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俺だけ生配信中なんだが? 〜生配信中に異世界転移してしまった結果、配信切れなくなった件〜  作者: 【星願大聖】永福
第二回・レベリングツアースタート!

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54/64

『あーあ、あっけなく終わる展開だったのに』

 ◁

 このゲームの場合、魔法やスキルを使用するとクールタイムが発生する。 連続で強力なスキルを発動できないよう、強力なものは長めのクールタイムが設定されるなどしてパワーバランスを調整しているのだ。

 

 しかしこのクールタイムには例外がある。 モンスターが付与してくるデバフや状態異常によって、通常のクールタイムよりも長い時間置かなければ発動することができなくなる場合だ。

 

 ルタカが召喚したモンスター。 例えばエルダーヴァンパイアは闘技スキルのクールタイムを遅延させるスキルを持ち、デスサイズに関しては強化スキルのクールタイムを遅らせる。

 

 スキルを中心に戦うウィザードにとって、この二種類のデバフは非常に厄介極まりない。 しかし、今回ルタカと戦っているのはウィザードではない。

 

「バカな! ドラゴンゾンビを一撃で沈めただと? 貴様はモンクのはずだ、なぜウォーリアー並み……いや、それ以上の破壊力を有している?」

 

「自分で考えろヘタクソ!」

 

 続け様にエルダーヴァンパイアの首が飛ぶ。 圧倒的な力を前に青ざめながら後ろに下がるルタカ。

 

「おお方、吸血鬼と死神でスキルのクールタイムを延長させ、屍龍の腐食の霧を使ってじわじわHPを削る算段だったのでしょう。 けれど、その戦法が脅威力を発するのはスキル中心のアタッカーだけです」

 

 メメジェットさんの嘲笑うような解説に、図星とばかりに顔をしかめるルタカ。

 

「ここで待っていればホープさんが来ると推測していたといいましたね、ルタカさん。 ホープさんを釣って、ここで倒そうという算段だったと言いたいのでしょうが……」

 

 歯を軋らせながら鬼面を作るルタカに、メメジェットさんは飄々とした態度で告げる。

 

「残念ながら、釣られたのは貴方だったみたいですね?」

 

 シーツの下ではさぞ悪人面で微笑んでいるのだろう。 ルタカは鼻息を荒げながら、唯一生き残っているデスサイズに指示を送る。

 

「十秒でいい! 持ちこたえろ!」

 

 デスサイズがその巨大な鎌を振り上げ、一気に俺へ肉薄してくるのだが。

 

「挑発!」

 

 絶妙なタイミングで発動された挑発スキルのせいで、デスサイズの標的は俺からラーザさんへと移行する。 攻撃が強制キャンセルされたことで、一瞬の隙が生まれた。

 

「ラーザさん、さすがっす」

 

「私を誰だと思っている黒湖ナイル。 世界最強のタンクだぞ?」

 

 今日一番のドヤ顔を向けてくるラーザさんを横目に、デスサイズが硬直した一瞬で頭を消し飛ばす。

 

 振り抜いた鋼の戦棒を構え直し、俺は呆れたようにため息を付きながら、

 

「そうですか。 ところで……このお遊びにはいつまで付き合えばいいんだ? ルタカさんよぉ!」

 

 極上な決め台詞を決めた。

 

 『極上な煽りだなw』

 『世界最強のタンクと世界最強の配信者w』

 『いつの間にかタンク教室になってるぞw』

 

「図に乗るんじゃありませんよ取り巻き共が!」

 

 ルタカは肩をわななかせながら手元のキーボードを操作するのと同時に、周囲で魔法陣が出現して大量のデュラハンがなだれ込んでくる。

 

「召喚陣ですか。 あらかじめ伏兵を呼ぶために仕掛けたのでしょうね。 おそらくすでに召喚していたモンスターをここに呼び寄せるつもりかと。 絶対に油断しないように!」

 

「ラーザさん!」

 

「分かっている!」

 

 大量に現れたデュラハンたちを的確に誘導し、一箇所にまとまったところを即座に掃討していく。

 

 瞬く間に消し飛んでいくデュラハンたちを横目に、焦りの表情を浮かべながら手元のキーボードを高速でタッピングし続けるルタカ。 新たなモンスターを召喚するつもりだろうが、そう何度も失態を犯すほど俺はバカじゃない。

 

「飛燕衝波!」

 

 モンクが覚える少々特殊な闘技スキル。

 

 その効果は、裂帛の気合とともに放つ渾身の一撃で空気を振動させ、遠距離にいる敵へ打撃ダメージを与える。 という誘い文句がついている飛ぶ打撃。

 

 この飛燕衝波は打撃が飛ばせる上に攻撃が不可視というかなり強力な闘技スキルであり、対人戦でモンクのジョブを選んでいる猛者はほとんどが多用する便利技。

 

 しかし、ホープさんほどの上級者ともなれば、この攻撃は直線上にしか飛ばないという欠点を知っているため、容易にかわすことができるだろう。 ……上級者ならという話しだが。

 

「ぬぐっ! ぉをのれ!」

 

「そのまま、一気に畳み掛けて下さい!」

 

 まんまと直撃したルタカは、苦しげに身を捩らせた。 流石に一撃で倒すのは無理だったか。

 

 喰らったダメージを軽減させるアイテムでも所持していたのだろう。 だが、やつの表情からしてかなりの大ダメージを与えたことは言うまでもない。

 

「お前、俺のこと舐めすぎだぜ?」

 

 鋼の戦棒をくるくると回し、カッコつけて構え直した後ラーザさんがかき集めたモンスターたちをふっとばし、床に広がっていた魔法陣を破壊する。

 

 残る魔法陣は後三つ。 もはや勝ったも同然。

 

 ホープさんを退けるほどの実力を持ったルタカというプレーヤーは、どんな切れ者なのかと緊張していたが……言うほどの強さではなかったため拍子抜けだ。

 

「俺はヘリポリ最強プレーヤーであるホープさんの身代わりマントを、マグレとは言え一度破壊した男だぜ? ホープさんからのお墨付きも貰ってんだ、お前ごときに手こずるかよ!」

 

「ちょっと黒湖さん! 油断してはいけません! まだ戦闘中なんですからね!」

 

 『ナイル氏、あんまり調子に乗りすぎると……』

 『あーあ、あっけなく終わる展開だったのに』

 『自らフラグ立てに行っちまったぞw』

 

 メメジェットさんやコメント欄が不穏なことをつぶやいているが、モンクとプリーストがいるというのにデュラハンを大量に呼び寄せるアホだ。 そう警戒するほどの相手ではないだろう。

 

「貴様、今なんて言いましたか?」

 

 しかし、飛燕衝波を喰らったわき腹を押さえながらうずくまっていたルタカは、突然声色を変えながら立ち上がる。

 

 俺は首を傾げながらも勝ち誇ったようなトーンで答えてやった。

 

「何度も言わせんな、俺はあのホープさんに認められた強者だって言ってんだよ」

 

「おい黒湖ナイル、まだ魔法陣は残っているのだ、油断するんじゃない!」

 

 敵を誘導しながらも、ラーザさんが必死に声を上げてくる。 だが、ルタカはクツクツと肩を揺らし始め、ゆったりと立ち上がって俺を睨みつけてくる。

 

「そうですか、君みたいなガキがホープの野郎に認められてたんですね。 せっかくなので名前を聞いてあげましょう、名乗りなさいクソガキ」

 

「我が名はナイル。 闇に潜み、闇を狩るもの」

 

 『やみってのは病みって書くのかな?』

 『厨二病も立派な病気だからな』

 『ナイルくんは闇の実力者になりたいのかな?』

 

「ほほう、ナイルというのですか。 喜びなさいナイルボーイ! 君をたった今、排除すべき邪魔者として認識してあげましたよ!」

 

「この状況でもまだイキるか! すぐに詰んでやるぜ三下!」

 

「黒湖さん! この愚か者!」

 

 狂気的な笑みを浮かべながら突撃しようかと思った瞬間、背後から慌てて接近してきたメメジェットさんに頭をひっぱたかれる。

 

「彼が召喚していたモンスターの大軍に、何がいたからこんな隠し通路を通ってきたと思ってるんです?」

 

 メメジェットさんの呼びかけを聞いて、初めて青ざめる俺。

 

「あ、これもしかしてヤバイやつ?」

 

「ルタカというプレーヤーは愚かですが、凡愚ではないのです! 敵の油断を誘うため、わざと敵の攻撃を食らうなどして騙し打つなど日常茶飯事! 黙ってトドメを刺さないといけない場面だというのに、何カッコつけてるんです? まんまと騙されてるくせにカッコつけてるとか、痛い人ですかあなたは!」

 

 それは、俺の黒歴史が増えた瞬間だった。

 

「そっちのシーツのほうは、中々頭がいいんですね? でも、もう遅いんですよ何もかも!」

 

 残っていた魔法陣から出現するモンスターのラインナップが、一気に様変わりしてしまう。

 

「これはもしかして、やっちゃった感じですか?」

 

「戦犯は貴様だ黒湖ナイル! この状況、どうしてくれるのだ!」

 

 うじゃうじゃ湧いてでていたデュラハンは、なんの悪夢なのだろうか? アイアンゴーレムに総替わり。

 

 このアイアンゴーレムが持つ脅威の物理耐性、特に打撃耐性を嫌って、俺達は隠し通路から侵入するという方法を取ったのだ。

 

 『ナイルくんが必要以上に煽るから』

 『初手で仕留め損なったナイル氏が戦犯』

 『まんまとルタカの負けたフリに騙されたナイルは土下座必須』

 

「確かさっき、釣られたのは僕の方だとかほざいていましたね? その言葉、そっくりそのまま返してあげますよ」

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