第117話 『 文化祭前日 』
登場人物紹介~
宮地颯太 本作主人公。アリシアと喧嘩してしまう
アリシア 本作メインヒロイン。ソウタと喧嘩してしまう
三崎朋絵 颯太の親友。作者「陸人って、いいやつっだよね……」朋絵「は?」
倉科陸人 颯太の親友。作者「陸人、何がとは言わないけどごめん」陸人「えっ⁉」
神払聖羅 終章なのに「かみはら」のほうが良くね? と思い始めました。
【 side颯太 】
―― 30 ――
――文化祭前日。
「アリシア。起きてる?」
扉をノックしても、返事はない。それでも構わず、颯太は続けた。
「明日の文化祭。10時スタートだから」
今日はアリシアが気なって何もかもが手に付かなかった。本当は休みたかったけれど、今のアリシアの傍に、果たして自分が居ていいのか分からなかった。ダメな気がしたから、今日はアリシアから離れた。
「みつ姉には、アリシアから連絡入れるって伝えておいた。だから、行きたくなったら、みつ姉に電話して」
アリシアの笑顔が見たくて頑張ったけど、アリシアから笑顔を奪ったのは誰でもない自分自身だった。そんな事実に、ただ憤りを覚える。
「今日、ご飯食べてない……よね」
せめてソウタがいない時でも、部屋から一歩でも出てくれたなら良かった。でも、帰ってきた家にはアリシアが何かした痕跡はなかった。
「ご飯。ここに置いておくから、お腹が空いたら食べて」
トレーにはおにぎりが二つ。卵焼きとたこのウィンナーとゼリーが置かれている。ソウタが居る時間は降りづらいだろうからと、颯太なりの気遣いで冷めても美味しく食べられるものを選んだ。
「洗濯物とお風呂掃除は、やっておいたから心配しないで。それと、いつも頑張ってくれてありがとう」
いつも、感謝してた。一生懸命やってくれることを、颯太は万感の想いを込めて伝えたつもりだった。でも、アリシアに寂しい思いをさせているとに気付いていたのに、学校や部活を理由にちゃんと気付いてあげられなかった。
本当に、今更で、後悔すらももはや無意味だった。
「俺、アリシアの寂しい気持ちに気付いてたのに、忙しさを理由に向き合えてなかった。本当は、もっとアリシアを優先するべきだったのに」
やりたいことを応援してくれる彼女に甘えた。
「アリシアがいつも支えてくれてたのに、俺、ちゃんとありがとうって伝えられてなかった」
いつの間にか、アリシアが支えてくれることを当たり前のように感じていた。
「俺が本当は、アリシアのやりたいことを支えるべきだったのに」
本来の目的からずれていたのは、自分の方だった。
「キミに嘘つき呼ばわりされても、仕方ないと思う」
アリシアを大切にすると誓ったのに、守れなかった。
「俺の言葉が、いまアリシアに届いてるのかは分からないけど、でも、聞いてるなら、返事しなくていいから耳を傾けてほしい」
せめて、変わらぬ想いを伝えたくて。
「ウミワタリの日。俺、言ったよね。アリシアは、覚えててくれてるかな」
もし、アリシアが忘れてしまったら、もう一度言えばいい。いや、何度でも伝えればいい。
「俺は、どんなキミでも好きだ。天使でも、人間でも。俺は、アリシアが好きだから。これだけは変わらないから。絶対に」
今のアリシアは、きっとこの言葉を信じてはくれない。それでも、もう一度信じてくれるまで何度も伝えるし、何度でも言う覚悟は決めてある。
「それだけ伝えたかった。じゃあ、俺はリビングに戻るから」
やっぱり、返事はなかった。
「それと、昨日は怒鳴ってごめん」
最後にそれだけ伝えて、颯太は立ちあがった。一瞬、扉の奥で床が軋む音がしたけれど、すぐに止んでしまった。
明日は、アリシアが楽しみしていた文化祭だ。
明日は、アリシアを楽しませる為に頑張った文化祭だ。
でも、アリシアが文化祭に来てくれる予感はしなかった――。
―― Fin ――
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