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心渡し  作者: FRIDAY
15/28

15.エーカちゃんメソッドそのⅠ

 


 ●



『ではまずツカミの話ですが……ぶっちゃけて言うと、自然体でいいと思います』

『え、自然体?』


 その通り、とエーカちゃんは確信ありげに頷いた。

 でもウチにはよくわからない。


『自然体……って、ダメじゃない?』

『あら、どうしてですか?』


 それは、だってほら、


『ウチ……人見知りだし』


 エーカちゃんや眼力ちゃんは友達だから気軽に話せているし、古崎さんは……まあ、ユーレイだからてらいなく話しかけられる。

 でも、江ノ島君は。


『江ノ島君は、何て言うか、生きてるし』

『まあそうなんですけどね』


 ふふふ、とエーカちゃんは意味深に笑った。


『でも心配は無用です。自信を持ってください。工藤さんにはツカミの才能があるのです』

『ツカミの……才能?』


 え、うっそだあ。


『嘘ではありませんよ。工藤さんはお気づきではないようですけどね。確かな才がおありです。ただ、人見知りというのも本当で……いえ、失礼を承知の上で言わせてもらうと、工藤さんは人見知りというよりは、ごく軽い対人恐怖症のようなものがあるのだと思います』

『対人……恐怖症』


 あくまで素人目ですので、聞き流してくださってかまいませんが、とエーカちゃんは断ってから、言葉を続ける。


『より厳密に言えば、生きている人限定で、ですね。ユーレイ相手であれば工藤さんはごく自然に話しかけられます。でも生きている人が相手だと、軽くテンパったり焦ったり、気を遣いすぎたりしませんか?』

『ああ、する』


 表面上は取り繕うけど、内心ではかなり挙動不審になってる。


『工藤さんの過去を、私が知ることはできませんが……土足で踏み込ませていただきますと、多分工藤さんの幼い頃に関係があるのではないかと思います』


 幼い頃。

 心当たりは――ある。


『ですから、そこを何とかして自然体を維持できれば、ツカミは問題ありません』

『仮にそうだとして……でも、相手を怒らせちゃうこともあるよ?』

『でも最終的には普通に会話するのでしょう?』


 まあそうなんだけど。

 エーカちゃんは頷きを見せた。


『それが才能なのですよ。初対面の相手への評価は初めの十秒で決まると言います。工藤さんは容姿もお綺麗ですし、堂々と向き合えばうまくいきますよ』


 容姿云々はともかく。

 そんなアドバイスを、エーカちゃんにもらったのだったけれど。



 ●



 

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