35話 ぐーたらの仕方が分からない先輩
その日の晩は、明日のことなど気にするなと言わんばかりに夜更かしし、翌朝は眠りたい放題、昼過ぎ辺りまでぐーすかぴーと寝過ごす。
起きたら昼飯を簡単に作って、近所のスーパーに食材を買い出しに行き、それも済んだら晩飯を作る時間まではボケーっとお家時間を過ごす。
そんないい感じにぐーたらと過ごした日曜日が明けたら、月曜日の始まりだ。
日曜日をぐーすかぴーしてぐーたらと過ごした甲斐あって、痛気持ちいいくらいの筋肉痛と共に爽やかな、でも少しひんやりした朝を迎えられたので、いつもより少し早めに登校。
気温はようやくコンスタントに20℃を下回るようになった頃だな。
薄着するには肌寒く、厚着するには微妙に暑い、どちらかといえば少し我慢して薄着した方が快適なくらいの中途半端な気温の中、落ち葉が目立つようになってきた並木道を闊歩する。
うーん、いい感じに生温い……いや生涼しい気温だ。
なんて思っていたら、前の方から見覚えのある高めの身長に黒髪ショートの女子――大松先輩の後ろ姿が見えた。
あの先輩、この早い時間帯に登校してるのか。陸上部の朝練とかもあっただろうし、早起きは得意なんだろうな。
少しだけ足を早めて、大松先輩の左隣に付く。
「おはようございます、大松先輩」
「んぉ?あぁ、海石くんだね。おはよう」
相変わらずいつもちょっと気怠げというか抑揚が無いというか、血圧が低そうな返事をしてくる。
「大松先輩って、いつもこの時間帯なんですか?」
「そうだね。海石くんは……今日は早出?」
大松先輩からすれば、自分のいつもの時間帯には見られない生徒がいるから、少し新鮮かもしれないな。
「昨日をぐーたら過ごしましたからね、今日は早起き出来ました」
「ぐーたら。ぐーたら、か……」
すると何故か、大松先輩は深く考え込むような顔をする。
ぐーたらしてました、って言うことに何かあるのか?
「海石くん、単刀直入に訊きたい」
「は、なんでしょう?」
急に改まってきたぞ、何を訊くつもりだ?彼女とかいるの?とか聞くなよ、泣きたくなるからな。
「どうやったらぐーたら過ごせるのか、ぜひご教授いただきたく」
は? (思考停止)
どうやったらぐーたら過ごせるのか、だって?
「あの、先輩。それどういう質問ですか?」
「いや、だから、どうすればぐーたら出来るのかって」
なんじゃそりゃ!?
ぐーたらの仕方が分からないって、どういう理屈だ。
「えぇと……夜更かしして、昼まで寝て、スマホゲームしながらおやつ食べたり……堕落して過ごすこと、です?」
ぐーたらの方法なんていくらでもありそうなものなんだが……
「……夜更かしなんて無理だよ、眠いし。昼まで寝るのも無理、朝ごはん食べたいし」
ご老人ですかあんたは!?
いや、ここは健康的と言い換えよう……
「うーんと……栄養とか考えずに、食べたいものを好きなだけ食べるとかはどうでしょう?」
「そんなに食べたら逆に気持ち悪くならない?」
「…………じゃぁもう諦めて健康的に過ごしてください」
「ひどい。鬼神、大悪魔、邪智暴虐の腐れ外道」
とんでもない言われようだ。




