19 昔はカラオケのメニューによくあったけど、今はどうなんだろうか?
ギルドマスターと話をした日の夜。
夕食を終えて家に戻った俺は、リビングのソファに腰を下ろすと、何気なくスマートフォンを開いた。
「……八万超えたか」
思っていた以上に伸びている。
以前、セラフィナに初めて炭酸飲料を飲ませ、その反応を撮影した動画だ。
別にYouTuberとして本格的に活動するつもりがあったわけではない。面白半分で撮影し、せっかくだからと編集して投稿してみただけなのだが、セラフィナの反応がよほど面白かったらしい。
最初の一口で目を見開き、口元を押さえ、何を飲ませたのかと俺を睨みつけたくせに、しばらくすると恐る恐る二口目を飲む。あの一連の流れがウケたようで、投稿からしばらく経った今も再生数が増え続けていた。
八万再生。
テレビに出るような有名人ならともかく、素人が思いつきで投稿した動画としては十分すぎる数字だろう。
コメント欄を開いてみると、『この子リアクション良すぎる』『二口目いくのかわいい』『最初めっちゃ警戒してるのに最後普通に飲んでて草』など、セラフィナの反応を面白がるものが多い。その中に『また何か食わせてほしい』『後ろにいたもう一人の子も気になる』というコメントを見つけ、俺はスマートフォンから顔を上げた。
ちょうどエレオノーラがキッチンからお茶を持って戻ってくるところだった。
「エレオノーラ」
「はい?」
「動画、出てみる?」
「動画……あの、セラフィナがしゅわしゅわする飲み物を飲んでいたものですか?」
「そう、それ」
俺が答えると、隣にいたセラフィナがガタッと音を立ててこちらを振り向いた。どうやら聞き捨てならなかったらしい。
「ちなみに、あれ八万回見られたぞ」
そう教えてやるとセラフィナの表情が固まり、エレオノーラも「八万……?」と驚いたように聞き返してくる。
「お前が炭酸飲んで驚いてるところが、八万回も見られた。同じ人が何度も見ることもあるから、八万人が見たって意味ではないけどな」
俺が説明すると、エレオノーラは目を丸くしたあと、隣のセラフィナを見た。セラフィナは数秒ほどフリーズしていたが、やがて遅れて恥ずかしさが押し寄せてきたらしく、顔を真っ赤にして両手で覆ってしまう。
「今さら恥ずかしがっても遅いって」
俺が笑うと、顔を隠したまま首をぶんぶん横に振る。その様子を見ていたエレオノーラまで、口元を押さえて楽しそうに笑い始めた。
「それで、今度は私も出るのですか?」
「嫌じゃなければな。今度は二人でやってもらおうかと思ってる」
「私は構いません」
「顔も映るぞ?」
念のため確認する。
エレオノーラの顔には、今も古い火傷の痕が残っている。形成外科で治療を始めたとはいえ、すぐに消えるようなものではないし、それを不特定多数の人間に見られることへ抵抗があっても当然だと思っていた。
しかし、エレオノーラは少し考えただけでまっすぐ俺を見つめ、頷いた。
「はい。大丈夫です」
「本当に?」
「いつまでも隠れているわけにもいきませんから。それに――」
そう言って、エレオノーラがセラフィナを見る。
「セラフィナばかりそれほど多くの方に見られているのは、少しずるいです」
セラフィナが勢いよく顔を上げた。
俺も一瞬、返す言葉に詰まる。
「……意外と負けず嫌いなんだな」
「そうでしょうか?」
エレオノーラは澄ました顔をしているが、その口元にはいたずらっぽい笑みが浮かんでいる。セラフィナは納得がいかないらしく、そんな主君の横顔をじっと見つめていた。
本人がこれだけ乗り気なら、俺が余計な心配をする必要もなさそうだ。
「じゃあ決まり。実はもう企画も考えてある」
俺は立ち上がると、キッチンから大皿を持ってきた。そこには、見た目だけではまったく区別のつかない九個のたこ焼きが並んでいる。
「こちらです」
二人が揃って首を傾げた。
「たこ焼きっていう日本の食べ物。前に食べたことあったっけ?」
二人とも首を横に振る。
「小麦粉を溶いた生地の中にタコを入れて丸く焼いたものだ。普通に食えば美味い」
「普通に?」
エレオノーラが俺の言葉を見逃さなかった。
こういうところは妙に鋭い。
「九個のうち二個だけ、死ぬほど辛いソースが入ってる」
その一言で、二人の視線が揃って大皿へ落ちた。
「三人で順番に一個ずつ選んで食う。激辛を引いた人間が負け。ハズレは二個あるから、負けるのは二人だな」
セラフィナは俺の顔を見たあと、たこ焼きを見て、もう一度こちらへ視線を戻した。その目にはあからさまな警戒の色が浮かんでいる。
「大丈夫。毒じゃない」
安心させようとしたのに、なぜかさらに不信感に満ちた顔をされた。
「前回もそういう顔してたよな、お前」
◇ ◇ ◇
三脚を立ててスマートフォンを固定し、今回は俺も参加するため、三人全員が画面に収まるように位置を調整する。
中央に俺、左右にエレオノーラとセラフィナ。テーブルの真ん中には九個のたこ焼きが載った大皿を置き、画面を確認してから録画を開始した。
「はい、どうも。前回、友人に初めて炭酸を飲ませてみた動画が思った以上に見てもらえたので、調子に乗って第二回です」
俺がカメラへ向かって話している横で、セラフィナがなんとも言えないジト目を向けている。
「前回の主役、セラフィナです」
紹介すると、セラフィナは諦めたようにカメラへ軽く頭を下げた。
「そして今回はもう一人。初登場のエレオノーラ」
「よろしくお願いいたします」
エレオノーラは背筋をぴんと伸ばし、カメラへ向かって優雅に一礼する。
エレオノーラと話すときに使っているのは当然日本語ではないので、この辺りは編集するときに字幕を入れることになる。声を出せないセラフィナには、前回と同じように身振りや表情に合わせて字幕を添えれば、言いたいことは十分伝わるだろう。ただ、会話が増えれば増えるほど編集の手間も増えるので、今回の作業量を考えると今から少し憂鬱だった。
「そんなに畏まらなくていいって」
「ですが、ご挨拶はきちんとしませんと」
「YouTubeだから、もうちょっと気楽でいいんだよ」
「多くの方にご覧いただくのでしたら、なおさら必要ではありませんか?」
「……好きにしてください」
エレオノーラらしいといえば、実にエレオノーラらしい。こういうやり取りも字幕にして残しておけば、それなりに面白くなるだろう。
「で、今回やるのはこちら。ロシアンルーレットたこ焼き!」
俺は大皿を少し持ち上げ、カメラに見せる。
「九個のうち二個だけ、激辛ソースがたっぷり入っています。三人で順番に一個ずつ食べて、激辛を引いた二人が負けです」
するとエレオノーラが小さく手を挙げた。
「質問してもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
「ろしあんるーれっと、とは何でしょう?」
「あー……そこからか」
一瞬説明しようかとも思ったが、本物のロシアンルーレットについて詳しく教える必要もないだろう。
「知らなくていい。とにかく二個だけハズレがあると思ってくれればいい」
「分かりました」
素直に頷くエレオノーラの隣で、セラフィナはまだ大皿を検分するように警戒している。
「じゃあ最初は――」
俺が言いかけたところで、セラフィナがエレオノーラの前へそっと手を出し、そのあと自分の胸を指差した。
「最初に行く?」
確認すると力強く頷く。
こういうところは、さすが元近衛騎士というべきなのだろうか。単なる食べ物のゲームなのに、主君より先に危険を確かめようとしているようにも見える。
「じゃあセラフィナから」
俺が促すと、セラフィナは九個のたこ焼きを真剣な表情で見比べ始めた。右から左へ視線を動かし、ときどき顔を近づけて臭いを嗅ごうとしている姿は、たこ焼きを選んでいるというより敵陣の罠でも探しているようだ。
「そんなに見ても分からんぞ。俺もどれがハズレか知らないから」
そう言ってやっても慎重さは変わらず、しばらく悩んだ末に右端の一個を箸で取った。
覚悟を決めて口へ運び、ゆっくりと噛む。
俺とエレオノーラが反応を待っていると、数秒後、セラフィナの緊張していた顔が見る見るうちに緩み、最後にはパッと華やぐような満面の笑みになった。
「露骨に安心するなよ」
どうやら普通のたこ焼きだったらしい。
しかも初めて食べたたこ焼きそのものをいたく気に入ったようで、飲み込んだあとも大皿へ名残惜しそうな視線を送っている。
「まだあるから。次、エレオノーラ」
「はい」
エレオノーラはセラフィナとは対照的に、ほとんど迷わず中央付近の一個を選んだ。
「ずいぶん思い切りいいな」
「考えても分からないのでしょう?」
「まあ、そうだけど」
「でしたら、悩んでも仕方ありません」
もっともなことを言いながら、そのままたこ焼きを口へ運ぶ。
こちらも俺とセラフィナが固唾を呑んで見守っていたが、やがてエレオノーラはほっとしたように表情を緩めた。
「……美味しいです。中がとても柔らかくて、外側とは食感が――」
「普通だったのは分かったから、食レポまで始めなくていいって」
俺が遮ると、エレオノーラは少し不満そうな顔をした。どうやら感想を最後まで言いたかったらしい。
続いて俺も一個を選んで食べてみたが、口の中に広がったのは普通のたこ焼きの味だった。これで一周目は三人とも無傷ということになる。
二周目に入ると、最初にあれだけ慎重だったセラフィナも少し慣れたのか、今度はさほど迷わず一個を選んだ。ところがこれも普通で、飲み込んだ瞬間にまた嬉しそうな顔をする。
次のエレオノーラも無事だった。
「ここまで五個全部普通か。そろそろ来そうだな」
俺はそう言いながら自分の番の一個を取った。さすがに少し緊張したものの、噛んでみればこれも普通だったので、ほっと息を吐いて残りを確認する。
そこで、俺の手が止まった。
大皿に残っているのは三個。ここまで食べた六個は、すべて普通だった。
「……ちょっと待て」
俺の声にエレオノーラが首を傾げる。
「どうされました?」
「これ、かなりまずいことになってるぞ」
俺が残った三個を指差すと、エレオノーラもすぐに意味を理解したらしく、綺麗な笑顔がわずかに引きつった。
「つまり、残っている三つのうち……二つが辛いということですか?」
「そういうことになるな」
その会話を聞いていたセラフィナの顔からも、さっきまでの余裕がきれいに消え去った。
三つのうち二つがハズレ。次に選ぶセラフィナが無事でいられる確率は、三分の一しかない。
「セラフィナ、ここで普通のを引けば勝ち抜けだぞ」
励ますつもりで声をかけたのだが、本人にはプレッシャーにしかならなかったらしい。じろりと睨まれたあと、セラフィナは残った三個へ向き直った。
右の一個へ箸を伸ばしかけて止まり、今度は左へ動かしてまた止める。真ん中も気になるらしく、三個の間を何度も箸が行ったり来たりしていた。
「選んだところで中身は変わらないぞ」
また睨まれた。
それでも急かさずに待っていると、やがて覚悟を決めたらしいセラフィナが中央の一個を選んだ。箸で持ち上げ、しばらく見つめたあと、ギュッと目を閉じて一気に口へ入れる。
俺とエレオノーラも、思わず黙ってその様子を見守った。
セラフィナがゆっくり噛む。
一度、二度、三度と慎重に咀嚼しているが、今のところ表情に変化はない。そのまま飲み込んでから恐る恐る目を開け、数秒ほど何かを確かめるように口を動かしていたが――やがて、その口元がゆっくりと持ち上がった。
「……嘘だろ」
セラフィナはパッと顔を輝かせると、両手を上げてガッツポーズをした。
普通だった。
三分の一を見事に引き当てたのである。
「すごいですね、セラフィナ」
エレオノーラが感心したように言うと、セラフィナは得意げにふふんと胸を張る。
しかし、俺には素直に祝っている余裕などなかった。
残された大皿へ目を向ける。
たこ焼きは二個。そして、ハズレも二個。
「……ということは」
エレオノーラも同じ結論に辿り着いたらしく、笑顔のまま完全にフリーズした。
「はい。残った二個、どっちも激辛です」
もう右を選ぶか左を選ぶかで悩む意味すらない。
俺とエレオノーラが揃って死んだ目をして大皿を見つめていると、先ほどまで死刑宣告を待つような顔をしていたセラフィナの肩が、少しずつ震え始めた。
最初は安堵で震えているのかと思ったが、口元を押さえているのを見れば理由は明らかだった。
笑っている。
自分だけ助かったのが、よほど嬉しいらしい。
エレオノーラもそれに気づき、ゆっくりとセラフィナへ顔を向けた。
「……セラフィナ。ずいぶん嬉しそうですね?」
声はいつもと変わらず穏やかで、口元にも柔らかな笑みが浮かんでいる。それなのに、さっきまで震えていたセラフィナの肩がぴたりと止まった。
俺はその激しい温度差がおかしくて、思わず吹き出してしまった。
「今のは字幕にすると怖さが伝わらないな」
「タケシ様?」
「なんでもありません」
今度は同じ笑顔がこちらへ向けられたので、俺は余計なことを言わずに姿勢を正した。
さて、笑っていても激辛たこ焼きが消えてくれるわけではない。
「じゃあ、せーので食うか」
「……はい」
エレオノーラは腹を括ったように頷くと右側を取り、俺は残った左側を箸で摘まんだ。どちらもハズレだと分かっているので、さっきまでのような選ぶ楽しさは微塵もない。
「いくぞ。せーの」
二人同時に口へ入れた。
噛んだ瞬間、普通のたこ焼きの味がしたのはほんの一瞬だった。次の瞬間には舌の上へ刺すような強烈な辛さが広がり、その刺激が喉の奥まで一気に突き抜けてくる。
「辛っっ!!」
分かっていても、これは無理だ。
俺は反射的に椅子から立ち上がり、口元を押さえながらキッチンへ向かいかけたが、ふと隣のエレオノーラが気になって振り返った。
エレオノーラはまだ椅子に座っていて、背筋もぴんと伸びたままだ。しかし顔は耳まで真っ赤になり、大きな目にはうっすらと涙まで浮かんでいる。
「エレオノーラ、大丈夫?」
「……はい」
「辛い?」
「……少しだけです」
「絶対少しじゃないだろ!」
「少し……です」
気丈に答えているものの、声までプルプルと震えている。それでも王女としての意地なのか、辛いとは絶対に認めたくないらしい。
そのとき、またセラフィナの肩が震え始めた。
自分だけ無傷で済んだうえに、俺とエレオノーラが揃って涙目になっているのだから、よほど面白いのだろう。
エレオノーラが何も言わず、じっと涙目でセラフィナへ視線を向ける。それだけでセラフィナは一度笑うのを止めたものの、堪えきれなかったのか、また肩が小刻みに揺れ始めた。
「セラフィナ」
静かに名前を呼ばれ、今度こそセラフィナの動きが完全に止まった。
「あとで覚えておいてくださいね」
エレオノーラは涙を浮かべたまま、にっこり微笑んでいる。
セラフィナは完全に固まった。
「怖い怖い」
俺が笑うと、今度はエレオノーラがこちらを向いた。
「タケシ様もですよ?」
「なんで俺まで!?」
「このようなものを用意したのはタケシ様でしょう?」
「俺も一緒に食ってるんだから許してくれよ!」
抗議してみたものの、舌の痺れはまったく収まらない。
とうとう我慢できなくなって冷蔵庫へ向かい、牛乳を取り出して自分のコップへ注ごうとすると、後ろからエレオノーラの切羽詰まった声が飛んできた。
「タケシ様、申し訳ありませんが、私にもお願いします!」
「やっぱり辛いんじゃねえか!」
「……早くお願いします!」
「はいはい!」
俺は笑いながらもう一つコップを取り出し、牛乳をなみなみと注いでエレオノーラへ渡した。
彼女は「ありがとうございます」と礼だけはきちんと言ったものの、普段の上品さからは想像できない勢いで牛乳を一気に飲み始める。
その向かいでは、唯一無傷で勝ち抜けたセラフィナが楽しそうに俺たちを眺めていた。俺とエレオノーラが牛乳を飲んでいる間にも、何度も笑いを堪えるように口元を押さえている。
「お前、覚えてろよ」
俺が言うと、セラフィナはまったく反省する様子もなく、勝ち誇った顔で胸を張った。
すると牛乳を飲み終えたエレオノーラが、ハンカチで上品に口元を拭ってからセラフィナへ微笑みかける。
「ええ。次はセラフィナにも、存分に楽しんでもらえるものにしましょう」
その瞬間、セラフィナのドヤ顔がさーっと消え去った。
「それいいな」
俺もすぐに同意する。
セラフィナは慌てたように俺とエレオノーラを交互に見比べたが、もう遅い。しかも、カメラはまだ回り続けていた。
あとで確認するまでもなく、今日一番いいリアクションが撮れた気がする。
◇ ◇ ◇
翌日、仕事の合間を使って編集を終えた動画を投稿すると、前回の動画を見ていた人たちが早速気づいたらしく、しばらくすると次々にコメントが付き始めた。その日の仕事を終えて家へ戻り、リビングで改めて動画を開いてみると、コメントはさらに増えていた。
『残り3個になった瞬間の空気で草』
『セラフィナ三分の一引き当てたw』
『勝った瞬間めちゃくちゃ嬉しそうでかわいい』
『残り二人が確定ハズレなの笑う』
『エレオノーラ「ずいぶん嬉しそうですね?」←字幕だけでも圧がすごい』
『あとで覚えておいてくださいね、でセラフィナ固まるの好き』
『姫様、上品なのに涙目で意地張っててかわいいww』
『タケシも普通に巻き添えで草』
『最後セラフィナの顔から一瞬で血の気が引くところまで完璧』
『この三人ずっと見てられる』
コメントを読みながら、俺は昨夜の撮影を思い出して苦笑した。
異世界へ行けば、考えなければならないことはいくらでもあるし、最近は向こうで過ごしていても何かと慌ただしい。それでも家へ帰ってきて、三人でくだらないことをして笑っている時間まで難しいことを考える必要はないだろう。
むしろ、こういう何でもない時間があるからこそ、面倒事にも付き合っていけるのかもしれない。
「次は何を撮りましょうか?」
隣からエレオノーラがスマートフォンを覗き込んでくる。
「もう次やる気なの?」
「はい。とても楽しかったです」
あれだけ辛い思いをしたのに懲りていないらしい。
するとセラフィナもこちらへやってきて、自分も当然参加するというように何度も大きく頷いた。
「お前、次も参加する気?」
尋ねると、セラフィナは自信満々に胸を叩く。昨夜一人だけ勝ち抜けたせいで、すっかり調子に乗っているようだ。
俺はそんなセラフィナを眺めながら少し考えたあと、エレオノーラへ視線を向けた。
「じゃあ次は、セラフィナが逃げられない企画にするか」
「それがよろしいと思います」
エレオノーラもすぐに賛成し、二人揃ってセラフィナを見る。
ついさっきまで得意げだったセラフィナは、俺たちの顔を交互に見比べると、嫌な予感でもしたのか一歩だけ静かに後ずさった。
次の撮影も、どうやら退屈することはなさそうだった。




