車にゆらりゆられながら、外を眺めていた。
これから私は、隣国であるフューリ国に出向かなくてはならない。
そこまで馬車で2日。
今は出発したばかり。当分かかる。
王女である手前、あまりのんきに寝てもいられない。
仕方がないため、外を眺めているほかなかった。
「休憩なさいますか?」
前から家臣の声が聞こえた。
一度降りたかったところだが、ここはあまり治安のいいところではない。
それに気づいた家臣がハッとした声で、
「申し訳ありません…」
静かに謝った。
私は気にも留めない。
ただ、このような馬車で旅をしているのも理由がある。
本来、もっと大きな事例で隣国に出向くときは、豪華な馬車に乗り、兵を多く連れて行くのだが、両国の小さな私事である場合、あまり豪勢に出向くことはしない。
私たちの国とフューリ国の間には、とても治安の悪いところがある。
殺人に窃盗等々、人身売買も例外ではない。
両国で話し合い、どうにかしようと試みあっているのだが、今のところ目立った進歩はなかった。
そこを通る際、襲われても困るため、連れて行く兵士は2人。隊長レベルの者であることが原則で、家臣は1人。そして、馬車は目立たぬ、小さなものであることを定めたのだった。
外にふと目をやる。
景色に目立った変わった変化はない。
静かなる草原がただ広大に広がっているだけだった。
そこに、1人の少女が見えた。
ジッとただずみ、私たちの馬車を見ている。
いや、正しくは…睨んでいる…。
一瞬、背中に電撃が走ったような寒気がした。
風が大きな音を立てて、私たちの馬車を揺さぶる。
その最中、私は外を見る。
そこに少女はいなかった。
ふと、耳に
「さよなら。」
と声が聞こえたような気がした。




