私の国
「風が…冷たい。」
独り言のように私は呟いた。
揺れる髪の毛に、朝日に照らされて光る緋色。
「世界はまだ美しかったのね…」
「ヤツキィア国の情勢は、あまり良いとは言えません…」
家臣たちが頭を下げながら話をする。
お父様が顔をしかめながら、頷いていた。
「やはり、ソン村の方か。」
「おそらく、そうだと思われます。」
ソン村…私たちのお城が構えるヤツキィア国の中で、最も貧困層だと言われるところだ。
餓死をする人に加え、強盗や殺人も数多起きている。
この国の資金力もまだ安定はしていないため、ソン村を助けられないのが現状だ。
なにせ、世代交代したのは約2年前。
その前の王は戦争が得意であったがために、国の資金をほぼ全て軍事に回していたのだ。
増えるのは武器と死体だけ。
あの頃は、とても恐ろしい国だった。
ところが、そんな王が急遽病死したことから、新たな王が必要となった。
そこで、わたしのお父様が長男であったため、現国王となったのだ。
まだ、収入源も危うい中、どう凌いでいくかが今のヤツキィア国最大の問題なのである。
「アリヒア、ご苦労であった。下がれ。」
「ハッ」
家臣…アリヒア。
私が気に入らない人の1人。
城内で、謀反を起こすのではと噂されている人物。
この人の父親は親衛隊隊長であった。
先王の時代では大活躍だったらしい。
だが、戦場で殺されてしまった…。
誰もが悲しんだが、先王は彼の父親に弔いの言葉一つもかけなかったという。
だからこそ、彼自身が王を恨んでいる…と。
「あんなにも使っておいて、悲しみすらもないのか。
この国は父上がいての国であったのだ。」
私はそう言っているのを、幼き時に聞いたことがあった。
その時のアリヒアの顔は今であっても、あの時以来見ていない。
人は大切な人を失うと、あんな顔をするのかと、幼き頃から思っていた。
あれ以来、私は彼に恐怖や疑心を持ったため、気に入ってはいない。
彼が立ち、部屋から出て行く。
彼は静かにハンカチを落とした。
「あ…っ」
彼は慌ててそれを拾う。
アリヒア…
貴方はなんて、愚かな人…




