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俺だけ生配信中なんだが? 〜生配信中に異世界転移してしまった結果、配信切れなくなった件〜  作者: 【星願大聖】永福
第二回・レベリングツアースタート!

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60/71

『逃げてナイルくん! お願いだからはやく!』

 ◁

 王家の墓はもちろん高難易度ダンジョンだ。 設置されている罠はかなり危険な上に出没するアンデットモンスターは厄介なものが多い。

 

 けれど今の俺達はファイヤーム傭兵団きってのオールスターメンバーと言っても過言ではない。 故に罠を感知してもハートちゃんのお陰でするりとかわしてしまうし、デスサイズやエルダーヴァンパイアが当然のように現れたとしても……

 

「うらぁぁぁぁぁ!」

 

「南無阿弥陀仏!」

 

「坊や、真面目に戦ってくれる?」

 

 このようにモンクのツートップである俺と団長で瞬殺だ。 メメジェットさんの【神聖領域】を使うまでもなくサクサクと進むことができる。

 

 『おかしいな、モンクの闘技スキルに二重ふたえのなにがしは無いはずだが?』

 『刀使わないのに十本刀と言われてたアイツのマネしてるのかw』

 『ナイルくんは十四才の設定のはず、なぜそのネタを知っている?』

 

 とまあ薄暗い通路を慎重に進んでいき、出てきたモンスターは片っ端から俺達モンク組で撃破。 ルタカを乗せた荷車は手持ち無沙汰のラーザさんが引いており、ハートちゃんの指示に従って通路にあった小部屋を片っ端から調べつつ進むこと数分。

 

「ボス部屋だね」

 

「ここのボスは何だったかな?」

 

「確か怨念の騎士だった気がします」

 

 メメジェットさんの記憶力には驚きだったが、ボスの名前を聞いたトト兄妹はあからさまに嫌そうな顔をする。

 

「あの面倒なギミックがある騎士もどきか」

 

「確か第三形態まであったよね? 最初はなんのデバフだっけ?」

 

「強化スキル封じだった気がします」

 

 とまあやり込んだ猛者たちがそんな会話をする中、元NPC組と俺はぽかんとした顔のまま会話が終わるのを待つ。

 

「なぁ舎弟、お前もアイツラと同郷なんだろ? 何でお前は話し合いに参加しねぇんだ?」

 

「団長、何回も言ってますが俺は舎弟になった覚えは無いんですけど。 まあいいか……あの三人と比べると俺はペーペーだから、この世界のことよく分かんないんですよね」

 

「ふっ! 黒湖ナイルはペーペーだったのか! お似合いの言葉だな、ペーペーナイル! やーいやーいペーペーナイル! ちんちくりんの、ペーペーナイル」

 

 かまってちゃんをこじらせすぎてもはやウザキャラになりつつあるラーザさんだったが、心が広い俺は平常心を保ったまま、

 

「よーし戦争だ。 面貸してくださいよポンコツラーザさん」

 

「こんなときにふざけている場合じゃないよ坊や。 サクッとボスを倒してこのダンジョンを攻略しないと、サラーマくんに永遠と文句を聞かされるハメになる」

 

「まあ、文句だったら俺も聞いてあげますよ。 モンクだけに」

 

 沈黙

 

 『怨念の騎士は風の魔法と物理攻撃を融合させて斬撃飛ばしてくるのが厄介』

 『しかも攻撃頻度がなにげに高いんだよね』

 『強化無効の次は闘技スキル封じだっけ?』

 

「視聴者の皆さんまでシカトしないでもらえます? って、ちょっとみんな、置いて行かないでよ!」

 

 涙目の俺はいつの間にかその場に放置され、ホープさんを先頭にボス部屋に足を踏み入れていくのだった。

 

 ◁

 ボス部屋に入ったのだが、予想外というかなんというか、怨念の騎士っぽい見た目のボスは見当たらなかった。

 

 その代わり、広々とした部屋の中央には美しい容姿の女性が突っ立っている。

 

「なんか、思ったよりも騎士っぽくないですね。 あれじゃあ怨念の騎士って言うよりも魅惑の踊り子のほうがしっくり来るネーミングっすよ」

 

 黄金の髪はゆるい癖っ毛になっており、毛皮で作られたような布を肩にかけている裸足の美女。 容姿は恐ろしいほど整っており、衣装は金と赤を貴重にしたアラビアンスタイルの踊り子風。

 

 体全体に仰々しい柄の入れ墨が入ってはいるものの、スタイルも抜群で文句なしのモデル体型だろう。

 

 思わず見とれてしまいそうな美女の容姿を見て、魅惑の踊り子と表現した自分の表現力に浸っていたのだが、

 

「坊や……今すぐ撤退だ」

 

 ホープさんが緊張の糸を張り巡らせたような声でそう告げてくる。 不思議に思い、首を傾げながら視線を送ってみる。

 

 すると、目を見開いて額から大粒の汗をこぼし、恐怖を表情に貼り付けているホープさんが視界に映った。

 

 思いもしない表情に動揺し、他の仲間達の顔も確認してみると、俺以外の全員が恐怖のあまりに震えており、なにも知らない俺の方まで怖くなってきてしまう。

 

 『ちょっと! はやく逃げなきゃやばいよ!』

 『何してんのナイル氏! はやく逃げろ!』

 『やばいやばい! 本気でやばいって!』

 

 コメント欄も突然慌ただしくなり、頭の中が真っ白になる。 先程まで余裕綽々としていたホープさんや団長までもが恐怖する敵? 見た目は人間に近いからモンスターには見えない。

 

 神秘的なオーラを纏っているあの女性は、とてもではないがそこまで恐れるほどの相手には見えなかったのだ。

 

「絶対に大きい音を立ててはダメだよ。 あの化け物から目をそらしてもダメだ。 ゆっくりと入口まで戻って、すぐにこのダンジョンから脱出する」

 

 声を潜め、慎重に言葉を選んで指示を送ってくるホープさん。 あまりの雰囲気に体が強張る。

 

 けれど、ここで予想外だったのはこの場にいたのが俺達だけじゃなかったという問題だったのだ。

 

 ガタン!

 

 突然響いた物音に、俺は思わず魅惑の踊り子と名付けた美女から視線をそらし、音がした方へ視線を向ける。 すると、荷車に乗せていたルタカが目を覚ましており、勝ち誇ったような顔で身を捩っている光景を目の当たりにした。

 

 念の為入口の方に荷車を置いていたのだが、それでもルタカが響かせた音はこの部屋の中央で突っ立っていた美女の注目を集めるには十分すぎた。

 

「逃げろ舎弟!」

 

 突然肩を突き飛ばされ、驚きのあまり受け身も取れずにふっ飛ばされたが。 俺がいた場所からとてつもない勢いの衝撃波が飛んでくる。

 

「は?」

 

 背後の壁から轟音が轟くと、壁にめり込んで脱力する団長の姿が横目に写った。 全く持って、意味がわからない。

 

 『逃げてナイルくん! お願いだからはやく!』

 『超高速フレームの正拳突き! 間違いない』

 『破滅の女神セフメトが、何でこのダンジョンにいるんだよ?』

 

「せ、セフメト? それって死にイベに出てくるってホープさんが言ってた……」

 

「団長! セフメト様! なぜこのような所に!」

 

「戦っちゃダメだラーザちゃん! はやく撤退しないと全員死ぬぞ!」

 

 叫ぶようなホープさんの声が部屋の中にこだまする。

 

 ここでようやく状況が把握できてきた。 団長は、俺を庇ってぶっ飛ばされてしまったという事実を。

 

 途端、恐怖よりも先に怒りが湧いてくる。

 

 床に転がっていた俺はすぐに体勢を整え、力の限り地面を蹴り、弾かれたようにセフメトに突進する。

 

「阿修羅滅砕!」

 

 室内だろうと関係ない。 全力で打ち込まないとこっちがやられると思った。

 

 鋼の戦棒を力の限り振り抜き、セフメトと思われる美女の脳天に打ち付ける。

 

「少年? ボクが使った【最後の砦】で団長のHPはまだ残ってる! だから一旦落ち着いて!」

 

「メメジェットさん! 団長を連れてはやく逃げて! あれは無策で戦える相手じゃない!」

 

 トト兄妹の声を聞きながら、振り下ろした鋼の戦棒に違和感を感じて青ざめる。

 

「うそ、だろ?」

 

 セフメトは、俺が放った渾身の奥義……阿修羅滅砕を片手で受け止め、平然とした顔で俺を睨みつけていた。

 

 途端に総毛立つ。 恐怖のあまり呼吸が詰まる。

 

 俺の意識があったのはそこまで。 セフメトの反対の腕がぶれたのが視界の端に映った瞬間、眼の前が暗転してしまった。

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