『精神と時のルームじゃねーんだぜ?』
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冥界編の概要をざっと説明された。
まず、セフメトにぶち転がされたプレーヤーは冥界で目を覚まし、たまたまその場に居合わせた相棒となるキャラクターが、冥界の中を案内してくれるんだとか。
その相棒に相談し、プレイヤーは冥界から出るために様々な試練、という名のダンジョンを攻略して現世を目指すらしい。
「それでね、この試練を重ねていく中でプレイヤーはある人達と出会うんだよ!」
ハートちゃんの目がキラキラし始めている。 またしても余計なうんちくを話し始める前に、先んじてオチを予想してしまおうと思う。
「なるほど、冥界には時間の流れが遅くなる感じのなんかすごい部屋があって、そこで修行すれば一日で一年分の修行量をこなせるようになるのか!」
「全然違います」
『精神と時のルームじゃねーんだぜ?』
『最後の月牙◯衝でも打つ気か?』
『そんな空間あったらきっとダ女神がいるぞ?』
真顔で全否定された。 いい線いってると思ったんだが?
「なるほど、なんとなくハートさんの思惑が分かってきました」
「さすがメメジェットさん。 頭の回転が早いね」
「でもメメジェットさんって頭の良さを無駄遣いする節があるよね」
「黒湖さん、溺死させますよ?」
目つきが怖かったメメジェットさんに平謝りしながら、遠慮がちに続きを促してみる。 するとメメジェットさんはそっぽを向きながらも自らの見解を語りだした。
「おそらく、ルタカさんを冥界に送ったのは、我々生者が冥界に入っても無事に出られるのかを確認したかったということですよね?」
「その通りだよメメジェットさん。 ぶっちゃけ、こいつだったら戻ってこなかったとしても別にどうということはなかったからね」
サラッとひどいことを言っているホープさんだったが、ルタカはなぜだか知らないが嬉しそうに頬を紅潮させている。 駄目だこいつ……早くなんとかしないと。
「つまり、ルタカさんがこうして帰ってきた以上安全の確認はできた。 しかしあなたがたの狙いはレアメス二世ですよね? おそらく彼のミイラはすでに風化しているかと思われます。 思惑はうまくいかないのではないですか?」
首を傾げながら問いかけるメメジェットさん。 あーそーゆーことね、完全に理解した←分かってない。
「そこはまあ、実証はできてないが作戦はあるよ? こちらにはありたむさんがいるからね」
ホープさんの言葉が終わると同時、全員の視線がママへと向く。 椅子に体操座りして口をニマニマさせながらイラストを描いていたママの方へ。
「ふひゃ! なんなんだわさ! あたくしはちゃんと話を聞いていたわさ!」
「嘘つくんじゃねえよ露出狂」
「お前って本当にブレねーよな」
「さすがですわ御母上。 今回のイラストも非常に尊い仕上がりになっておりますね」
『ちなみに何を描いていたのか気になる』
『今回のイラストは戦闘力いくつ?』
『ルゥーファちゃんが褒めるということは、なんとなく予想はつくけどね』
視線を集めている事に気がついたママはおどおどしながら姿勢を正していたが、話を聞いていないことくらい初めから分かっていたため、ホープさんは小さくため息をつきながら視線をメメジェットさんへ戻す。
「ゲームだった時に復活する条件は覚えてるよね? 死体がきれいな状態で保存されていること、魂が生前の記憶を失っていないこと。 この二つの条件さえあれば私達プレイヤーは教会で復活できた。 無論、共にダンジョンに潜っていた現地人も同様の条件だった」
「そうですが、レアメス二世は退位してから数年が経過しており、ミイラの状態も非常に悪いかと思われ……ああなるほど、だからありたむさんの能力が必要なのですね。 ですが、これは確証のない掛けになりますね」
一人納得しながら頷いているメメジェットさん。 話についていけない俺や現地人組はぽかんとしながら話し合いを眺めている。
『ナイル氏のために解説してやろう』
『おそらくトト兄妹は冥界から助っ人を呼ぼうとしている』
『レアメス二世の能力なら、王国軍のチートも封印できるだろうからな!』
コメント欄が二人の会話内容から予測できるこれからの行動を詳しく説明してくれた。
どうやらトト兄妹の狙いはすでに死んでしまった(設定の)現地人を蘇らせ、こちら側についてもらうということだったらしい。
コメントを読んでいくとその現地人はあの最強と名高い王国軍と非常に相性がいい《《能力》》をもっているようで、その人さえいれば確かに王国軍に追われるという脅威が緩和されるかも知れない。
個人的に《《固有スキル》》でなく《《能力》》と表現していた点が気になったのだが、ここは追求するとややこしくなりそうだから今はスルー。
トト兄妹がこのことを今まで話さなかったのは冥界から戻れる確証がなかったからだろう、安全確認もできない状態で冥界に行くのはリスクが高かったから仕方がない。
しかし先程二人も話していた通り、問題点としては冥界から復活するためにはきれいな状態で保存されている体が必要になるという事だった。 しかし復活させようとしてる人は死後ずいぶんと時間が経過しているようで、ミイラとして保存されていた彼の体はぼろぼろになっているらしい。
『おそらく生命の産出者でガワを作ろうとしているのだろう』
『ママが作ったガワに憑依合体させるんだよ』
『憑依100%させれば冥界から連れ出せるかも知れない』
「なるほど、分かってきたぞ? つまり王国軍対策の助っ人を復活させるためママにガワを描いてもらい、その助っ人さんの魂にはガワに入ってもらうというわけか」
「大方あっているけれど、その言い方だと新しいVTuberが産まれそうだね」
「なんだわさその興味深い話! 乗ったんだわさ! どんなイケメンを描けばいいのさ?」
ワクワクした顔でホープさんににじり寄っていくママ。 ホープさんは距離を詰めてきたママを鬱陶しそうに突き放し、あっけらかんとしていた俺達へ視線を送ってくる。
「そういうわけでこれから冥界に入ろうと思う。 せっかく専用武器を鍛冶師に預けたからすぐに取りに行きたいとは思うけど、優先順位的にはこっちのほうが優先だろう」
「レアメス二世がついていれば、王国軍に襲われたとしても対応できるようになるからね、彼が同行してくれたなら鍛冶師のところに武器を取りに行くのも楽になるはずだよ!」
トト兄妹から今回の作戦の旨味をプレゼンされ、俺はちらりとサラーマさんの様子をうかがう。 するとサラーマさんは手のひらを返しながら天井を仰いだ。
「好きにしろよ。 けどここの守りとかはどうすんだ? さすがに全員で行くわけにはいかねーだろ?」
「冥界には危険なモンスターがうろついていて、生者が入ったら問答無用で肉体と魂を剥離させようとしてくるって聞いたにゃ」
不安そうな顔で声を上げるサナさんに対し、ホープさんは満足げにうなずきながら肩にかかっていた髪を弾いた。
「まあ、今頃冥界の魔物に苦戦する私達ではないと思うけど、レイド戦でもないのにぞろぞろとみんなで行くのはかえって連携が困難になるだろうからね。 メメジェットさん、誰を連れていけばいいと思う?」
「そうですね。 ルタカさん、ありたむさんが確定となると、こちらの防衛も考えればせいぜい連れていけるのは三人。 冥界には九割型アンデットモンスターが出現するとなると、聖属性の攻撃ができる職業がふさわしいでしょう。 となると私も必須になる。 後は黒湖さんとラーザ様辺りではないでしょうか?」
「伴侶様が出向くのならば、わたくしも行きますわ?」
危機とした表情で素早く手を挙げるルゥーファちゃんだったが、またしても戦争が起こったり喧嘩が発生したら面倒だ。 面倒な芽は早々に潰すのがベストアンサー。
「ルゥーファちゃん、君にはこのアジトの防衛を頼みたいんだ。 信用できる君が残ってくれるのなら、俺は心置きなく冥界探索に没頭できる! 俺のお願い、聞いてくれないかな?」
爽やかな表情を意識しながらルゥーファちゃんにお願いすると、メメジェットさんから小声で「ナイスです黒湖さん」とお褒めの言葉を頂いた。
俺のお願いを聞いたルゥーファちゃんはもちろん——
「伴侶様のお願いとあってはお断りなんてできませんわ! 命に変えてもこのアジトを守ってみせましょう!」
——二つ返事でアジト防衛を快く受け入れてくれた。 チョロいぜほんと。
こうしてすんなりとメンバーが決定し、ホープさんは手を鳴らして全員の視線を集める。
「そういうわけだから早速行動しようか。 こっちの守りは私達に任せてもらって、坊やたちはくれぐれも慎重に探索するように。 まあ、ヤバいと思ったらルタカを捨て駒にしてくれていいから、自分たちの命を最優先にしてね」
ウインクしながら物騒なことを言っていたが、ルタカは嬉しそうに敬礼していたからまあ問題はないだろう。
こうして俺達は、王国軍対策の助っ人を呼ぶために、冥界へと足を運ぶ流れになったのだった。




