↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
6/10

パパの秘密と、ショーウィンドウの指輪

お仕事が終わる時間。エレナ(姿はリリィ)は、詰め所の前でレオンが出てくるのを待っていました。


「パパ! おしごと、おつかれさま!」


元気に駆け寄ると、レオンは少し驚いた顔をした後、優しく微笑んでくれました。


「リリィ。迎えに来てくれたのか。ありがとう」


レオンは大きな手で、エレナ(リリィの小さな手)をギュッと握ってくれました。


その手は、剣を振るうためのマメがたくさんあって、ゴツゴツしているけれど、とても温かい手でした。


夕焼け空の下、二人は手をつないで家へ向かって歩き出します。


商店街を通りかかったとき、レオンがふと足を止めました。


そこは、キラキラした宝石が並ぶアクセサリー屋さんの前でした。


(パパ、どうしたのかな?)


エレナがショーウィンドウを覗き込むと、そこには小さな青い石がついた、銀色の指輪が飾られていました。


それを見た瞬間、エレナはハッと息をのみました。


(あの指輪……! 昔、私が売ってしまった指輪と同じだわ!)


リリィがまだ小さかった頃、レオンがお給料の少ない下っ端の警備隊員だったため、生活がとても苦しい時期がありました。


その時、エレナはレオンからもらった大切な結婚指輪を、家族のご飯のために泣く泣く手放してしまったのです。


「……ママは、あんな風に笑ってくれなくなったな」


レオンが、ショーウィンドウのガラス越しにポツリとつぶやきました。


「えっ?」


「俺に力がなくて、大切な指輪まで手放させてしまった。家ではいつも疲れた顔ばかりさせて……俺は、本当にダメな夫だ」


レオンは悲しそうに目を伏せ、ギュッと拳を握りました。


「でも、もう少しなんだ。待っていてくれ、エレナ……」


それは、誰に言うでもない、レオンの心からの本音でした。


エレナは胸が張り裂けそうになりました。


夫は、エレナのことを嫌いになったわけでも、冷たくなったわけでもありませんでした。


「指輪を手放させてしまった」という後悔をずっと抱えていて、妻に申し訳なくて、顔を合わせられなかっただけなのです。


(パパ……。私こそ、ごめんなさい。あなたの深い愛情に、少しも気づいていなかった……)


エレナの目に、涙がいっぱいあふれそうになりました。


でも、今は「リリィ」の姿です。ここで泣くわけにはいきません。


エレナは、つないでいるレオンの大きな手を、両手でギュッと握り返しました。


「パパ! ママはね、パパのことがだーいすきだよ! いつも頑張ってくれて、ありがとうって思ってるよ!」


精一杯の笑顔でそう伝えると、レオンは少しだけ目を丸くして、それから今日一番の、とても優しくて温かい笑顔を見せてくれました。


「ありがとう、リリィ。さあ、ママが待つお家に帰ろうか」


二人は夕日に照らされながら、ゆっくりと歩き出しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。