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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第3部 【 群青の軌跡編 】
141/234

第132話 『 事の顛末とこれからの事 』

えー、定期更新とか言ったくせに更新頻度多くてすいません。書いてたら早く更新したい! ってうずうずしちゃって……。ということで第3部2話目だ!

『いいね、ブクマ、感想』などなど大募集中! 気になることがあればどしどし書き込んでくださいまし!

【 side颯太 】


 ―― 1 ――


「……という訳だ。これで、貴様の要求通り、イザベラに関して私なりに最大限の努力を尽くした。……もぐもぐ。美味い⁉」


 眉間に皺を寄せた顔も、みたらし団子一つ食べればたちまち頬が落ちる顔になる。目をキラキラさせる聖大天使――アムネトに苦笑しつつ、颯太は頭を下げた。


「本当にありがとう。俺が言うのもなんだけど、めちゃくちゃ苦労したろ?」

「当然だろう。本来ならば、天界の法に叛き、罪を背負わなくてよかった者まで故意的に反逆者にした。その大罪は処刑されて当然、私もそれに異論はなかった。それを懲役30万年に済ませたのだ。……本当に、どれだけ苦労したことか」

「分かってるって。だから、今日はお前の為にごちそうを用意したんだから」

「もぐもぐ……これくらいで……もぐもぐ……私の労力の、対価になると思うなよ」

「せめて食べ終えてから喋れよ」


 すっかり地球の食べ物に胃袋を掴まれてしまったアムネトに苦笑しながらも、颯太は内心で彼に深く感謝した。

 颯太とアリシアを陥れたイザベラはその後、アムネトの手によって天界へ連れ戻された。

 天界でアリシアを処刑させるために罪なき魂を保管所から解き放ったこと。禁書に触れたこと。許可もなく地球へ来訪し、神払聖羅に憑依したこと――彼女は罪を数えきれないほど犯した。その代償は重く、本来ならば処刑されるはずだったのだが、颯太の願望を渋々だが聞き入れてくれたアムネトが、イザベラの処刑判決を覆してくれたのだ。


 ――懲役30万年て。天使ってそれまで生きてるのかよ。


 それが、イザベラに科せられた懺悔の時間だった。

 イザベラに科せられた実刑判決は、人間の颯太では想像もつかない途方の時間間隔だった。普通に暮らしていれば颯太はとっくに死んでいて、転生でもしたら何千回も繰り返しているであろう時の流れ。ただ、地球と天界では時の流れは異なるので、もしかしたら、生きている内にイザベラともう一度会うことができるかもしれない。

 そんな期待を胸に込めつつ、颯太は「そういえば」と思い出した。


「イザベラに襲われた時、助けにきてくれてありがとな。ぶっちゃけ登場が遅すぎるから期待するのも途中で諦めてたんだけど、でも来てくれて本当に助かったわ」


 欲を言えば背中を引き裂かれる前に助けに来てほしかったのだが、颯太もそこまで恩知らずではない。そもそも、背中の傷も跡が残らずに済んだのとアリシアの愛顔に傷跡が残らなかったのはアムネトが治癒してくれたおかげだ。

 そう感謝すれば、アムネトは串を置いて茶を飲んでから答えた。


「私とて早く参上したかった。だが、地球へ行くのも時間が掛かるのだ。貴様の状況は私が渡しておいた輝石から把握できたが……まさかカミハラ・セイラにイザベラが憑依していたとは夢にも思うまい」

「だよな……」


 淡泊に告げるアムネトに颯太は苦笑。それから颯太はポケットにしまってあるアムネトから渡された〝お守り〟をテーブルに置くと、


「つーか。やっぱこれお守りじゃなかったんだな」

「私の力が籠ってるのは事実だ。効能も以前説明した通りの力はあるが、どうやら貴様にはこの輝石の効能は効かぬらしいな」

「じゃあこれただの盗聴器じゃねえか」


 こつこつと輝石を叩いて嫌味を言う颯太。

 アムネトから渡された時点で何かあるのだろうと思っていたが、まさかこれが盗聴器の役割を果たしていたとは思いもしなかった。おかげでアムネトに助けられたわけだが、業腹でもある訳で。


「お前、これでどこまで俺の私生活監視してたの?」


 一番気になっていたことを問い質せば、アムネトはお茶を啜りながら淡泊に答えた。


「安心しろ。貴様の私生活の全てを監視していたわけではない。生理現象や友との会話。そしてアリシア様との会話は少しだけ聞いて遮断させてもらった」

「なんでアリシアとの会話を遮断するんだよ……あー、嫉妬か」

「……うるさい」


 どうやら図星だったようで、アムネトは分かりやすく視線を逸らした。

 が、それはアムネトの思うような甘いことは起きていない。


「ぶっちゃけて言うと、お前から輝石(これ)渡されてから、俺とアリシアずっとぎくしゃくしてたんだよな。だからそれは懸念だったよ」

「なにしろ貴様が先に暴走してしまったからな」

「仰る通りで。……つーか、それは聞いてたのかよ」


 痛い所を突かれ、颯太はバツが悪くなる。

 イザベラに心を乱されたことでアリシアの暴走を促してしまい、挙句には自分が先に暴走してしまった。アリシアを独り占めしたい。そんな我欲に溺れてしまった。

 それについてはしっかり反省中なので、できればこれ以上話題にして欲しくないわけなのだが。


「お前との約束、守れなくて悪かったな」


 そう謝れば、アムネトははて、と小首を傾げた。


「なぜ貴様が謝る」

「いや、だって。結局俺、アリシアに悲しい思いをさせちゃったから。お前にも天帝様にも、アリシアは絶対幸せにする、って約束しただろ」


 そう言うと、アムネトはハッ、と鼻で笑った。


「天使でもない者が約束を絶対に守れると思ってなどおらんよ。貴様は人間。つまりはどこかで必ず(ほつ)れる時がくる」

「言い過ぎじゃないですかね」


 要するに、最初から颯太には期待していなかったということか。

 ガクリ、と肩を落とす颯太に、アムネトは「そう早とちりするな」と嘆息して続けた。


「だから天帝様も私も、貴様のその志に懸けたのだ。天使を幸せにする、そう大見えを切った貴様を、天帝様は気に入られたのだよ」

「そうなのか」


 澄ました顔のアムネトに、颯太は照れ臭くなって頬を掻く。

 喜ばしさに浸っていると、アムネトの目つきが鋭くなった。


「だからと言って、アリシアの暴走の件が片付いた訳ではないことを忘れるなよ」

「はいっ。重々承知しております」


 流石は天界で権威のある天使。その鋭い視線に、颯太は慌てて居住まいを正した。

 そう。忘れてはならないのだ。アリシアの暴走は。感情の起伏。それが臨界点に達した時、それがどんな被害を生むのかを。その片鱗を、颯太は見たから。


 ――あれは凄かったなぁ。


 教室の机と椅子の全てが地震が起きたように揺れて、いくつかが宙に浮かんだ。もし、あれがイザベラに襲い掛かっていたら、かなりグロテスクな惨状が完成していただろう。寸前の所で怒れるアリシアの意識を呼び戻せたのは奇跡だったかもしれない。


「なぁ、アリシアの神様の恩恵って、人間になってもまだ完全に消えてないんだよな」


 真剣な声でアムネトに訊けば、彼は「あぁ」と頷いた。


「まだ、天使だった頃の神様の恩恵はアリシア様の身に残り続けている」

「なんでだよ? だって、アリシアはもう完全に人間なはずだろ。アリシアだって、自分はもう天使じゃなくて人間だって信じてるし……」


 既に人としての人生を受け入れ、そして人としての成長を見せているアリシア。

 天使としての面影はその美貌と可愛さくらいなはずだが、しかしアムネトは颯太を数秒ジっと見つめた後、大仰にため息を吐いた。


「はぁ。これだから貴様は……いや、こればかりはアリシア様も同様か」

「なにがだよ?」


 なぜか呆れているアムネトにその先を促せば、彼は腕を組んで颯太に問いかけた。


「貴様、アリシアとはどこまで済ませた?」

「す、済ませたって何を?」

「ナニはナニだ」

「なんかすごく卑猥に聞こえるのは気のせいか?」


 思春期だからのか、いやそれにしてはアムネトの発言が「なに」の部分が強調されていた気がする。

 口ごもる颯太に、アムネトは平然とした顔で告げた。


「だから、貴様とアリシア様はまぐわったのかと聞いているのだ」

「まぐっ⁉ ……ゲホッ⁉ ゴホッ⁉」


 突拍子もなく確認されて、颯太は咳込んでしまう。まぐわう、とはつまり、アリシアと――


「してない⁉ 断じてしてない⁉ 俺たちはまだ清い関係です!」


 颯太は慌てて聖大天使に首を横に振った。それはもう、振り過ぎて酔うくらいに。


「俺とアリシアはまだキスしかしてないです! まだ彼女と一線は越えてないから! お前が思ってるほど俺たち進展してないから、だからどうかお慈悲をください!」


 これでアリシアを抱いた、といえばアムネトに消される気がして、颯太は全力で弁明した。

 颯太とアリシアはまだキスしかしていない。まあ、そのキスも一時の欲望に溺れてかなり大人のキスをしてしまったが、一番大事なのはアリシアと一線を越えたかどうかだ。あんなに宇宙一可愛い恋人を抱くのには颯太もかなりの覚悟がいるので、まだその覚悟も勇気も整っていなかった。故に、アリシアはまだ純潔なままだ。

 必死こいてアムネトに慈悲を乞いていると、


「別に、貴様がアリシア様とまぐわおうが私はどうとも思わん」

「ほへ?」


 とあまりに素っ気なく返されてしまったので、颯太も素っ頓狂な声を上げてしまった。


「貴様とアリシア様はすでに将来を誓いあった身なのだろう。ならば、遅かれ早かれその行為があるのは必然――大事なのは、アリシア様がまだ純潔であるかどうかだ」


 声音を落とすアムネトに、颯太もおのずと生唾を飲み込んだ。

 アリシアの処女の成否が、果たして天使としてどういう関係があるのだろうか。そう疑問を抱いていると、アムネトは颯太の目を見つめながら明かした。


「これは、おそらく貴様が決断しなければならないことだから教えてやろう」


 いいか、とアムネトはその先を継ぐと、


「アリシア様が完全に人間になるには、その純潔を失くす必要がある。つまり、アリシア様が純潔のままは、まだ天使のままなのだ」

「――――」


 アムネトから告げられた事実に、颯太はただ息を呑む。

 つまり、アリシアが真に人間になるには、颯太がアリシアの純潔を奪わなければならないということだ。それまでは、アリシアは人と天使の狭間にいることなる。


「なぁ、もし、俺がアリシアの純潔を奪わないまま、アリシアが死んだら、その時はどうなるんだ?」


 ありもしない可能性。でも、その可能性を聞きたかった。

 颯太の馬鹿げた質問に、けれどアムネトは真剣に答えてくれた。


「その時はおそらく、アリシア様は再び天使として生きることができる。彼女が天界で犯した罪は――もうない」

「――ッ!」


 アムネトの言葉に、颯太は瞠目する。


「アリシア様の罪は、消えたわけではない。しかし、その根本がイザベラの策略だったことは、私がイザベラを裁判にかけた時に既に説明してある。天帝様らも、アリシア様が魂を無許可に魂を導いたことに関しては咎めてはいるものの、もうアリシア様が勝手に保管所から魂を連れ出し、故意で導いたとは思ってない。そして、人の暮らしが変わっていくように、天界はこれから変わり始めていく。――貴様が天界を変えたことで、アリシア様の未来が変わったのだ」

「それは、喜んでいいことなのかな」

「誇れ。貴様はもう一度、アリシアに未来の選択肢を与えたのだ」


 アムネトの賛美に、颯太の心を嬉しさともどかしさが半分ずつ埋めた。

 アリシアが天使としてまた生きられる、その可能性は颯太も心の底から嬉しかった。だって彼女は、もう一度天界の住人として暮らせて、天使としての矜持と使命を全うできるのだから。もし、アリシアが天界で暮らしたいと申し出れば、その時は、颯太は喜んで彼女を見送るだろう。いまも視える、あの青い空にぽつんと浮かぶ天界。あそこは、アリシアの大切な故郷なのだから。

 どうするべきか、そう苦悩している頭に、アムネトの吐息が聞こえた。


「貴様が何を考えているかは知らんが。おそらく貴様の憂いていることは起こらんよ」

「どうしてそう言い切れるんだよ」


 そう言い返せば、アムネトは「気づかんのか貴様は」と落胆された。


「アリシア様は、地球(ここ)での生活ではなく、貴様との生活を望んでおられる。アリシア様はもう、貴様と生涯を遂げることしか考えておられないだろうな」

「……アムネト」


 そう言ったアムネトの声音が、どこか寂寥感に満ちていた。彼は今もどこかで、アリシアが天使として天界に戻ってきてくれるのを期待しているのかもしれない。

 一瞬、空気が重くなるも、アムネトはその空気をすぐに霧散させると、


「ともかく、アリシアはおそらく、既に人と生き、人として生涯を全うする覚悟はできているはずだ――あとは、この先の貴様の覚悟しだいだ」

「……簡単に言うなよ」


 纏めに掛かったアムネトに、颯太は重圧な責任を課せられてため息を溢す。

 生涯を尽くして大切にしたいアリシアの未来。これから大空へ羽ばたかんとするアリシアに、どう説明すればいいのか。


「アリシアがまだ天使だってことも、暴走のことも……説明しなきゃいけないことが多すぎる」


 一つ問題が解決してもまた次の問題が生まれて、先が全く見えない。

 そんな苦心する少年を、天使は団子を頬張りながら眺めていた。


「ま、せいぜい苦悩することだな。人間よ」


 ―― Fin ――

 

 

 



はたして颯太がアリシアと一つになる日はいつになるのでしょうねぇ。

あ、明日は最強姉弟を書くのでたぶんお休みです。

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