『友達の数聞いてるのにフォロワーの数で返答しやがった』
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モンスターハウスという罠を簡単に説明すると、部屋の中に湯水のごとくモンスターが沸いてでてくる部屋で、なんの嫌がらせかそのモンスター全て討伐するまで部屋から出られない。
本来ならこんな鬼畜な部屋、入った瞬間ゲームの電源を落とすかリセットしてダンジョンに入るところからやり直したくなるほどに面倒くさい。 部屋から出られる方法があるのなら有無を言わずに実行するだろう。
けれど、俺達は今、ゲーム内設定を模倣した異世界にいるのだ。 なにが言いたいかと言うとガチで全部倒さないと部屋から出られない。
絶&望的な状況下で、慌てて陣形を整える俺達。
「サラーマさんは後ろを! サナさんは俺とサラーマさんの間に入ってサポート! サーベルキャットで遊撃して下さい!」
「眷属召喚・サーベルキャット!」
「薙ぎ払い!」
サラーマさんの広範囲攻撃スキルが勃発。 背後から押し寄せていたモンスターたちをぶっ飛ばして息を整える時間を作ってくれた。
俺はそのファインプレーに称賛を送りながら前方から押し寄せてくるモンスターたちを対処。
「雪崩乱打!」
【雪崩連打】モンクの闘技スキル、秒間五発に及ぶ連続攻撃を使用して前方から押し寄せる敵を牽制。
さらに自己強化スキルである【ビルドアップ】で攻撃力と敏捷を上昇させ、【闘魂補充】でスキルの威力を半倍《1.5倍》させる。
雪崩乱打で軽く数十体を蹴散らせたのだが、それでも部屋の中にはうじゃうじゃとモンスターが沸いて出る。
「集合体恐怖症の視聴者様方、キモい映像を写してしまってすみません!」
『俺達の心配より自分の身を案じろw』
『律儀なところも可愛い』
『生意気なショタ設定どこ行ったw』
大規模な魚群のごとく湧いて出るモンスターたちを前に、俺達はパニック状態に近い。 一挙手一投足が生死を分けるこの緊迫した状況下で、俺はなけなしの冷静さを酷使して周囲の状況を把握。
ポップしているモンスターはアンデット系がほとんど、骸骨兵という名前そのまんまのモンスターや、ブラッドマミーやアシッドゾンビ。
モンクの俺は聖属性を帯びた攻撃も可能なため打撃でも対処可能。 対するサラーマさんやサナさんは今覚えてるスキルでは無属性の攻撃しかできない。
「ダメージ効率が悪いにゃ!」
サナさんが召喚したサーベルキャットが俺達の周辺を駆け回りながら骸骨兵たちの首筋に噛みついていたのだが、軽く仰け反る程度で大ダメージには至っていない。 同じくサナさんの狙撃も甲高い音を響かせるだけだし、サラーマさんの攻撃も敵をふっとばすことしかできていない。
歯を食いしばりながら土砂崩れのように押し寄せるモンスターの大群を押しのけていると、重要なことを思い出した。
「ハートちゃんがいねえ!」
「なんだと!」「あの子はなにしてんだにゃ!」
肝心要の頼りの綱であるハートちゃんがいないのだ。 こんなモンスターの大群がうごめく部屋の中ではぐれてしまっては、助け出すことなど不可能。
仲間を助けに行くことすらできない不甲斐なさに歯を食いしばるが、せめて彼女がどこにいるのかを把握するために心眼スキルを使用する。
すると、ハートちゃんが先程発動したプリーストの補助スキル【導きの光】によって照らされた天井付近にハートちゃんの姿を発見した。
「いた! 天井に張り付いてる! ハートちゃんは無事です!」
「それなら安心だが、張り付いてるだけじゃなくて俺達の手助けをしてほしいぜ!」
サラーマさんが文句を言いながらも斧を大ぶりに振り抜く。
ハートちゃんを見つけることはできたかもしれないが、依然として俺達の状況は劣勢のまま。
このゲームの熟練者であるハートちゃんに救助を求めなければお陀仏だろう。
「ハートちゃん! ヘルプミー!」
「導きの光が見えるかなー? 真下まで来てくれると助かるんだけどー」
全く緊張感のない声が帰ってきて、眉間にシワを寄せる俺達。
「無理に決まってんだろざけんじゃねえこのまな板女! またくすぐり地獄にしてやんぞごらぁ!」
「さっきから無茶ばっかり言って、本当に嫌なやつだにゃ! あいつ絶対友達少ないにゃ!」
「ちょ、ちょっと! 誰がまな板娘だって? それに、ボクにだって、ボクにだって友達くらいいるもん! フォロワーの数はギリギリ三桁言ってるもん!」
「まーまー二人共落ち着いて、俺がなんとか道を作りますから」
『ハートちゃんの涙目あざっす』
『友達の数聞いてるのにフォロワーの数で返答しやがった』
『察してやれよお前ら』
なんだか虚しい気分になりながら、苛立つ二人をなだめる俺。 仕方なく導きの光が見える方角へ雪崩乱打をお見舞いしながら少しずつ前進していく。
押し寄せるモンスターたちを聖銅の錫杖で突きまくりながらジリジリ前進していく中、後ろの二人はハートちゃんとガミガミ喧嘩しながら俺の死角から押し寄せるモンスターたちを撃退。
数十秒の時間をかけてようやく導きの光の真下へ到達すると、真上に張り付いていたハートちゃんに声を掛ける。
「着きましたよハートちゃん!」
「さっさとなんとかしやがれまな板娘!」
「責任取ってこの状況をどうにかするにゃ! 友達ゼロ人のぼっちちゃん!」
「く、くそー! ボクの悪口言ったこと、お兄に言いつけてやるんだからね!」
『ぼっちちゃんなのにイキってるぞw』
『イキってすみません』
『聞いて下さい、新曲・フォロワー三桁ラプソディー』
「【神聖領域】展開!」
「な、なに! 領域展開だと?」
「あれは、プリーストがレベル五十七で覚える特殊スキルじゃねえか!」
「領域内にいる味方全員の攻撃に聖属性を付与するスキルだにゃ!」
スキル名とともに一度は言ってみたいあのセリフを言いながら半透明の光のドームを形成するハートちゃん。 光のドームは俺達を余裕で覆う大きさで、広さ的にはテニスコート三つ分といったところだろうか?
『特級神官のハートちゃんなら領域展開だってできるんだぜ?』
『この術式の中に入っていると、すべての術式が聖属性となる』
『対処法は簡単、こちら側も領域を展開するんだ』
ハートちゃんの神聖領域のおかげで、今まで攻撃があまり通っていなかったサラーマさんやサナさん、サーベルキャットも含めた全員の攻撃が面白いくらいにモンスターたちを退けていく。
「薙ぎ払い!」
「うげっ! 今のなんすかサラーマさん! 攻撃範囲エグすぎでしょ、当たり判定ガバガバかよ! 亜空間タックル並の攻撃判定に大草原不可避!」
『懐かしい名前がでてきたw』
『サラマトスさんはたしかに水中でも戦えるからな』
『あのタックルには何度も殺意芽生えた思い出がw』
空間を捻じ曲げると噂の某理不尽タックルの名前とともにコメント欄が盛り上がる。
サラーマさんの闘技スキル、薙ぎ払いは今まで聖属性を帯びていなかったためその攻撃範囲が分かりづらかったのだが、いざ神聖領域の中でその闘技スキルを使用した途端、理不尽なほどに攻撃範囲が広いことが判明する。
亜空間薙ぎ払いに名前を変えたほうがいいレベルでモンスターたちが粉微塵になっていく。
「攻撃範囲が広いのは薙ぎ払いがすごいんじゃなくて、ウォーリアーの職業スキル【間合い延長】の効果だよ! ちなみにボクが【神信の教え】を使って君たちのスキル性能を上げているっていうのもあると思う」
「神信の教えっていうとプリーストのスキルか? プリーストって便利なんだな」
「メメちゃんはラーザさんを助けるためだけにプリーストを選んだって言ってたほどだからにゃ!」
「スキルの応用性ならアサシンのほうが上だもん! このダンジョンはアンデットが多いしマップが暗いからプリーストのスキルが便利に見えるだけだもん!」
なぜかプリーストに対して対抗心を燃やしているハートちゃんの主張を聞き流しながら、俺達は黙々とモンスターたちを狩り続けたのだった。




