15.エーカちゃんメソッドそのⅠ
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『ではまずツカミの話ですが……ぶっちゃけて言うと、自然体でいいと思います』
『え、自然体?』
その通り、とエーカちゃんは確信ありげに頷いた。
でもウチにはよくわからない。
『自然体……って、ダメじゃない?』
『あら、どうしてですか?』
それは、だってほら、
『ウチ……人見知りだし』
エーカちゃんや眼力ちゃんは友達だから気軽に話せているし、古崎さんは……まあ、ユーレイだからてらいなく話しかけられる。
でも、江ノ島君は。
『江ノ島君は、何て言うか、生きてるし』
『まあそうなんですけどね』
ふふふ、とエーカちゃんは意味深に笑った。
『でも心配は無用です。自信を持ってください。工藤さんにはツカミの才能があるのです』
『ツカミの……才能?』
え、うっそだあ。
『嘘ではありませんよ。工藤さんはお気づきではないようですけどね。確かな才がおありです。ただ、人見知りというのも本当で……いえ、失礼を承知の上で言わせてもらうと、工藤さんは人見知りというよりは、ごく軽い対人恐怖症のようなものがあるのだと思います』
『対人……恐怖症』
あくまで素人目ですので、聞き流してくださってかまいませんが、とエーカちゃんは断ってから、言葉を続ける。
『より厳密に言えば、生きている人限定で、ですね。ユーレイ相手であれば工藤さんはごく自然に話しかけられます。でも生きている人が相手だと、軽くテンパったり焦ったり、気を遣いすぎたりしませんか?』
『ああ、する』
表面上は取り繕うけど、内心ではかなり挙動不審になってる。
『工藤さんの過去を、私が知ることはできませんが……土足で踏み込ませていただきますと、多分工藤さんの幼い頃に関係があるのではないかと思います』
幼い頃。
心当たりは――ある。
『ですから、そこを何とかして自然体を維持できれば、ツカミは問題ありません』
『仮にそうだとして……でも、相手を怒らせちゃうこともあるよ?』
『でも最終的には普通に会話するのでしょう?』
まあそうなんだけど。
エーカちゃんは頷きを見せた。
『それが才能なのですよ。初対面の相手への評価は初めの十秒で決まると言います。工藤さんは容姿もお綺麗ですし、堂々と向き合えばうまくいきますよ』
容姿云々はともかく。
そんなアドバイスを、エーカちゃんにもらったのだったけれど。
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