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朝の大パニック! 私がママで、ママが私?

「うーん……よく寝たぁ」


チュンチュンと小鳥が鳴く朝。


ベッドから起き上がったエレナは、大きく伸びをして目をこすりました。


(あれ……? なんだか、ベッドがすごく広く感じる……)


不思議に思って鏡の前に立ったエレナは、「ひゃっ!」と短い悲鳴を上げました。


鏡に映っていたのは、少し寝癖のついた水色のパジャマ姿の小さな女の子――8歳の娘、リリィだったからです。


「夢じゃ、なかったんだ……!」


昨日のおやつタイム。あのふしぎなキャンディを食べた瞬間から、ママ(エレナ)と娘(リリィ)の中身が入れ替わってしまったのです。


「ちょっと! ママ、起きなさい!」


エレナ(リリィの姿)は慌てて隣の部屋へ駆け込み、ベッドでスヤスヤと眠る『大人の自分の体』を揺さぶりました。


「んみゅ……? パパ、もうちょっと寝かせてぇ……」


むにゃむにゃと寝言を言いながら起き上がったのは、エレナの体に入ったリリィです。


自分の大きな手と、長い髪の毛を見て、リリィもようやく昨日の出来事を思い出しました。


「そうだ! 私、ママになっちゃったんだ! わぁい、大人のベッドってふかふかー!」


「喜んでる場合じゃないわよ! もうすぐパパが起きてきちゃうわ!」


もしパパに「中身が入れ替わった」なんてバレたら、きっと大変なことになります。


魔法の解き方がわかるまでは、なんとか『いつものパパと娘』を演じ切らなくてはなりません。


「リリィ! あなたはいつも通り朝ごはんの準備をして! 私は……ええと、おとなしく絵本でも読んでるわ!」


「まかせて! ママのお仕事なんて、パパッとかんたんだよ!」


リリィ(ママの姿)は自信満々でキッチンへ向かいました。


しかし、大人の体になっても、中身は8歳の女の子です。


重たいフライパンはうまく振れず、卵焼きは真っ黒こげ。


コーヒーを淹れようとして、お湯をこぼしてあわや大惨事です。


「ああっ、もう! コーヒーは私が淹れるから、あなたはパンを焼いてちょうだい!」


エレナ(リリィの姿)は、小さな体で一生懸命に踏み台にのぼり、手際よくコーヒーを準備します。


ガチャッ。


その時、リビングのドアが開いて、夫のレオンが起きてきました。


いつも通り、疲れた顔をして眉間にシワを寄せています。


「……おはよう」


低い声で挨拶するレオンを見て、二人はビクッと肩を揺らしました。


「お、お、おはよう! パパ! 今日もかっこいいね!」


リリィ(ママの姿)が、元気いっぱいにレオンの肩をバンバンと叩きました。


普段のエレナなら絶対にしないような、子供っぽい満面の笑みです。


「えっ……? ああ……おはよう、エレナ。なんだか今日は、やけに元気だな……」


レオンは目を丸くして、戸惑ったように妻を見つめました。


「コホン! おはようございます、あな……じゃなくて、パパ! 今日も一日、お仕事頑張ってくださいね!」


今度はエレナ(リリィの姿)が、両手を前で組んで、とても大人びた丁寧なお辞儀をしました。


「リリィ……? お前、そんな喋り方だったか?」


レオンはコーヒーカップを受け取りながら、首をかしげます。


(しまった! やりすぎたわ!)


エレナは焦って、「えへへ~、今日はお姉さんごっこなの!」と子供らしく誤魔化しました。


レオンはじっと二人を交互に見つめました。


心臓がバクバクと鳴り、もうダメだ、バレてしまう! と二人が目をギュッとつむったその時。


「……まぁいい。二人とも元気そうで何よりだ」


レオンは疲れたようにフッと息を吐くと、黒焦げの卵焼きには何も言わず、コーヒーだけを流し込んで立ち上がりました。


「それじゃ、行ってくる」


「いってらっしゃーい!」


「お気をつけて……じゃなくて、バイバーイ!」


バタン、とドアが閉まりました。


激務で疲れ果てているレオンは、妻と娘の様子がおかしいことに少し気づきながらも、深く追求する気力がなかったのです。


二人はその場にへなへなと座り込みました。


「はぁ~、心臓が止まるかと思った……」


「パパ、気づかなくてよかったね!」


ホッとしたのもつかの間。今日から魔法の解き方が見つかるまで、二人の「ヒミツの入れ替わり生活」が幕を開けたのです。

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