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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第二部 【 紫惑の懺悔編 】
138/234

第129話 『 キミと、アナタと――描く未来 』

ついに第2部終話です! アリシアと、颯太がこれからどんな未来を描くのか、読者様はどうぞお楽しみください!

さぁ、天メソ劇場の開演でございます――

【 side颯太/アリシア 】


 ―― 43 ――


 以前にも、似た感覚だった。

 ふわふわ、海の中を漂っているような、そんな感覚。

 自分が死んでいるのか、生きているのかすら曖昧で、目的もなく彷徨っている。

 そこで、ふと声が聞こえたきがした。


 ――颯太ァ。良かったな。お前、見つけれたんだなぁ。


 それは野太くて、ガラガラな声。でも、不思議と心地よい声音だった。


 ――もう、何も心配いらねぇな。お前はもう、歩いて行ける。


 ふと、背中越しで笑いかけてくれた。

 そんな背中に、微笑みを向けた。


 ――うん。もう大丈夫だよ。爺ちゃん。


 深い意識の海で、それは淡い光になった。


 ――ほら、早く行ってこい。嬢ちゃんが待ってらぁ。

 ――急かなすなって。言われなくとも、行くから。


 これが現実なのか。それとも夢なのか、あるいは妄想なのか。どちらかは分からないけれど、颯太はどうでもよかった。

 だってもう一度、自分の幸せを願った祖父――勝也と僅かだけで話すことができたのだから。

 振り返る。

 もう、祖父の背は見えない。

 でも、その必要はない。


 ――行ってくるよ、爺ちゃん。


 だって颯太が向かうのは、過去ではなく――未来なのだから。


 ――あぁ。行ってこい。颯太。


 勝也の声援を追い風として、颯太は深い海を浮上していく。目指す先に、颯太を待っている子がいるから。

 そして、颯太は長い夢から目を醒ました――。


 ***********


「――ん」


 ゆっくりと瞼を開けば、目先に穏やかに微笑む少女が映った。


「おはようございます。ソウタさん」

「おはよう。アリシア」


 向けられる笑みを噛みしめながらおはよう、と返せば、颯太はあ、と気付く。


「膝枕されてる」

「はい。膝枕です」

「どれくらい寝てた?」

「十分くらいですかね」

「そっか。なら、もうちょっとアリシアの膝枕堪能させて」

「えぇ。存分に味わってください」


 まだ体に気だるさを感じて、颯太は甘えようとすればアリシアは快く受け入れてくれた。了承も得たので、颯太はもう暫くアリシアの膝枕を堪能した。

 そして、颯太はアリシアに自分が眠りついてしまった後の事の顛末を聞いた。


「俺、最後の方で意識が完全に途切れちゃったんだけど、あの後どうなったの? 俺、完全に死んだと思ったんだけど……」


 倦怠感以外は体の不快感はなく、あれほど激痛が続きだった背中も、痛みを感じなかった。

 不思議に感じていると、アリシアが「それはですね」と説明してくれた。


「アムネトが、私たちの傷を治してくれたんですよ」

「アムネトが?」


 まさかの天使が傷を治癒してくれた事実に、颯太は目を瞬かせた。そんな颯太に、アリシアは続けた。


「これは天界としての不祥事で、本来ならば傷つかなくていい者たちが傷ついてしまった。その責任は聖大天使の私にある、と言って、天界の法ギリギリで私たちの傷を治してくれたんです」

「――そっか。なら、今度ちゃんとお礼しなきゃだな」

「えぇ。ですから、今度地球(こっち)に来た時は美味しい物食べさせろ、ですって」

「なんかムカッとした。寿司に大量のわさび入れてやろう」

「こーら」


 めっ、とアリシアに叱られながらも、颯太は内心、アムネトに強く感謝する。

自分の傷はともかく、アリシアの傷だって相当深かったはずだ。顔が擦り傷だらけで口からも血が出ていた。でも、今のアリシアの顔は、いつも通り愛らしく、そして女神のような美しさだった。むしろ、以前よりもぐっと魅力的に見えるのは気のせいか。


「……アリシア、可愛くなったね」

「今それいいます⁉ 凄く恥ずかしいんですけど⁉」


 可愛い、と賛美を送られて頬を朱らめるアリシア。離れたいのだろうが颯太に膝枕しているせいで想うように動けず、悶々とするアリシアに笑みが零れる。


「……幸せだなぁ。俺」


 胸に温もりを感じていると、悶々としていたアリシアがくすりと笑った。そして、金色の双眸が愛おし気に細くなった。


「随分と、気持ちよさそうに寝てましたよ」

「うん。良い夢見れたから」

「いい夢?」


 眉根を寄せるアリシアに、颯太は夢の内容を語った。


「爺ちゃんに会った」

「そうですか。それは、凄く良い夢ですね」

「うん。頑張れって、背中押してもらった。あと、アリシアのこと大切にしろだって」

「あはは。まさか、お爺様にまで言われてしまうとは」

「本当にね。余計なお世話だよ。言われなくても、アリシアは俺が絶対幸せにする」


 目の前の少女に、そして胸の中に思い出として在る祖父に向かって、颯太は強く誓う。

 そう誓って――


「でもその前に、けじめをつけなきゃ」

「けじめ?」


 小言を吐いて、颯太はアリシアの膝枕から頭を浮かせた。それから上半身を起こせば、真っ直ぐにアリシアと見つめ合う。

 そして一つ息を吐いて、颯太は頭を下げた。


「アリシア。今までごめんね」

「――――」


 謝れば、アリシアが何も言わず、ただ颯太の贖罪に耳を傾けてくれた。


「俺、アリシアがずっと寂しいって知ってたのに、忙しさを理由に見て見ぬフリしてた。ずっと、俺の為に頑張ってくれてたのに、それにちゃんとお礼も言えなくて、苦しい思いばかりさせた。本当に、ごめん」


 優先順位はとっくに決めていたはずなのに、いつの間にか根本がすり替わっていた。アリシアの為ではなく、自分のやるべき事を優先してしまったのだ。なのに、彼女に自由であってほしいと願ったのは、どうしもなく颯太の我儘だった。

 自分への不甲斐なさに奥歯を噛むと――アリシアが口を開いた。


「それなら、私の方こそ、ごめんなさい」

「――え?」


 なぜかアリシアも頭を下げて、その事に颯太は戸惑った。


「どうしてアリシアが謝るんだよ……」


 すると彼女は、申し訳なさそうな顔しながら言った。


「だって私の方こそ、ソウタさんの気持ちを考えてなかったんです。あなたに好きになって欲しくて、あなたの手放したくなくて、ずっとあなたを振り回してた」

「そんなの。アリシアが俺のことを好きだからだろ」

「はい。大好きです。でも、それが行き過ぎてしまったから、ソウタさんに酷い事を言ってしまった」


 裏切り者と、そう言われたことを思い出す。でもあれは、颯太に問題があるはずだ。


「アリシアは悪くないよ。俺がもっと、アリシアに一途だったら、そもそもイザベラの策略に嵌らなかったわけだし……もっと慎重に行動して、アリシアの気持ちを聞いてたら、キミにこんな悲しい思いをさせなかった」

「それなら私も同罪ですよ! 私がもっとソウタさんだけじゃなくて周りを見ていればセイラさんにイザベラが憑依していることに気付けたはずなのに、自分のことしか見えなくなってしまったから、ソウタさんに苦しい思いを味わせてしまった……」


 互いに一歩も譲らず、自分の方が悪かったと主張する。

 どちらも、同じように反省しなければない点がいくつもあった。


「俺は、これからはアリシアの話をもっと聞くようにする」

「私は、これからはちゃんと自分の気持ちをもっとソウタさんに伝えます」

「これからは、ちゃんと自分がやりたい事もアリシアに言う」

「これからは、私もちゃんとソウタの話を聞きます」


 反省しなければいけないことは山ほどある。お互いに、譲歩し過ぎてしまう所や、上手く伝えていたようで伝えていなかった所。


「――ぷ」

「――ふふ」


 それが、なんだかとても嬉しかった。


「やっぱり俺たち、まだまだだね」

「そうですね。恋人としても、人としても、まだまだです」


 それはまだ、一緒に歩き始めたばかりの二人だから気付けた反省点だ。


「じゃあ、次はもう一度誓わせて」

「私も、ソウタさんに言いことがあります」


 懺悔の後は、希望を描く誓いを――


「俺は、これからもっとアリシアの為に頑張る。その為には、キミと離れる時間があるからもしれない。でも、離れた分だけ甘えさせる。寂しかった時間を忘れてしまうくらい、キミを幸せにするよ」

「はい。これからも、私を幸せでいっぱいにしてください」


 颯太の誓いに、アリシアは同等以上の熱量を以って応える。

 颯太の誓いのあとは、アリシアの誓いの番だった。


「私は、これからはソウタさんだけじゃなく、もっと周りの人たちとたくさん絆を結んでいきます。天界でできなかった分。いえ、それ以上の絆を、人間と育んでいきます」

「――ッ!」

「だからどうか。私が〝アナタの隣で描く未来〟を見守っていてください。それが、私の新しい夢です!」


 天使は、夢を見つけた。その夢を、颯太はこれから――


「あぁ。キミの隣で、ずっと見守ってるよ」


 共に誓い合い。そして共に歩んでいく。

 それは何よりも慈愛に見ていて、尊い〝絆゛だった。

 二人は、真っ直ぐに見つめ合う。


「アリシア」

「何ですか」


 小さく声を震わせれば、アリシアは颯太が何をしたいかもう分かっているかのように聞き返した。

 きっと、彼女も同じ想いなはずだ。


「誓いのキス、してもいい?」


 そう問いかければ、アリシアは幸せそうにはにかんだ。


「はい。キス、してください」


 その幸福を噛みしめるような笑みに、颯太は小さく笑う。

 ゆっくりと、距離が縮まっていく。アリシアは瞳を閉じた。


 ――ありがとう。アリシア。


 そんな万感の想いを込めながら、颯太も瞳を閉じた。

 息が肌に触れた。もうすぐそこに、愛しの人がいる。そう実感すると、心臓は一段と高鳴った。

そして、唇と唇が触れ合う。優しく、でも熱い口づけを、颯太とアリシアは交わした。


「「――ん」」


 新たな夢と誓いを刻んで、二人は互いの熱を確かめ合うのだった――。


 ―― Fin ――

 


やっと終わった。あ、エピローグあるからまだ終わってねぇやww

ということで長かった第2部もこれにて終話でございます! やー。めっちゃ疲れた! めっちゃ大変だった! 感想書きたいけど終わった余韻で書く気ならんww というわけで感想のほうはエピローグの時にでも書こうと思います! 書くかは分からん! 

そして、これまで第2部を楽しんで読んでいただいた読者の皆様、本当にこれまで付いて来てくれてありがとうございます! 読者ー! この御恩は一生忘れません! 本当に、本当に、ありがとうござまいます。 それでは、また次話でお会いしましょう!

『いいね、感想、ブクマ』などなど大募集中です! 皆様の応援、心よりお待ちしております。

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