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ちっちゃなママ、魔法学校へ行く

「いってらっしゃーい! ママ、お勉強がんばってね!」


玄関で、エプロン姿の大きな娘(中身はリリィ)に見送られ、小さなママ(中身はエレナ)は、大きなランドセルを背負ってトコトコと歩き出しました。


今日はリリィが通う『魔法学校』の登校日です。


(まさか、32歳になってまた学校に通うことになるなんて……)


エレナは、子供の短い歩幅に慣れないまま、ため息をつきました。


学校に着くと、教室は元気な子供たちで大騒ぎです。


「あ、リリィ! おはよう!」


ツインテールの女の子、お友達のミアが駆け寄ってきました。


「お、おはよう……ミアちゃん」


エレナがドキドキしながら挨拶をすると、ミアはニコニコと笑いかけてきました。


「ねえねえリリィ、今日のお弁当は何? リリィのママって、魔法のお薬を作れるんでしょ? お料理もすっごく上手だって、いつもリリィが自慢してるから、私うらやましくって!」


「えっ……?」


エレナは目を丸くしました。


「それにさ、パパは街の警備隊長なんだよね! 悪いモンスターをやっつけて、みんなを守ってるんでしょ? リリィが『私のパパは世界一かっこいいんだよ!』っていつも言ってるよ!」


周りの男の子たちも「すげーよな!」と集まってきました。


エレナは胸の奥がギュッと締め付けられるのを感じました。


家では、いつも疲れて無口な夫と、イライラしてばかりの自分。


それなのにリリィは、外でこんなにも両親のことを誇らしげに、嬉しそうにお友達に話してくれていたのです。


「あ、そうだ! 昨日の図工の時間に描いた絵、廊下に貼り出されてるよ!」


ミアに手を引かれて廊下に出ると、そこには子供たちのカラフルな絵がたくさん並んでいました。


その中に、リリィの描いた絵がありました。


タイトルは『私の大好きなかぞく』。


画用紙の真ん中には、ニコニコと笑う大きなパパと、優しい笑顔のママ。


そして、その二人に両手をしっかりと繋いでもらって、満面の笑みを浮かべるリリィの姿が、色鮮やかなクレヨンで描かれていました。


絵の中の三人は、太陽の下でピクニックをして、本当に幸せそうです。


エレナは、その絵から目が離せなくなりました。


(リリィ……。本当は、こんな風に家族みんなで笑い合いたいのに。私たちが毎日冷たい空気でいるから、ずっと寂しい思いをさせていたのね……)


「パパとはもうダメかもしれない」


「離婚したほうがいいのかもしれない」。


そんなふうに、大人の都合ばかりで悩んでいた自分が、急に恥ずかしくなりました。


リリィは、あんなに冷え切った家の中でも、パパとママがまた笑い合える日を、ずっとずっと信じて待っていたのです。


「……うん。私、世界一のパパとママが、だーいすき!」


エレナは、リリィの声色を真似て、でも自分自身の心からの反省を込めて、ミアたちに向かってニッコリと笑いました。


(早く魔法を解いて、元の姿に戻らなきゃ。そして、もう一度パパとちゃんと話をしよう)


小さな胸の中で、ちっちゃなママは固く決意したのでした。

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