第十四話「地上からの牙」
警鐘が鳴ったのは、昼過ぎだった。
「ゼフィラ帝国艦隊が沿岸部上陸!!陸軍が現在交戦中!」
「陸軍部隊、敵主力と接触!」
空気が一気に張り詰める。
「敵主力魔導兵器が艦隊から地上へ降ろされているのを確認!」
「砲撃により、味方が押されている!」
「竜騎兵団、出撃!」
(地上戦の支援……)
ヴェントラの元へ走る。
「クロノス!」
ユークスの声。
「今回は対地攻撃だ!」
「敵の主力を叩く!」
「了解」
ガイアスも来る。
「地上か……!」
「燃えるな!」
「浮かれるな」
「分かってるって!」
軽口。
だが、全員分かっている。
これは支援じゃない。
戦況を左右する任務だ。
――同時刻・王城
窓の外。
空へと飛び立つ影。
レグナは、それを静かに見ていた。
「出たか」
側近が報告する。
「沿岸部、敵主力兵器を確認」
「……そう」
短く答える。
「被害は」
「陸軍が劣勢です」
わずかな沈黙。
「竜騎兵団が間に合えば、持ちこたえるでしょう」
レグナは、何も言わない。
ただ、空を見ていた。
――アストレア王国沿岸部
現場が見える。
地上。
土煙。
砲撃の閃光。
「……あれか」
巨大な魔導砲台。
敵陸軍の主力兵器。
「各機、目標はあの魔導砲台だ!」
ユークスの指示。
「破壊後、即離脱!」
「了解!」
突入する。
ヴェントラと共に降下。
その瞬間。
地上から、無数の魔導弾が飛んでくる。
「っ――!」
「対空か!」
回避。
だが。
(多い……!)
予想以上の密度。
「散開するな!」
ユークスの声。
「編隊維持で抜ける!」
(維持……!)
隊列に入る。
だが。
回避のたびに、位置がズレる。
「クロノス、左寄せろ!」
「……っ!」
修正。
だが今度は。
別方向から砲撃。
反応が遅れる。
距離が詰まる。
「近い!」
ガイアスの声。
慌てて離れる。
その一瞬で。
隊列が崩れる。
「戻れクロノス!」
分かっている。
でも。
(避けるので精一杯だ……!)
地上からの攻撃。
空とは違う。
空よりは読みやすいが攻撃の量が違う。
ユークスが前に出る。
その隙を突いて、魔導砲台に接近。
「今だ!」
ガイアスが突っ込む。
援護する。
雷撃を放つ。
直撃。
砲台の土台を固定していた固定具が吹き飛ぶ。
攻撃をしようとした砲台が位置をずらされ誤爆した。
「よし!」
だが。
その瞬間。
別の砲台が、こちらを狙う。
「クロノス、下がれ!」
遅い。
魔導弾が迫る。
(間に合わない――)
次の瞬間。
横からガイアスが割り込む。
「舐めんな!」
腕を突き出す。
光が展開する。
防御魔法。
魔導弾が直撃する。
――砕ける。
完全には止まらない。
威力を残したまま、弾かれる。
爆発が横に逸れる。
「っ……!」
衝撃が走る。
だが、直撃は免れた。
「何やってんだ!」
「単独で前出るな!」
「……っ」
言葉が出ない。
「戻れ!」
再び編隊へ。
だが。
すでに遅れている。
ユークスが残りの砲台を落とす。
連携は、成立している。
自分以外で。
(……くそ)
敵主力兵器は沈黙した。
陸軍の反撃が始まる。
戦況は持ち直した。
だが。
完全な勝利ではない。
帰還した俺たちは基地へ着地する。
息を吐く。
「……最悪だ」
思わず漏れる。
「気にすんな」
ユークスが言う。
「目的は達成した」
「それでいい」
「……そういう問題じゃない」
ガイアスが来る。
「お前、完全にズレてたぞ」
「分かってる」
「分かっててあれかよ」
呆れた声。
「空だけ見てるからだ」
「地上も見ろ」
「味方も見ろ」
刺さる言葉。
「お前一人で戦ってるんじゃねえんだ」
その通りだった。
空を見る。
さっきまで戦っていた場所。
地上の煙が、まだ上がっている。
(俺は……)
一人なら、動ける。
でも。
(“中に入ると”、動けない)
ヴェントラが、静かに鳴く。
その音が、やけに重かった。
――アストレア王城
「主力兵器、破壊を確認」
報告が入る。
「陸軍は持ち直しました」
レグナは、静かに頷く。
「……そう」
それだけ。
だが。
「損害は」
「軽微ではありません」
一瞬の沈黙。
「……次を急ぐ必要があるわね」
視線は、空へ。
戦いは、まだ続く。




