↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
132/167

第百三十二話「塔は空を裂く」

 それは、海の上にそびえていた。


 かつて。


 何もなかった場所。


 今は。


 白焔教団の名の元、教国、帝国、海洋諸国連合が"支援"をしている場所。


 巨大な“塔”が、空へと伸びていた。


 無数の柱。


 複雑に絡み合う鉄骨。


 そして。


 空を目指すように、積み上げられていく構造物。


 だが。


 それはただの建造物ではない。


 “遺構へ至るための道”。


 人が、再び空へ干渉するための装置。


 その足元。


 近くの港には、数多の船。


 かつての海洋諸国連合のものだった船。


 今は。


 帝国の旗が掲げられている。


 鉄と木材。


 鉱石。


 未知の資源。


 それらが、絶え間なく運び込まれていた。


「……遅い」


 低く、冷たい声。


 レオハルト。


 塔の中腹。


 仮設された指揮台の上に立っていた。


 若い。


 だが。


 その目は、冷え切っている。


「第三搬送隊、到着予定から十分遅延」


 部下が報告する。


「理由は」


「……海流の影響と」


「言い訳だな」


 即座に切り捨てる。


 沈黙。


「次は遅れるな」


 それだけ。


 だが。


 それ以上は必要ない。


 部下は、即座に頭を下げる。


「はっ」


 レオハルトは、視線を上げる。


 塔の先。


 遥か上空。


 “空飛ぶ遺構”。


 かすかに見える。


 雲の奥。


 だが、確かに存在している。


「……待っていてください」


 呟く。


 その言葉は。


 誰に向けたものでもない。


 ただ。


 “あの男”に向けて。


 場面が変わる。


 レオハルトは報告をしに移動していた。


 海上。


 大型船の上。


 そこには、数人の人物が並んでいる。


 新たな元首たち。


 かつての連合の、後継者。


 だが。


 その顔には。


 誇りはない。


 あるのは。


 恐怖と、従属。


「……これで、本当にいいのか」


 一人が呟く。


「黙れ」


 別の者が即座に制する。


「聞かれているぞ」


 視線。


 船の甲板。


 そこに立つ、帝国兵たち。


 そして。


 その奥。


 ゆっくりと歩く影。


 重い足音。


 機械の軋む音。


 ヴァルター。


 全身に装着された生命補助装置。


 以前よりも増えている。


 だが。


 その歩みは、止まらない。


 元首たちは、息を呑む。


「資源の供給は、順調か」


 低く。


 だが、確実に響く声。


「は、はい……問題なく」


 一人が、震えながら答える。


「そうか」


 それだけ。


 だが。


 全員が理解する。


 “問題があれば、死ぬ”。


 ヴァルターは、塔を見上げる。


 そして。


 静かに言う。


「空は、まだ遠いな」


 その言葉。


 誰も、意味を理解できない。


 だが。


 レオハルトだけは違った。


 その声を聞いていた。


 そして。


 静かに、頭を下げる。


「……到達させてみせます」


 誰にも聞こえない声で。


 誓うように。


「必ず」


 塔は、伸び続ける。


 空へ。


 神へ。


 そして。


 人の限界を越えるために。


 その下で。


 世界は、再び歪み始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。