34話 スカウトチャンス
雪乃が欲しいものがあるコーナーを案内して回り、彼女がレジに向かうのを見送ってから、途中で止めていた作業に戻る。
結構な買い物をしていったから、意外と時間がかかってしまった。早く終わらせなければ。
気持ち急ぎ足で品出しを再開するものの、なかなかコンテナ内の商品が減らない、これはまだ時間がかかりそうだ。
「海石先輩」
すると、白根さんが声をかけてきた。
「ん、どうした白根さん?」
「在庫の整理が終わりましたので、こちらを手伝ってやってほしいとの指示を受けました。手伝います」
「おぉ、悪いな。助かるよ」
ふむ、時間が掛かっているから苦戦していると思われてしまったか。実際苦戦していたから、その通りなんだが。
「このコンテナの商品を並べればいいんですね。任せてください」
白根さんは大きく頷くと、コンテナの持ち手に指を滑り込ませて、やっぱり片手でヒョイと持ち上げた。
……そろそろ見慣れてきそうだ。
白根さんに手伝ってもらったおかげで、与えられた品出しを全て終えることが出来た。
その後にいくつか業務をこなした頃には、終了予定時刻が近付いており、ほんの少しだけ早くに上がることになった。
「二人とも、今日はありがとう。日雇いじゃなくて、長期的に続けてほしいくらいの働きぶりだったよ」
担当者さんから労いの言葉と、本来の日給とは別に色を付けてくれた金額の給与をいただいた。
なんでも、俺と白根さんのおかげで予定よりもずっとスムーズに業務が進んだから、その働きに応じて、担当者さんのポケットマネーから出してくれたらしい。ありがとうございます。
最後に白根さんと並んで「ありがとうございました」と一礼してから、共々ホームセンターを後にする。
「お疲れ様でした、海石先輩」
駐輪場で自転車を引っ張り出していると、白根さんが律儀に待ってくれていた。
「ん、お疲れさん」
わざわざ挨拶するために待っていたのか、律儀な人だな。
「あの、先輩。少し気になっていたことがありまして……」
「何だ?」
「昨日、あれだけの量のゴミ袋を捨てようとしていましたし、どこで何をしていたのかなと。お聞きしても?」
「あぁ、アレな。白根さんは、ウチの学園が毎年クリパ……クリスマスパーティを開くことは知ってるか?」
「はい。なんでも、生徒会が中心になって開くのだと聞きました」
……ん?もしやこれは、"チャンス"か?
「そう。そのクリパの準備のために、普段は使われていない第二生徒会室って場所を使うんだが、去年のクリパの準備とか後片付けがそのままの状態で放置されてるんだよ。だから、まずはそこの片付けから始まるって言う、変な風習があるらしい」
まぁ、こちらからの勧誘はしなくていいか。
向こうから申し出てくれればラッキー程度だろう。
「それで、その片付けであのゴミ袋が?」
「そういうことだ」
「生徒会も大変ですね……」
ここで「私も手伝いましょうか?」と言ってくれれば良しなんだが、生徒会の仕事だと思うと手伝いにくいか。
結局スカウトには失敗した。
白根さんは電車で来ていたらしいので、駅の近くまでは一緒に歩いていった。
「それじゃ、また学園で会ったら」
「はい。さようなら、先輩」
白根さんはぺこりとお辞儀して、改札を潜っていった。
さて、俺も帰りますか……




