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俺だけ生配信中なんだが? 〜生配信中に異世界転移してしまった結果、配信切れなくなった件〜  作者: 【星願大聖】永福
第二回・レベリングツアースタート!

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58/66

『戦闘中にラブコメを持ち込むんじゃねえ!』

 ◁

 ウィザードが優遇されている理由のひとつに爆発魔法(エクスプ)が強すぎるという理由が挙げられる。

 

 具体的に爆発魔法のなにがやばいか、クールタイムは二十五秒とかなり長い代わりに、発動スピードが早い上に破壊属性が付属されているため当たると防御力が減少する。 更に付け加えれば威力も高い上に、エフェクトが初級魔法の炎魔法フレアにそっくりなのだ。

 

 エフェクトが似てるのは大した脅威にならないだろうと言及されがちだが、対人戦においてこの二種類の魔法を見間違えるというのは非常に痛手となってしまう。

 

 なぜなら、炎魔法のクールタイムは六秒と短いが、爆発魔法は二十五秒と長い。 にも関わらず、炎魔法を爆発魔法と勘違いして大げさに避けてしまい、態勢を崩したところで本命の爆発魔法を喰らえばどうなるか。

 

 誰もが思うだろう、これなら炎魔法を喰らったほうがマシだと。

 

 エフェクトが似てるため成立する頭脳戦が発生し、一瞬でも気を抜けばそれは敗北に直結してしまうのだ。

 

 実際問題、俺もホープさんと初見で戦った際、爆発魔法を炎魔法と見間違えていたからな。 だって中級魔法を連射するというのは、理論上おかしいのだから。

 

 どこかの誰かさんが使うスキルのせいで、スキルクールタイムを半減させる自己強化スキルを二枚がけとかいう、頭が湧いてるとしか思えないコンボを使われない限り、こんな理不尽は成立しないのだ。

 

「おいやめろ! やめてくれ!」

 

 頭を抱えながら必死に逃げ惑うルタカ。 ホープさんはサディストのような笑みを浮かべながら、爆発魔法の雨を理不尽に降らせ続ける。

 

 ルタカを守ろうと大量のアイアンゴーレムが立ちふさがるが、面白いぐらいに破壊されていく。

 

 全ての爆発魔法は寸分違わずモンスターに直撃しているところを見るに、全ての魔法を適当に放っているわけではないだろう。 どんな思考能力しているのか?

 

 脳みそが四つくらいありそうなほどの正確さだ。

 

 通路が崩落しないか心配になるほどの爆発魔法の嵐を、俺達は安全圏から口をあんぐり開けて傍観することしかできない。

 

「おい舎弟、お前アレの中で本当に生き残ったのか?」

 

「らしいっすね。 あと俺、舎弟になったつもり無いっすよ?」

 

 ナチュラルに舎弟呼ばわりしてくる団長に釘を差すように返答する俺。

 

「信じられないですね」

 

「ボクはこの目で見てたから、間違いないよ。 でも軌道をよく見れば普通に避けられると思うけど?」

 

「ハート殿と黒湖ナイルは少々価値観がおかしいのではなかろうか?」

 

 ホープさんが魔物の群れを蹂躙するさまを見て戦々恐々としていると、精霊の恩恵の効果時間である三十秒がようやく経過した。

 

 黙々と上がる黒々しい煙の中、あんなに大量にいたアイアンゴーレムの影は一つも見当たらない。

 

 ルタカがあらかじめ設置していた転送陣も消えていて、分身体も姿を消している。 文字通り更地になってしまった戦場の中、地べたに這いつくばっていたルタカの姿が薄っすらと見えてきた。

 

「お得意の負けたフリからの一発逆転もあるからね、私はどっかのお上りさんと違って油断はしないよ?」

 

「くそ、くそくそクソクソクソ! クソがぁぁぁぁぁ!」

 

「あ、逃げた」

 

「追うよ少年! シーフは敏捷が全職業の中でもトップクラスなんだ!」

 

 叫びながらも一目散に逃げ始めるルタカに向け、ホープさんは冷静に杖を向ける。

 

「懸命な判断だ、けれどウィザードの攻撃範囲は君もよく分かっているだろう?」

 

風魔法ウィンドは不可視の範囲攻撃だから避けるのが難しい! それに初級魔法のためクールタイムも短いという利点があります!」

 

「メメジェット氏、解説はいいから早く追うよ!」

 

 追いついた際にプリーストのスキルが必要になるため、メメジェットさんの首に腕を回して足を掬うように持ち上げる。 一瞬小さな悲鳴みたいな声を上げるメメジェットさんだったが、俺の狙いがわかっているのか渋々と言った雰囲気で大人しくしていた。

 

 『ナチュラルにメメジェット氏を抱き上げるナイルくんに判決を下そう』

 『有罪、ラブコメの罪で晒し上げましょう』

 『このハーレム主人公め!』

 

 ルタカを追うために敏捷があまり高くないプリーストを担いでダッシュ、これは戦略上悪いことではない。 ラーザさんは逃げる敵を追い詰めるために必要なスキルはあまり持っていないのに対し、プリーストのメメジェットさんは様々なバフを配ったりできるのだ。

 

 そのバフの中にはもちろん敏捷を上げるものもある。 だからメメジェットさんを両手に抱えてダッシュするのは、決して悪いことではない! アサシンのハートちゃんならどうせ追いつけるだろうし!

 

「お姫様抱っことか、羨ましいなメメジェットさん」

 

「ハートさん、お口はチャックでお願いします。 これは戦略的お姫様抱っこです」

 

「新たな概念が生まれた瞬間を見たよ」

 

 なんて会話をかわしながらも、風魔法を足に喰らってよろけているルタカを追ってひたすら走る。 視聴者達のお陰で俺の敏捷は、このメンバーの中で最も高い。

 

 爆発魔法に巻き込まれないためかなり遠くから見てたせいもあり、走り出したタイミング的に差は数十メーターあったのだが、ホープさんの風魔法による攻撃が効いたのだろうか、ルタカには思ったよりも早く追いつけた。

 

「メメジェットさん、捕まっててくださいよ!」

 

「私に構わずぶちかまして下さい」

 

 両手は塞がっているため、ルタカの背中に飛び蹴りをかましてやろうと、踏ん張りながら声を掛ける。 するとメメジェットさんはシーツを俺の首に絡め、ぎゅっと密着してきた。

 

 あ、胸の辺りにふにゅっとした何かが当たっている、気がする……

 

 『こんな時になにいちゃついでんだ!』

 『もうお前ら早く付き合っちゃえよ』

 『戦闘中にラブコメを持ち込むんじゃねえ!』

 

 脳裏に駆ける煩悩を押し殺し、残り数歩の距離を横っ飛びしてルタカの背中に飛び蹴りを喰らわせる。

 

 しかしルタカもそれを危惧したのか、ギリギリのところで身代わりマントを装着し、難を逃れてきた。

 

 身代わりマントが破壊されると同時に、数メーターの距離をコロコロ転がっていくルタカ。 苦しそうな顔ですぐに体勢を整えるが、顔を上げたところにはすでに俺の鋼の戦棒を突きつけていた。

 

 ぎょっと目を見開くルタカを見下ろしながら、メメジェットさんにスキルを使用して貰う。 彼女を担いで走っていたのはこのためだった。

 

 【慈愛の精神】どんなダメージを与えても、敵のHPを一だけ残すという初心者育成用のスキルだ。

 

 これがあれば、オーバーダメージを与えてもギリギリ殺さずに済む。 今この状況においてこのスキルは、初心者育成用スキルではなく害悪プレーヤー捕縛用のスキルとなるわけだ。

 

「今度は油断なんてしねぇ、派手に死ね!」

 

「くそ、あとちょっとだったのに! あと少しの時間さえ稼げれば!」

 

 泣きわめきながら負け惜しみのようなセリフを吐くルタカの顔面に、鋼の戦棒をフルスイングでお見舞いしてやった。

 

 ◁

 HPが一になったルタカは白目をむいてぶっ倒れている。 お陰で拘束するのは楽勝だった。

 

 俺も一度瀕死になったことがあるが、リアル世界でHPが一割以下になると気絶してしまうらしいという経験談が、今頃になって役に立つとは思わなかった。

 

 捕縛のするために考えたこの作戦はメメジェットさんの発案だったが、こんなに簡単に済むのならここに来るまでの覚悟が少々気恥ずかしくなる思いだ。

 

 なんてことを思いながらとっ捕まえたルタカを紐でぐるぐる巻きにし、みんなが待っていたところまで引きずっていく。

 

 すると、俺達を追って走っていた仲間たちに遭遇した。 一番乗りはやはりというかなんというか、団長だった。

 

「ステータス二倍の効果はものすごいですね」

 

「やったか?」

 

「団長、なんでそういうヒヤヒヤするセリフ言っちゃうんですか」

 

「おいおい、あんだよその顔。 無事にとっ捕まえてんだからなにも問題なんて起きねえだろ?」

 

 フラグになりそうなセリフを聞いた俺は、思わず団長に細目を送ってしまうのだが、

 

「おお、さすが少年だ! きっちりルタカを捕まえたんだね!」

 

「く、くそぉ、ハート殿、スキルで自己強化して加速するのはズルですぞ!」

 

 どうやらラーザさんはハートちゃんと競争していたらしい。 ハートちゃんは自己強化で敏捷を上げたおかげでラーザさんよりも早く到着したらしいが、ラーザさんに関してはメメジェットさんの【推しへの狂愛】がある。

 

 つまり俺達に追いついてきた順にステータスがやばいというわけだ。

 

 集まった全員でルタカを厳重に捕縛していると、ずいぶんと遅れて息を切らしながら駆け寄ってくるホープさん。

 

「遅かったっすねホープさん」

 

「ぜぇーぜぇー、君たちの化け物ステータスと、私の一般人ステータスをくらべないでくれよ」

 

「なに言ってるんだお前、さっき一番化け物みたいな挙動してたくせに、アタイらを化け物扱いするんじゃねえ」

 

 皮肉な話しだ、この中では割とステータスがまともなはずのホープさんが、ハートちゃんのバフを受けていたとは言えモンスターの大軍を一網打尽にしていたのだ。

 

 ウィザードの強さや、ホープさんの頭の回転の速さを改めて思い知る。 逃げ始めたルタカに風魔法を当てるという単純な挙動ですら、攻撃の正確性がにじみ出ていたし……

 

 よく見ていたなら分かるだろう、さっきの爆発魔法の雨はただただ適当に乱射していたのではなく、一発一発の軌道を調整してより効率よくモンスターを弾き飛ばし、かつルタカを殺さないよう何発かかするように当てていたのだ。

 

 恐ろしいほどの集中力とプレイスキルを兼ね備えている、見ていて鳥肌が立ってしまったほどなのだから。

 

「さて、無事にルタカは捕縛できたみたいだが、問題があるね」

 

 息が整ったところで、ホープさんが眉間にシワを寄せながらそんな事を言い出す。

 

「問題? なにか気になることでもあんのか?」

 

「今、サラーマくんに連絡してみたんだけどね、表で暴れてる盗賊たちの制圧は終了したらしいんだけど、少々妙な問題が発生している」

 

 嫌な予感しかしないその言い回しに、俺は思わず団長を横目に睨んだ。

 

「ほらやっぱり、団長がフラグになりそうなこと言ったから」

 

「ちょっと待て、アタイはなにも悪くねえはずだ」

 

「余計な話はさておき、問題っていうのは単純なことだ。 ルタカが召喚したモンスターたちが消えていないんだ」

 

 ルタカが気絶していたのなら、すでに発動しているスキル効果は消えていてもおかしくない。 ならば一体、なぜ【生命の産出者】によって生み出されたモンスターたちは消えていないのだろうか?

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