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俺だけ生配信中なんだが? 〜生配信中に異世界転移してしまった結果、配信切れなくなった件〜  作者: 【星願大聖】永福
第二回・レベリングツアースタート!

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『ナイルくん、ラーザ様まだ睨んでるから反応してあげれ』

 ◁

 王家の墓、ここにはこの世界を作り上げた歴代ファラオが埋葬されており、ファラオ達が眠る棺桶を守るために強力なアンデットモンスターが大量に生息する高難易度ダンジョン。 と言う設定の谷。

 

 ちなみに、現在この国のファラオはハレンドスさんである、この事実を聞いてから思った意見を率直に言わせてもらおう。

 

「時系列がおかしい」

 

「黒湖さん、そう言う細かいところを気にしていてはハゲてしまいますよ?」

 

 メメジェットさんの読みどおり、王家の墓には大量のモンスター、しかも軍団規模の数が巣食っていた。

 

 その数、高台から目視しただけでも軽く千を超える。 モンスターハウスなんて可愛いものである。

 

 その上軍団規模になってるモンスターのラインナップが大問題だ。

 

「デュラハンにスケルトンキング、ところどころにアイアンゴーレムか。 うーむ」

 

 唸りながら双眼鏡を覗き込むラーザさん。 悩む理由は多数ある。

 

 『脅威度的には全部虹サソリ並みだなw』

 『地獄を見た、いずれ立ち向かう地獄を』

 『アイアンゴーレムは打撃耐性鬼だからなw』

 

「メメジェットさん今何レベ?」

 

「六十二です」

 

「領域展開できるよね?」

 

「【神聖領域】のことですよね?」

 

「うんそれ」

 

 神聖領域というスキルは領域内にいる味方に聖属性を付与できるため、アンデットとの戦闘ではかなり強いのだが……

 

「おい黒湖ナイル。 現実逃避はよくないぞ、アイアンゴーレムもいるのだからそちらの対策を考えなければならない」

 

 モンクは基本的に打撃攻撃しかできない。 打撃攻撃は軟体の敵意外ほとんどの敵にダメージを与えることができるが、人型モンスター以外は比較的打撃耐性が高いのだ。

 

「ちなみに、鉱物系モンスターの打撃耐性は90%です」

 

「アホか、ウォーリアーがいればどうにかなっただろうけど、ラーザさんじゃ無理」

 

「無理とはなんだ! 喧嘩を売っているのか黒湖ナイル!」

 

「こんな時に限ってサラーマさんがいないからなぁ」

 

「よーしわかったぞ黒湖ナイル。 そこまで言うのなら仕方がない、アイアンゴーレムをより多く討伐できた方が、負けた方に言うことをきかせるという勝負をしよう!」

 

「むふふ♡ コッホン! ラーザ様、一度落ち着きましょう」

 

 腕をまくりながら超至近距離で睨みつけてくるラーザさんを軽くいなしていると、目をトロトロにしていたメメジェットさんがシーツをめくってスマートフォンを見せてくる。

 

「こんなこともあろうかと、予備案を持ってきました」

 

「何でもっと早く言わない?」

 

「私達が今いる高台はここです」

 

「軽くスルーするなよ」

 

 『きっとラーザ様とナイル君の喧嘩を見たかったんだろうね』

 『みなまで言うな若造』

 『ナイルくん、ラーザ様まだ睨んでるから反応してあげれ』

 

 メメジェットさんが見せてきたスマホの画面にはここら一帯の地形が細かく書かれた地図が表示されていた。 これもアプリの機能らしい。

 

「ヘリポリが人気ゲームだった頃はほとんどのプレーヤーが既存のダンジョンを周回してレベルを上げたり、時たま発生するレイドボスの討伐に勤しんだり。 基本的にこのゲームの世界観に関わる考察をする人は少なかったのです」

 

「まあ、戦闘システムとか相性の関係とかが中々凝ってるし分からんでもない」

 

「けれどこのゲームは世界観を重要視しているため、ダンジョン内には様々な模様の壁画や、王墓とついたダンジョンには実際に埋葬されたファラオが眠る隠し部屋があるのです」

 

「世界観を重要視? 時系列バラバラだし、紀元前約三千年前の神話を舞台にしてるくせに、恐竜のモンスターでてるけど?」

 

「で、す、が! プレーヤーが少なくなった昨今、コアなヘリポリ好きプレーヤーたちはバトル中心ではなく、探索や考察を中心にこのゲームを遊ぶ傾向が増えてきたのです」

 

「ねえ、さっきからシカトしないでよ」

 

 『メメジェット氏のスルースキルが強すぎる気がするーw』

 『さむ』

 『メメジェット氏を見習えよ、そこはスルーするーのが正解だぞ?』

 

「そして我々探索班は、ダンジョン内に隠し通路なるものが存在するという事実を発見したのです!」

 

「あ、まだ解説続いてたんだ」

 

 俺の小言がうるさい中、メメジェット氏の語り口調は徐々に語気を増していく。 おそらくあのシーツの下ではグッと拳を握っているのだろう。

 

「そして、私達の目的地でもある王家の墓にも隠し通路があることがファンたちの間で浮上したのです!」

 

「よし分かった、じゃあ隠し通路から侵入しようか」

 

 呆れたように俺が手のひらを返すと、ムスッとしながら口をすぼめてしまうラーザさん。

 

「なあなあ、隠し通路なんか使ったらあの大群と戦えなくなるのではないか? せっかく私がパラディンとしての素晴らしい立ち回りを披露しようと張り切っていたのに」

 

「ラーザさん頭大丈夫? 俺達の目的はモンスターを大量に倒すことじゃなくてルタカをとっ捕まえることなんだけど」

 

「そこまで言うのなら仕方がないですね、あの大群に正面から突撃しましょう」

 

「お前さっきまでの力説なんだったの?」

 

 華麗な手のひら返しを見せてくるメメジェットさんのせいで、盛大にズッコケてしまった。

 

 ◁

 なんやかんやあったが、メメジェットさんの案内に従って隠し通路に突入した。 途中、異常なまでに正面突破を提案してきたラーザさんには「犬も歩けば突撃に当たるで賞」を受賞させ、いつもどおりの口喧嘩をしていたわけなのだが……

 

 いざ、王家の墓から数百メートル離れた場所にたどり着くと、林の中にぽつんとひとつだけ設置されている墓標を発見。

 

 俺は少々テンション上がりながらもその墓標が何なのか確認しようとしたのだが、ケロッとした顔で墓標を押してしまうメメジェットさん。

 

「ちょっとメメジェットさん、知らない人のお墓をそんな乱暴にしたら罰が当たるよ?」

 

「そそそ、そうだぞメメジェットよ! もしかしたら偉大なお方の墓標かもしれん。 墓荒らしは呪われてしまうのだぞ?」

 

「安心して下さい、ここはただの隠し通路です」

 

 平然とした顔で墓標があった場所の下を指し示すメメジェットさん。 彼女が指し示した場所には地下へと繋がる階段があり、冒険心をくすぐってしまう展開に思わず感嘆の声が漏れてしまう。

 

「なんじゃこりゃ! 本当に隠し通路があるじゃあないか! テンション上がるぜまじで! どうやって見つけたのかな?」

 

「これは、一体どこに繋がる通路なのだ? 歴代ファラオの中の誰かが埋葬されている場所だったとしたら、大事では済まんぞ?」

 

 顔を青ざめさせながらあわあわしてしまうラーザさん。 確かに、この通路の先にファラオの中の誰かが祀られているとなったら世紀の大発見になるだろう。

 

「ここは葬祭殿に繋がる隠し通路とも言われていますし、墓荒らしが盗掘用に作った経路とも言われています。 個人的な見解が飛び交っているのでなにが正解とかは未だにわかりません。 論争は避けたいので隠し通路があるという事実にだけ納得してもらえると助かります」

 

「お、おう。 とりあえず行こうか?」

 

 『こんな所に隠し通路なんてあったの?』

 『初耳なんだがw』

 『お宝とかありそうじゃね?』

 

 視聴者の多くもこんな所に隠し通路があったという事実を知る人は少なかった。 本当に最近発見された通路なのだろう。

 

 さすがオープンワールドゲーム。 プレーヤーがどんなに多くても、こういった心踊る要素は探せばいくらでもある。 これだから探索はやめられない。

 

 とまあ感心するのはここまで。 いざメメジェット氏を先頭にして、周囲を心眼スキルで警戒しながら中に入っていく。

 

 長い下り階段の下には通路と言うより広間? と表現したくなる空間が広がっており、先が見えない長い長い通路の両脇には、高い天井を支える太い柱が等間隔で設置されていた。

 

 隠し通路と言う割には道や壁は象牙色の煉瓦で整備されており、松明も等間隔で置かれているため明かりにもさほど困らない。 雰囲気的にボス部屋への通路にしか見えないのはさておき……

 

 広い通路に出てからは先頭をラーザさんに配置換えして、しんがりを俺。 足音が響くほどの静寂は、逆に不気味で悪寒が走る。

 

「静かすぎて逆に怖いが」

 

「この通路にはモンスターは出ませんからね」

 

「ちょっと待て、この通路にはって言った? ってことは通路以外の場所には出ると?」

 

「はい、暫く進むと大部屋に出て、墓守の石像という物理耐性が非常に高いモンスターとボス戦闘になります。 動く石像みたいなものですよ。 素早さは低いのでシカトして進んでしまいましょう」

 

「結局物理耐性高い敵と遭遇しないといけないのかよ!」

 

 思わず悲鳴を上げながら頭を抱える。 すると、突然ラーザさんが盾を構えながら目つきを鋭くさせた。

 

「何者だ! 柱の裏にいるな? 匂いでわかるぞ」

 

 ラーザさんがパラディンとして神がかった立ち回りができるからくりは、この鋭すぎる嗅覚だ。

 

 背後にいる敵だろうと、視界が塞がっていようと匂いで敵の位置や味方の位置関係を把握できる。 つまり、敵が潜んでいてもラーザさんが一緒にいれば事前に察知できるのだ。

 

「その声、ラーザに間違いありませんね。 って事はやはり【完全擬態】を発動させなければ奇襲は無理ですか。 まあいい、ラーザがいるということはホープの野郎も一緒ですか?」

 

 無駄に芝居かかった声音を響かせながら、進行方向にあった柱の陰から黒髪のひょろ長い男が姿を表す。

 

 黒髪の男は化け狐のような細目をさらに細め、俺達三人の顔を順繰りに確認すると、

 

「ホープの野郎がいませんね? ヤツはこの通路の存在に気がついていなかったんですか?」

 

 小さくため息を付きながらそう答えてきた。 この状況、どっからどう考えてもあいつが俺達の標的で間違いないだろう。

 

 どうやらまんまと待ち伏せされてしまったらしい。

 

 まさかの展開に思わず額から大粒の汗が滴る。 しかし、黒髪の男をキッと睨みつけたメメジェットさんは、意外な一言を発したのだった。

 

「やっぱりいましたね、ルタカさん。 私の計算通りです!」

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