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俺だけ生配信中なんだが? 〜生配信中に異世界転移してしまった結果、配信切れなくなった件〜  作者: 【星願大聖】永福
第二回・レベリングツアースタート!

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『スカッとする一発頼むよ!』

 ◀︎

 【最後の砦】でギリギリHPを一で食いしばったハートとラーザ。 セフメトの打撃を二度もまともに喰らったバースィラ団長も、モンクのスキル【ど根性】でなんとか命を繋いでいる。


 団長に関してはモンク以外の職業だったら非常に危険だっただろう。


 そんな奇跡に肝を冷やしながらも、負傷者を一箇所にまとめて治癒に当たっていたメメジェットはほっと息をつく。 吐いた息は真っ白に染まっており、小刻みに震えながらも一点だけを注視していた。


「さ、寒い」


 目を覚ましたラーザがぶるりと体を震わせながらもそう呟く。 ゆっくりと目をあけた彼女は、目の前に広がっていた景色を目の当たりにして目を疑った。


「なんだこれは、まさかここは冥界か?」


 視界いっぱいに広がる銀世界を目の当たりにして、目を丸くするラーザ。


「ラーザ様! 目を覚されましたか!」


 声をかけられ視線を動かすと、真剣な表情のまま一点を注視しているメメジェット。 視線の先ではセフメトとナイルが目にも止まらぬ速度で殴り合っている。


「なっ! 黒湖ナイル、あやつはなぜセフメト様の打撃を平然と耐えている?」


「なぜだかよくわかりませんが、ステータスがとんでもない数値になっているようです」


 固有スキル【推しへの狂愛】を発動しているということは素で自覚がないメメジェットだったが、ラーザはそう言うものかと軽く流して気になることを問いかける。


「それはともかくとして、どうしてこの部屋は一面氷漬けになっている? 恐竜種たちが全て氷像になっているぞ?」


「ホープさんの仕業です。 中級魔法で科学反応を起こしたらしく、こんな有様になりました。 まあ、元々あの人の魔力はかなり高かったですから納得と言えば納得ですが……率直に言って私も意味不明です」


 魔法系スキルや治癒魔法による回復値は魔力依存で高くなるため、ウィザードやプリースト、パラディンなどの魔法を使うジョブは魔力数値も平均的に高めなければならない。


「かがくはんのう? つまり【魔法融合】は発動させず、タイミングをずらして砲水魔法ハイドロの後氷結魔法(グレイシヤ)を発動させて水を冷やしたということか?」


「え? ああ、ええまぁ、はい、そういうことなんですけれど……えーっと。 流石ですラーザ様! 博識なところも素敵です!」


 どうやらメメジェットは、一瞬なぜラーザが科学反応を理解できているのかを疑問に思ったらしいが、すぐに考えるのを辞めたらしい。


 ラーザ様は尊い。 それ以外は考えない。


「や、やめいやめい。 そんなことよりも、あの外道はどこだ? 恐竜種が塵になっていないということは、あやつはまだ生きているのだろう?」


 嬉しそうに尻尾を振りながらも問いかけてくるラーザだったが、


「あのクズなら部屋の端っこで凍えながらうずくまってますよ。 なんだかこんな状況でも無駄な足掻きをしようとしてますが……そんなことよりラーザ様、私達このままでは巻き添えを喰らいかねません」


「セフメト様と黒湖ナイルの戦いにか?」


「いいえ違います、ホープさんの魔法にです」


 ラーザはメメジェットに言われるままホープへ視線を移すと、足元に上級魔法の魔法陣を浮かばせたホープが目に入る。


 周囲の恐竜たちは氷像のように凍っているため、一人戦場にポツリと立っているホープは、堂々と優雅に詠唱時間が終わるまで硬直している。


「あの魔法陣は……【クインタシルド】なぜ防御魔法を?」


 クインタシルド、魔力を固めて作成した五重のシールドを作成するウィザード最強の防御魔法。 効果時間は三十秒とやや短いが、その防御力は桁外れ。


 ハートの理論によると、術者の防御力と攻め手の攻撃力に五百以上の差があれば物理攻撃でも破壊できるらしいが、冷静に考えれば普通はそんな現象おこらない。


 そしてホープは、詠唱したクインタシルドを自分ではなく今なお戦闘中のナイルたちを守るよう、ドーム状に展開した。


「ハート、起きろ」


 ホープが突然声を上げると、ラーザの隣で壁にもたれかかって寝ていたハートが目を覚ます。 再起動した殺戮兵器のような目の覚まし方に、思わず体をビクッとさせるラーザ。


「今から私がこの氷漬けになった恐竜種を一掃する。 メメジェットさんたちをクインタシルドで守れ」


 ハートはコクリと頷くと、すぐさま詠唱を始める。 クインタシルドの詠唱時間は十五秒。


 【無窮の探究者】を持つハートは、無論このスキルも使用可能。


「さて、大掃除の時間だ」


 ハートがクインタシルドの詠唱を始めたことを横目で確認したホープは、足元に二種類の魔法陣を浮かばせる。


 ひとつは紅の魔法陣。 もう一つは群青色の魔法陣。


 その二つの魔法陣を見たラーザは、眉をしかめながらも隣で詠唱を始めたハートに疑問を投げた。


煉獄魔法ヘルフレイム津波魔法タイダルウェイブ。 開闢魔法ビックバンを発動するつもりなのか?」


「それはない。 煉獄魔法の詠唱時間は二十秒。 対して津波魔法は十八秒。 合成するつもりなら同時に魔法陣を発動させたりしない。 あれだと先に津波魔法が発動しちゃうからね」


 目を覚ましたばかりだというのに、ハートは平然とした顔つきで答える。


 このゲームは魔法を発動させるための詠唱を本人が唱える必要はなく、決められた詠唱時間を待てばいいため、会話程度なら難なく行える。


「つまり、上級魔法同士で科学反応を起こすつもりなのですね」


 メメジェットの言葉に、先程起きたばかりで状況を掴めていないハートは一瞬首を傾げたが、ラーザが身振り手振りで化学反応の事を説明すると、ハートは顎を撫でながら考察を始めた。


「魔法融合なら開闢魔法になる組み合わせの魔法をタイミングをずらして発動させ、科学反応を起こすとなると。 これから起きるのは……クインタシルドで耐えられるのかな?」


 顔面蒼白するハートを見て、その青白さがラーザにも伝染する。


「そもそも、ホープさんはクインタシルドを貼ってません。 ゲームでの魔法だったなら自傷しないでしょうが、化学反応による自然現象は、自傷ダメージがあるのではないでしょうか? 現にホープさんの足元も、凍り付いていてあの場所から動けずにいます!」


 ナイルの体力管理をしているため、戦場から目をそらさないまま疑問を口にするメメジェット。 その瞬間、ハートのクインタシルドは詠唱が終わってしまい、メメジェットたちを包みこんだ。


「ちょっと待った! そういうことなら【最後の砦】は科学反応という現象に対して、制約として発動する保証ないじゃないか! もし発動しなかったら、お兄は魔法に巻き込まれて……」


 慌てて立ち上がろうとするハートだったが、清々しい笑みを浮かべながら視線を向けてくるホープと視線が重なり、言葉を飲んでしまう。


「安心しなよハート。 確率は二分の一だ。 知っているだろう? 私は運がいいんだから」


 数秒後。 ホープを中心とした地点で大爆発が発生し、耳をつんざくような音が鼓膜を刺した。

 

 ◁

 『イヤホンしてたから耳やられたわ』

 『同じく。 ってか、ホープさんは無事なの?』

 『演出的に極級魔法よりやばかったが、全員無事か?』

 

 突然発生した大爆発に、動揺をあらわにする視聴者達。 俺はセフメトを殴るのに必死で状況が全くわからなかったため、気がついたら半透明な魔力の防壁に守られていることに驚いた。


 まあ、その魔力の防壁もガラスのように砕けてしまっているが……


「皆さんすみません。 あんな大きな音が突然響くとは思わなくて、何も注意喚起できませんでした」

 

 『君は律儀すぎるのだよ。 いいから眼の前の女神さんをぶっ倒すことに集中しなさい』

 『メメジェットさんが絶妙なタイミングでヒールしてくれたおかげで、もう随分と追い込んだみたいだよ』

 『ホープさんたちのことはあっちに任せていいと思う』

 

 襲い来る恐竜種をホープさんが妨害してくれていたらしい。 俺は戦うのに夢中だったからみんなの声や周囲の状況は全然わからなかった。


 この生配信の画面は俺の視界や聴覚を共有しているため、視聴者達もそちらに関してはほとんど把握できていない。 ただ、ひとつだけ確かなのは……


「やっと膝をついたな。 セフメト」


 眼の前で肩を激しく上下させながら、鋭い眼光で俺を睨み上げてくるセフメト。


 動けないのだろうか、膝を地につけたまま立ち上がろうとしない。


 対して俺の気力も闘気も……HPにもまだまだ余裕がある。


「メメジェットさんのお陰で、何も気にしないで殴り続けられたからな。 歯ぁ食いしばれよ、最後はとびきりでかい一撃をくれてやっからよ」


 ぐっと拳を握りゆっくりとセフメトへと歩み寄っていく。 セフメトは動こうとしない、乱れた髪を整える余裕もなく、その表情はまさに満身創痍。


 コメント欄で視聴者達が教えてくれた。 推定HP五百万を超えるかもしれないと言われていたセフメトが、全耐性90%と言われていたセフメトが。


 俺の前で、無様に膝をついている。


 ありったけの自己強化スキルを発動させ、全神経を右の拳に集中させる。

 

 『行け行けナイル! オーバーキルしてしまえ!』

 『ここまで苦しめてくれた恨み、全力の一撃で返してやれ!』

 『スカッとする一発頼むよ!』

 

 過剰にかけたバフの影響で、固く握った拳が赤炎を灯す。 まるで、次の一撃の破壊力を具現化したかのように。


「さっきは片手一本で止められたが、この一撃はそうはいかねぇぞ!」


 大げさに右腕を振りかぶり、全身のバネをフル稼働させながら振りかぶった右拳を人体の弱点部位、鼻っ柱にぶち込む。


「奥義・改! 全身全霊、驚天動地のスーパーウルトラミラクルスーパー! アトミック阿修羅滅砕!」


 モンクの俺が発動できる最大威力の物理技。 モンクの闘技スキルは他のジョブとは違い、すべての技が拳でも発動できるというオマケ機能がある。

 

 『なんで大事なところでダサいネーミングの必殺技使うかな』

 『なんか威力やばすぎて拳からビーム出てる錯覚がw』

 『これは火事場の馬鹿力、いわば1000000%スマッシュの勢いだぞ!』

 

 真っ暗だったはずのダンジョン最奥のボス部屋に、太陽光が差し込んでいる。 ずっと室内にいたせいか、眩しくて思わず眼を細めながら一息つくと。


 眼の前には、炭のような真っ黒な塵が……雪のように舞っていた。

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