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【休載中】天罰のメソッド〜処刑天使。ひきこもりの少年に恋をする〜  作者: 結乃拓也
第二部 【 紫惑の懺悔編 】
136/234

第127話 『 恋人――アリシア 』

残り2話! やっと2話。長かったよ――! 終わるよ――!

【 sideアリシア 】


 ―― 40 ――


 ――文化祭一日目が、終了一時間を切った。


「はぁ。はぁ。はぁ。はぁ……」

「うわっと! ごめんなさい!」


 額から溢れる汗すらも気に留めず、少女は無我夢中で走る。その背中のすぐ後ろで、少女は廊下を走っている罪悪感に内心涙を溢しながら追いかけてきてくれた。

 なんだ、なんだと周囲の視線が白銀の少女に集まる。そんなのは、気にしていられなかった。


 ――早く、会わないと。


 焦燥感に駆られながら、少女は走り続けた。


 ――苦しい。止まってしまいたい。でも、止まれない。


 止まれば愛しい彼に会えなくなる気がして、少女は血の味がする息を何度も繰り返した。

 階段を駆け抜ける。


「アーちゃん! 階段上ったら左に曲がって! その一つ先の教室が、あたしたちの教室だよ!」

「分かりました!」


 えいっ、と最後の階段は跳躍してすっ飛ばした。着地と同時に体が傾くも、奥歯を噛んで体を前進させた。

 目的地は、もう目の前だ。


 ――ソウタさん。ソウタさん。ソウタさん!


 心が望むままに、少女――アリシアは足を動かした。

 そして、


「ソウタさん!」


 2年2組の教室に入ると、躊躇いもなくアリシアは名前を呼んだ。途端、教室にいる人の視線が、一斉にアリシアに注がれる。


「あ、アリシアちゃん?」

「はぁ。はぁ……リクトさん!」


 ざっと周囲を見渡せば、見覚えのある少年と視線が合った。

 アリシアの登場に、陸人は驚いた顔をしながら近づいてきた。


「今頃来たんだね……」

「はい。遅れてすいません」

「いや、謝らなくてもいいよ。来るか来ないかは自由だし……でも、来たってことは朋絵も……」

「ぜぇ。ぜえ。あたしなら此処にいるわよぉ」

「どわあおう⁉ そんなゾンビみたいな登場しないでくれよ⁉ めっちゃビビるわ⁉」


 這いつくばりながら朋絵も到着して、陸人はほっ、と安堵の息を吐いた。


「ごめんね。陸人、一緒に回るっていったのに、約束破いちゃって」

「別にそれは明日キッチリ埋め合わせしてくれればいいよ」

「う、うん。明日、ちゃんと一緒に回る。あと、なんか奢るよ」

「よし、じゃあ焼きそばで」


 陸人と朋絵の会話を微笑ましく思いながらも、アリシアはハッと我に返った。


「そうだ! リクトさん! ソウタさんはどこにいますか⁉」

「そうだ! 陸人! 颯太どこ⁉」

「ちょおい⁉ 女子二人の圧が怖い⁉」


 アリシアと朋絵が切羽詰まった顔で陸人の肩を掴み、脅迫しているように問いかけた。

 揺さぶられる陸人はロボットのような口調で、


「俺も知らない! あいつ、午後に一度顔合わせてからミテナイノ!」

「んなっ⁉ なんで一緒じゃないのよ!」

「それはずっと朋絵を待ってたからだよぉぉ!」


 朋絵の非難に陸人は涙でそう訴えた。


「ハッ! そうだ、颯太に電話すれば……」

「俺もさっき掛けたけど、繋がらなかったぞ」


 陸人の言い分に耳を傾けず、朋絵はスマホを耳に当てる。ただ、数十秒待っても眉間の皺が取れることはなかった。


「くっ。ダメだ。本当に繋がらない⁉ なんでこういう時に繋がらないのよ!」

「ソウタさん、何処に行ってしまったのでしょう……」


 考えても、アリシアはソウタの学校生活を覗いたことがないから行動の把握をしようがなかった。


「うーん。一人なら、ぶらぶらしてるかもしれない……アーちゃん連れて来る、って言ったのに、あいつなんで教室にいないのよ⁉」

「お、落ち着いてくださいトモエさんっ」

「これが落ち着いてられるかー!」


 きしゃー、と猫のような唸り声を上げて髪を掻きむしる朋絵。そんな朋絵をどうにか落ち着かせようとしていると、誰かが挙手をした。


「あー。颯太くんなら、さっき準学部棟の渡り廊下で見かけたよ」

「本当ですか!」

「う、うん。でも……」

「でも?」


 アリシアは目を見開いて情報をくれたソウタのクラスメイトに詰めよれば、しかし彼女は難しそうな顔をした。

 目を瞬かせるアリシアに、彼女は頬を掻きながら言った。


「行くのは、やめた方がいいと思うよ。神払さんと一緒だから」

「「「んなっ⁉」」」


 その言葉に、アリシア、朋絵、陸人は揃って声を上げた。


「あんまり二人の邪魔しちゃダメじゃないかなぁ。ほら、あの二人って、付き合ってるんでしょ⁉」

「「「んなっ⁉」」」


 また、三人の声が揃った。


「だから――」

「違います!」


 彼女がアリシアたちを止めようとした瞬間だった。その言葉を遮るように、アリシアが叫んだ。

 目をぱちくりとさせる彼女をアリシアは放ったまま、体の向きを変えると、


「私、行かないと!」

「待ってアーちゃん。あたしも行く!」

「俺も!」


 向かおうとする足を、陸人と朋絵が止めた。


「ありがとうございます。トモエさん。リクトさん」


 たしかに二人が付いて来てくくれば、こんなにも心強いものはない。

 でも、これはアリシアとソウタの問題で。

 セイラと決着を付けなければいけないのは――自分だ。


「ここからは、一人で大丈夫です。だから、そんな私を、信用してください」

「……アーちゃん」


 二人に真摯な目でそう訴えかければ、朋絵と陸人は力強く頷いてくれた。


「分かった。あとは、アーちゃんに任せる。ちゃんと、颯太と一緒に戻ってきてね」

「はい。必ず、ソウタさんと二人でお二人の元まで戻ってきます!」


 背中を押してくれる友人に、アリシアは約束を交わす。

 ソウタと必ず。もしかしたら、セイラも一緒に戻ってくるかもしれない。

 この決着の先に何が待っているのかは、まだアリシアも知らないから――


「行ってきます!」

「「行ってらっしゃい‼」」


 その答えを見つけに、アリシアは走りだした。

 その小さくて大きな背中に、クラスメイトの一人が問いかけた。


「あの、あなたはいったい⁉」


 その答えに、アリシアは舞うように翻ると、


「私はアリシア! ミヤジ・ソウタの――恋人です‼」


 そう答えて、アリシアは走りだす。恋人として、彼に会うために。

 前を向く少女。その一方で、2年2組はというと、


「「えええええええええええええええええ⁉」」


 そんなクラスメイトたちの絶叫に、アリシアは悪戯に微笑んだ。


 ―― Fin ――



よし、もう寝よう!

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