第118話 『 始まる、文化祭 』
前回のあらすじ。
颯太とアリシアは喧嘩をしてしまって、アリシアは部屋に閉じこもってしまった⁉
どうなる文化祭⁉
【 side颯太 】
―― 31 ――
そして、文化祭は当日を迎えた。
「ふぅ。なんか緊張してきた」
「まぁ。なんとか何だろ。午前組は頑張れよなっ」
「ちょっとは励ましたりくらいしないさいよっ」
クラスの女子が深呼吸を繰り返すのを見て、男子が揶揄っていた。
皆、緊張はしているだろうがやはり楽しみにしている様子だった。当然だろう。今日まで成功させる為に頑張って来たのだから。
それは颯太も同じだった。なのに、心が躍ることはなくて。
「颯太ー」
と名前が呼ばれた気がして、声のした方向へ顔を振り向かせた。
「……朋絵」
クラスの女子と会話を終えた友達が傍に来た。
「腕、平気?」
「あぁ。この間よりは、だいぶ痛みは引いたよ」
「そっか。なら良かった」
ほっ、と安堵して胸を撫で下ろした。それから、朋絵は拳を突き出すと、
「今日の文化祭、絶対成功させるからね」
「いや、俺も参加するから」
怪我のせいで、颯太は本来の役職を全うすることができなくなった。朋絵はそれを懸念したからそう言ったのだろう。それに、颯太はしかめっ面で返した。
「そうだったね」
と朋絵はにしし、と笑った。
「颯太が頑張ってくれたおかげで、皆やる気マックスだよ。だから、颯太も沢山お客さん呼び込んでね」
「任せろ」
颯太にはまだ、仕事がある。いまは、与えられたこの仕事を全うすることに集中した。
突き出された拳を、颯太は右手を突き出してぶつけた。
――今は、皆の為に頑張らなければ。
そう自分を叱咤して、颯太は強く呼気を吐く。
張り切る朋絵の笑顔と、頬を緩める颯太の顔が交差する。
それに邪魔するように、もう一人の親友の声が乱入してきた。
「やーやー。お二人さん。誰かをお忘れじゃありませんかね」
「うわ、ウザいのが来た」
「朋絵さん⁉ 朝から俺を泣かしに来ないでくれる⁉」
顔を顰める朋絵に陸人は涙目になった。
また、いつもの三人が集結した。
「呼子、頑張ってくれよな。颯太」
そう言いながら拳を胸に置いて来る陸人に、颯太はこくりと頷く。
「まぁ、やれるだけやるさ。集客できるかは分かんないけど」
「お前、顔が良いんだからその辺の女子でも誘えよ、きっと目をハートにしてついてきてくれるぞ」
「完全にナンパの手法じゃねえか。普通にやるだけだ」
「ちぇ、面白くないな」
軽口を言う陸人に、颯太はため息を溢した。
それから、颯太は陸人と朋絵に向き直ると、
「呼子だけど、何かあったらその時は駆けつけるし手伝うから電話くれ。定期的に戻りもするから」
「ん。頼りにしてるね」
「あんま片意地張るなよ、元・全体指揮くん」
「調子乗んな」
「アダダッ! 片手しか使えないのになんでそんな器用に関節技決められるんだよ⁉」
完全に颯太を見下した顔が気に食わなかったので、颯太は陸人の背後に回ると華麗に関節技を決めた。それを喰らって悶絶する陸人が涙目で「降参!」と白旗を挙げたので、やれやれと言った風に腕を解放した。
そんな男ふれあいのじゃれ合いに、朋絵は「何やってんの」と苦笑を溢す。
それから、
「そうだ。颯太。今日はアーちゃん、何時頃に来るの?」
「……っ」
朋絵の質問に、颯太は頬を硬くした。
「? 颯太? アーちゃん、今日来るんだよね。三津奈さんと……」
「そう、だな。きっと、来てくれる」
朋絵の問いかけに、颯太は曖昧に答える。その表情に朋絵は眉根を寄せるも、
「おーい! 2年2組集合してくれー!」
時間なのか、文化祭実行委員の掛け声に救われた。
「ほら、呼ばれたぞ。集合しよう」
「う、うん……」
朋絵は納得していない様子だったが、颯太は強引に朋絵をこの話題から遠ざけた。
颯太は胸にしこりを感じながらも、陸人と朋絵と一緒に教室の中央へ足を進めた。
それからクラスは輪っかを作って、実行員が訥々と語り始めた。
「えー。まずは皆、今日までの準備、本当に頑張ってくれてありがとう。皆が協力してくれたから、わりと余裕で間に合ったわ」
実行員が茶化すと、クラスがきゃっきゃっと賑わった。
それから、実行員は微笑むと、
「そんで、俺が特にお礼を言いたいのは颯太だな」
「え⁉」
唐突に実行に名指しされて、颯太は目を白黒させた。
驚愕する颯太に、実行員が、クラスの視線が集まる。
「颯太が俺たちの為に頑張ってくれたおかげで、おかげで楽しい物ができた。たぶん、皆も同じ気持ちだと思う」
「そんな。俺は別に、やることをやっただけで……」
「それが凄いんだから、謙遜すんなって」
「うぐっ……分かったよ」
「それでよし。怪我の方は初めは超焦ったけど、でも、おかげで誰一人欠けることなく文化祭を迎えられた」
向けられる真っ直ぐな瞳に、颯太は照れくさくなって頬を掻いた。
「お前の分も……いや、今日と明日も、一緒に頑張ろうな!」
「っ。当たり前だろ。その為に、今日まで皆と頑張って来たんだから」
実行員の言葉に、颯太は強い眼差しを向けて言い切った。
それを聞き届けた実行員、そしてクラスの皆は、その瞳に俄然気合を入れた。
「よし。それじゃあ一発、気合入れの掛け声でもやるか!」
「「賛成‼」」
力強く手を叩く実行員に、クラスは声を揃えて肯定した。
そして――
「よっしゃ! 今日と明日、絶対に成功させるぞ、2年2組ィ――ッ‼」
「「うおぉぉぉぉぉ―――――ッ‼」」
教室を震わすほどの、大きな叫び。
颯太も、全力で叫ぶ。
きっと、アリシアは来てくれる。そう信じて、力の限り吠えた――。
――俺は、やれることを全力でやるよ、アリシア。
―― Fin ――
いやー。最高に盛り上がってまいりましたね!
颯太ぁぁ。アリシアぁぁ。




