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星空への願いと、魔法が解けるとき

レオンがゆっくりと広げた『秘密の書類』。


そこに描かれていたのは、大きくて可愛らしい、新しいお家の設計図でした。


「こ、これ……お家?」


【大人のママの姿をしたリリィ】が、目を丸くして身を乗り出しました。


「ああ。リリィも大きくなってきたし、君が魔法薬を作るための広い専用のお部屋も作ってあげたくてね。この書類は、新しいお家を建てるための約束の書類なんだ」


レオンは、目の前にいる『妻』に向かって照れくさそうに頭をかきました。


中身が娘だとは夢にも思っていません。


「指輪のこともあるし、どうしてもお金が必要だった。


だから、君たちには内緒で、夜中のパトロールのお仕事を増やしてもらっていたんだよ。


驚かせたくて黙っていたけれど……こんなに悲しませるくらいなら、最初から相談するべきだった」


「じゃ、じゃあ……パパとママがお別れするための『離婚の書類』じゃないの!?」


大人の口から飛び出した子供っぽい言葉に、レオンは「えっ?」と目をぱちくりとさせました。


「離婚!? まさか! 俺が君(エレナ)と別れるなんて、天地がひっくり返っても絶対にない!」


レオンは必死に首を振ります。


「俺は、君とリリィを世界で一番愛しているんだから!」


それを聞いた【大人のママの姿をしたリリィ】は、「わああっ!」と歓声を上げました。


「よかったぁ! パパとママ、ずっと一緒だぁ!!」


リリィは嬉しさのあまり、ママの大きな体でレオンの首にガバッと抱きつきました。


妻に突然子供のように抱きつかれたレオンは、「お、おい、急にどうしたんだ?」と真っ赤になって戸惑っています。


そのドタバタな様子をすぐ隣で見ていた【小さな娘の姿をしたエレナ】は、クスッと笑いました。


(ふふっ。パパったら、本当に不器用なんだから)


「ねえ、パパ! ママ! ベランダに出てみようよ! お星さまがとっても綺麗だよ!」


【小さな娘の姿をしたエレナ】は、二人の手を取ってベランダへと引っ張っていきました。


夜空には、キラキラと輝く満天の星が広がっていました。


実はエレナは、学校の帰りにあの怪しい魔法の雑貨屋さんに寄って、店主のおじさんから魔法の解き方を聞き出していたのです。


『キャンディの魔法を解きたいなら、星空の下で、心から本当に伝えたい素直な気持ちを口にすることさ』


【小さな娘の姿をしたエレナ】は、レオンの服の裾をツンツンと引っ張りました。


「パパ。今の気持ち、ちゃんとママの目を見て、もう一回伝えてあげて」


「え? あ、ああ……そうだな」


娘に促され、レオンは真剣な顔つきになりました。


そして、目の前にいる妻(中身はリリィ)の両手をそっと包み込み、まっすぐにその目を見つめました。


「エレナ。今まで寂しい思いをさせて、本当にごめん。


俺は、君とリリィの笑顔を守るためなら何だってできる。


心から愛しているよ。これからも、ずっと俺のそばにいてほしい」


それは、飾りのない、レオンの本当の気持ちでした。その言葉を、横にいる【中身が本物のエレナ】がしっかりと受け止めます。


その瞬間、夜空にスゥッと、一筋の大きな流れ星が光りました。


「あっ、流れ星!」


リリィが夜空を指差したその時です。


ポンッ!!!


再び、あの甘いイチゴの香りがする真っ白な煙が、二人をふんわりと包み込みました。


煙が晴れた後。そこには、自分の小さな両手を見て「わあ!」と喜ぶ8歳のリリィと、そして、自分の元の体に戻り、目に涙を浮かべて微笑む、大人のエレナの姿がありました。


ついに、ふしぎなキャンディの魔法が解けたのです。

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