第十五話「一歩だけ前へ」
呼び出しは、翌朝だった。
「小規模任務だ」
教官の声。
「沿岸部付近にて、敵の小隊を確認」
「主力ではない」
「だが放置すれば陸軍の足を引く」
「竜騎兵団から小隊を出す」
視線が向く。
「ユークス隊」
「了解」
「クロノス、お前も入る」
一瞬、間があった。
「……いいんですか」
「評価は聞いている」
教官の目が、まっすぐ向く。
「その上で使う」
「実戦でしか分からんこともある」
「……了解」
ヴェントラの元へ向かう。
「また一緒だな」
ガイアスが笑う。
「今度はやらかすなよ」
「……分かってる」
ユークスが軽く言う。
「力抜けよ」
「前みたいに突っ込むな」
短いアドバイス。
(……前みたいに、か)
手綱を握る。
ワイバーンで飛ぶと、現場はすぐだった。
敵は数機のワイバーン部隊。
地上部隊の護衛についている。
「規模は小さい」
ユークスが言う。
「だが油断するな」
「各機、役割通りに動くぞ」
「了解!」
降下する。
風が強くなる。
手に持つのは、騎兵用のランス、風牙槍。
魔法は連発ができないので、今回は風牙槍を使うことにした。
ランスでの経験は少ないが、常に変化する空中戦に対応したい。
ワイバーンでの空中移動に慣れてきたので、教官に武器の使用を勧められたのだ。
(魔法は最後だ)
ユークスが前に出る。
ガイアスが右から回る。
(俺は――)
いつもなら、遅れる。
でも。
(先に出る)
ユークスの進路を読む。
その先へ、ヴェントラを滑り込ませる。
敵が反応する。
その瞬間。
突撃。
風牙槍を突き出す。
直撃。
一機、撃墜。
「いいぞ!」
ガイアスの声。
そのまま離脱。
振り返る。
次の敵。
距離がある。
腰の投槍を抜く。
「――行け!」
投げる。
風に乗る。
敵の進路に刺さる。
爆発。
二機目が崩れる。
「やるじゃねぇか!」
だが。
低空から敵が回り込む。
(来た)
反応が遅れる。
間に合わない。
その瞬間。
ガイアスが前に出る。
「任せろ!」
防御魔法が展開される。
魔導弾が弾かれる。
隙ができる。
(今だ)
雷撃を放つ。
直撃。
最後の一機が落ちる。
静寂。
戦闘終了。
静かな空。
「……どうだ」
ユークスが聞く。
「……少しだけ、分かった気がする」
「少しでいい」
軽く笑う。
「それが続けば、戦える」
ガイアスも来る。
「さっきのは良かったな」
「でもまだ遅ぇ」
「分かってる」
否定しない。
それでも。
(できた)
一回だけでも。
確かに、繋がった。
ヴェントラの首に触れる。
「……少しだけ、分かった」
小さく呟く。
ヴェントラが、静かに鳴いた。
風が、少しだけ心地いい。
(次は、もっと)
まだ未完成だ。
でも。
確実に、一歩進んでいた。




