『鬼畜のメメジェット』
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灼熱冥界を難なく攻略した俺達は次々と冥界攻略を進め、とうとう第八試練である阿鼻冥界へと辿り着いた。
ここに来るまでかなり苦労を強いられた。 相変わらず天変地異は厄介な上に高頻度で発生していて、すべてを避けて通ることはできなかった。
けれどメメジェットさんの機転が功をそうし、ここまで誰も脱落することなく順調に進んでいる。
ちなみに、第七試練の焼夷冥界は灼熱冥界の上位互換のような感じで、入ったと同時に全員が強制的に火傷の状態異常を付与される上に、天井から空襲のように降り注ぐ爆弾岩を避けながら大量に湧いて出るアンデットモンスターを対処するという鬼難易度の場所だった。
とはいってもこちらには並外れた頭脳を持つメメジェットさんがいたため、落下してくる爆弾岩に法則性があることを数秒で見抜き、もっとも効率がいい経路を演算してそこを駆け抜けるという対処を見せた。
ちなみに、湧いて出るアンデットモンスターは基本的にルタカへ丸投げ。
爆弾岩が落下して爆発に巻き込まれたとしてもヒールを掛けるだけで基本的に放置。 掛けたヒールはメガでもギガでもレクスでもなく、ただのヒールだけ。
ルタカが生きているのは奇跡だと思っている。
ボロボロの状態で試練を乗り越えた俺達に追いついて来たルタカには、今後は少し優しくしてあげてもいいかと思っている。
『次は阿鼻冥界か』
『今度こそルタカを置き去りにしてこようぜ』
『さっきの焼夷冥界でも生き残りやがったからなw』
どうやら視聴者たちは未だにルタカを許していないようだ。 おそらくメメジェットさんもそうなのだろう。
まあ、こいつがやったことを考えれば仕方がないのかとも思うが、いざ目の前で苦しんでいるこいつを見ると可愛そうな気持ちになる。
「今度はどういったご褒美が待ち受けているのでしょうねナイルボーイ! 僕、ワクワクしてきましたよ!」
「なんで喜んでんだお前?」
……前言撤回。 俺はこいつにどんな罰を与えればいいのか判断できない。
「ここまでの冥界はタイミングゲーでしたが、この試練はそう簡単には突破できません。 皆さん気を引き締めてくださいね」
「マジかよ、この流れで行くと焼夷冥界の上位互換的な感じかと思ってたのに。 ちなみにメメジェットさん、あらかじめここの攻略法を聞いてもいいですかね?」
「攻略法、ですか……強いて言うのなら、鎌の攻撃には絶対に当たらないでください。 あとは頭の上に出てくるカウントにさえ気をつけて貰えばさほど苦労はしないかと」
「なるほどボス戦か」
ここまで戦闘系の試練がなかったので、最後だからもしかして……と言う予想はしていた。
けれど冥界のボスと言われると、気のせいかもしれないが強そうに聞こえてしまうのである。
「黒湖さん、そう緊張することないですよ? 冥界のボスはレイドボスではなく、ただのダンジョンボスです」
「ダンジョンボスにただのもくそもないと思うんだけど」
「私はラーザ様を最強にするために、どのような敵が相手でも臨機応変に対応できるよう敵エネミーの特徴を熟知しています。 ましてやこの世界では、ラーザ様と実際にコミュニケーションも取れるのです。 抜かりはありません」
なぜだろう、今のセリフが心強い言葉に聞こえてしまった……という錯覚におちいっている気がする。
ともあれ、楽しみ方は褒められたものではなかったかも知れないが、ルタカもこのゲームはやり込んでいたわけだし、ほとんど初心者である俺やママが一緒でもどうにかなるだろう。
まあ、つい最近イアールト戦で起きたイレギュラーも想定しつつ、固くなりすぎないように挑もうと心に決め、最後の試練に向けて作戦会議を始めるのだった。
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作戦の立案はメメジェットさんが担当してくれた。 俺とママはセットでう右側から攻め、残り三人が左側から攻めるという挟み撃ち戦法。
ボスの攻撃範囲が広いため二チームに分かれて分散するのが効果的らしい、攻撃を回避する際は時計回りと念を置いて説明された。 とは言っても攻撃役に転じるのはおそらく俺達の方になるだろうからさほど気にすることもないだろう。
気合十分の状態で試練の間に足を踏み入れていく俺達。 すると、中に入った途端、頭上に数字が表示された。
表示された数字は九十九。 考えるまでもなくこれは俺のレベルだ。
ちらりと全員の様子を見てみたが、全員頭の上に俺と同じく九十九という数字が表示されていた。 俺だけ特別というわけではないのだろう。
試練の間はかなり開けた円形の空間で、白を貴重とした神殿のような造りになっている。 天井を支える太い柱が等間隔で展開しており、部屋の中央には漆黒のフードを被った巨大な骸骨が見える。
骸骨とは言ってもおそらくあれは実体化していない。 目視できるのは上半身だけで、半透明な白いシルエットで人体模型のようにきれいな骨格。
上半身だけなのに大きさは五メーター程度はあるだろう、幽霊という印象をつけるため足が湯気のように無くなるようなデザイン。 肩に担いでいる巨大な鎌は禍々しさを際立てており、死神と表現するのがしっくり来る。
「ああそう言えば、ここのボスはギガントレイスでしたか」
「死のカウントダウンが始まりました。 みなさん九十九秒以内に攻撃を当ててその数字がゼロにならないように気をつけて下さい。 ラーザ様は前衛へ、くれぐれも鎌に触れないようお願いします。 ジャストガードも厳禁です!」
「は?」
「なんなのさ?」
「あいわかった!」
勝手がわからない俺やママはキョトンとしてしまったが、現地人組であるラーザさんは適応能力が高い。
すぐさま盾を構えて突進していく。 ギガントレイスと呼ばれたエネミーは大ぶりに振り上げた鎌を横薙ぎにぐ振るうが、ラーザさんは盾を使わず身をかがめて回避。
「何ぼさっとしているんですか二人共、カウントが減る前に攻撃しないと死にますよ?」
「いやいやいや、説明少なすぎかよ! 俺達は右側から攻撃してくれとしか言われてないが?」
「むちゃ振りすぎるんだわさ!」
『ギガントレイスはちょっと特殊な戦闘スタイルでね』
『レベルと同じ数値で表示されてる頭上のそれはカウントダウン』
『簡単に説明すると、九十九秒以内に攻撃当てないと死ぬ』
「そういう大事なことはもっと早く教えてよ! なんでさっきの時点で誰も教えてくれなかったの?」
コメント欄を横目に確認しながら猛ダッシュでギガントレイスに肉薄する。 ママも俺に続いて装備していた長槍を構えた。
ソルジャーの基本武器は剣か槍で、槍は上級者向けで使い方が難しい。 しかしママは個人的な趣味が偏っているため、見た目の良さとノリで購入した真っ赤な槍を装備している。
「その心臓もらい受けるわさ!」
『レイスだから心臓はないと思う』
『あんまり突っ込みすぎると鎌の攻撃に引っかかるぞ』
『鎌の攻撃に当たればカウントをごっそりもっていかれるぞ?』
「ちょっ! ママ! 今突っ込むのはあかんやつだわ!」
ギガントレイスは鎌を振り上げており、予測できる攻撃の軌道上にママがいた。 今頃こんな事を言うのは酷かもしれないが、ママは俺やトト兄妹と違い、ゲームがものすごくうまいというわけではない。 むしろ、鈍臭いのである。
「おいありたむ! 無闇に前に出るでない! お前は筋肉兵団を召喚して後方から援護しろ!」
案の定、ママは振り下ろされた鎌を武器でガードしようとしている。
先ほどメメジェットさんからラーザさんに送られた指示を聞いていた俺はなんとなく理解している。 あの鎌を武器で防ぐのは愚策であるということに。
「うわっ! 一気にカウントが削られたじゃん!」
「残り六十秒しかなくなっちゃったんだわさ!」
鎌を防ぐことには成功したが、同時に頭上の数値はごっそりと削らた。 驚いたせいで踏ん張りがきかなくなってしまったのか、ママは数メーターの距離を吹き飛ばされる。
幸いふっ飛ばされただけでダメージはなく、ガードしたからHPにも増減がない。 相手が幽霊なため、鎌も霊体化してることを想像してヒヤッとしたが、ちゃんと槍でガードできたのは本当に幸いだった。
けれど、一度攻撃を防いだだけでカウントが三十近く削られた。 これを直撃は非常にまずいだろう。
その上、ギガントレイスは動きが遅いわけでもなく、ものすごい勢いで鎌を振り回して俺達を二人を近づけさせないよう大立ち回りを繰り広げている。
さらに、ギガントレイスの面倒なところはそれだけではなかったようで。
「魔法が来ますね。 そちらは喰らってもカウントに影響はありませんが、HPはかなり削られます。 こちらも攻撃範囲から逃れるようにして下さいね」
「メメジェットさん! マジで説明不足!」
『鬼畜のメメジェット』
『コントしている間にカウントがヤバいぞ』
『後三十秒でダメージ与えないと死ぬぞありたむ』
「ママ! ママ早く【生命の産出者】を!」
「助けてバーサーカー!」
焦る気持ちが早周り必死の形相で叫んだのだが、ママは地面で這いつくばりながらウィンドウを大量に表示させてはスワイプしてを繰り返していた。
恐怖のあまり涙でぐちゃぐちゃになりながら、必死にガングロマッチョ君を召喚し続けるママ。
そんな無様な召喚主を守るように、大量のガングロマッチョ君がずらりと並ぶ。 スタイリッシュになった完全体ガングロマッチョ君たちは瞬く間に十体以上召喚され、それぞれが好き勝手に突進し始める。
しかし大立ち回りを繰り広げるギガントレイスに近づけるガングロマッチョ君はおらず、瞬く間に召喚したすべてのガングロマッチョ君は黒い灰になって消えてしまった。
「ノォォォォォォォ!」
「オーマイゴッド!」
頭を抱えて悲鳴を上げる俺とママ。
しかしそんなタイミングで、後方で杖を構えていたメメジェットさんはまさかの一言を告げた。
「おおむね計算通りですね。 準備はいいですかラーザ様。 一気に片を付けましょう!」




