住む世界が違う故に
先に言っとくけどよ…
2人の幼馴染に非は無いからな?
憲兵に護送される様にして天幕に戻ると、正樹は2人に大まかながらも状況の説明をした。
「此処の状況は一言で言い表すなら、アニメにもなったゲートってラノベだ」
それを聞くと、塚原は直ぐに理解したのだろう。確認する様に聞き返す。
「つまり、お前の居た世界の国にこの世界が繋がって、侵攻されたから報復してる最中って事か?」
「その認識で問題無い」
正樹が塚原の確認を肯定すると、今度は香澄が尋ねて来た。
「私達はどうなるの?」
「其処に関しては連中と俺次第としか言えない」
正直にそう答えると、塚原は首を傾げる。
「どう言う事だよ?」
塚原と同様に香澄も首を傾げれば、正樹は答える。
「詳しい事は省略するが、連中は俺の持つ情報と汚れ仕事要員を欲しがってる」
「で、お前が応じなければ俺たちの生命は無いのか?」
お約束的な展開を塚原が口にすれば、正樹は何も言わなかった。
そうして沈黙を以て肯定されると、香澄は言う。
「なら、その情報を渡せば良いんじゃないの?」
「ソレで済むんならくれてやる。だが、今すんなり渡すのは危険極まりない。だから……」
そう告げると、正樹は天幕の入口に赴いて歩哨として立つ憲兵の前に立って告げる。
「大佐に伝えろ。アンタの欲しがりそうな1つ情報をくれてやるとな……」
そう告げると、正樹は二人の前に戻って話を続ける。
「分割して渡す。当面はソレの対価としてお前等は安全になる筈だ」
「それで俺等が安全なのは良いけど、お前は?」
塚原が訝しむ様に問うと、正樹はアッケラカンに返した。
「俺?俺は危ない橋を何時もの様に渡るだけだ」
「危ない橋つうか綱渡りじゃねぇのか?」
塚原が呆れ混じりに言うと、正樹はさも当然の如く返す。
「どっちも危ない事に変わりはない。兎に角だ。取り敢えず、迎えが来るまではお前等の安全を保証する事の確約を取り付けるから、俺の事は気にすんな」
正樹が告げる様に返すと、香澄は心配そうな面持ちで尋ねる。
「なら、正樹の言う迎えが来たら、正樹も一緒に帰るんだよね?」
香澄の問いに正樹が答える事は無かった。
そんな正樹に塚原は詰め寄り、問う。
「お前も一緒なんだよな?」
「悪いが、野暮用が出来ちまってな……ソレが済むまでは帰る気は無い」
「そんな野暮用棄てちまえよ。ゲートめいた事とお前は無縁なんだろ?」
塚原が当然の様に言えば、正樹は正直に答えた。
「ソレとは別件なんだ。でもって、野暮用とは言ったが、俺にとっては大事な要件なんだよ」
「なら、聞かせろよ」
正樹を心配する幼馴染として問う。
だが、正樹が答える事は無かった。
「悪いが答える気は無い」
「お前マジで大概にしろよ」
そんな正樹に塚原が苛立ちを露わにすると、正樹は悪怯れる事無く返す。
「だから言ったんだ。俺とは距離を置けって……」
その言葉に腹を立てたのだろう。
塚原は正樹の襟を乱暴に掴むなり、その顔を殴った。
後ろにドサッと倒れながらも受け身を取った正樹は何事も無かったかの様に立ち上がると、異変に気付いた憲兵がやって来た。
程なくして、2人の憲兵に塚原が取り押さえられてしまう。
「離せ!!離しやがれ!!」
塚原が怒鳴るが、シートで出来た床に押し倒した憲兵達は離そうとはしない。
そんな憲兵達に対し、正樹は将校の如く毅然とした口調で要求する。
「離せ!!」
自分達の母国語を以て命じるかの様に大声で言われれば、憲兵達は渋々ながらも押さえ付けていた塚原を解放した。
解放された塚原が再び正樹に詰め寄ろうとして、憲兵が再び押さえ込まんとする。
だが、正樹がソレを制すれば、塚原は再び襟を乱暴に掴んだ。
「1つ聞かせろ!コレはお前の巻き添えなのか!?」
「解らん。だが、その線は薄い」
正樹は永遠の名を持つ魔女をよく知るからこそ、遠回しながらも否定した。
そんな正樹に塚原は要求する。
「お前の言う迎えが来たら、一緒に帰れ!ソレが嫌ならこの場で俺が殺すぞ!!」
怒りを露わにする塚原に正樹は涼しい顔で返した。
「悪いが、護れない約束はしない主義だ」
そんな答えが塚原が滾らせる怒りの炎に燃料を注げば、塚原はもう1発殴ろうとする。
だが、それよりも早く。2人の憲兵が正樹から塚原を引き剥がし、また床に押し付ける。
そんな形で制圧されてしまった。
押さえ込まれた塚原を他所にやって来た者の気配と足音に気付くと、正樹は振り向いてその相手……セオドアス大佐に要求を告げる。
「大佐。先ずはこの二人を安全な後方に移送し、保護してくれ」
「良いだろう。ソレで君の払う対価は?」
要求に対する対価を問われると、正樹は対価を告げる。
「アンタの祖国にあるフローラス墓地。其処にあるラウ・ハインメスの墓にアンタが喜びそうなブツがある」
「そのブツの詳細は?」
「ソレは見てのお楽しみって奴だ。そうだ、棺を開ける時は気を付けろよ。罠を仕掛けてあるから」
「……その罠の詳細は?」
セオドアス大佐に問われると、正樹は仕掛けた張本人として正直に答えた。
「蓋を開けて外気に薬品が反応した瞬間に爆発。だから、不燃性のオイルで中を満たしてから開けろ。そうすれば、爆発させる事無く取り出せる」
「良いだろう。2人はこの後、私と共に送らせる」
セオドアス大佐が差し出した対価を敢えて呑むと、正樹は尋ねる。
「大佐。アンタは俺に何かさせたいんじゃないのか?」
「そう思った根拠は?」
「俺がこうして無事な事。コレに尽きる」
根拠を口にすると、セオドアス大佐は沈黙と共に続きを促した。
そんなセオドアス大佐に正樹は滔々と根拠を述べていく。
「本来であれば、俺をアンタ等の持つ違法な秘密施設に護送。其処で俺に非人道的極まりない拷問をして、俺の持つ情報を搾り取ろうとして然るべきだ。例え、あのクソアマと何かしらの取り引きをしてるからといって、俺を其処に送らないのは流石に有り得ない」
正樹は正樹が語った通り、本来であれば非人道的極まりない違法な秘密施設へ護送。
其処で全ての情報を搾り取るまで拷問し、その後に処刑されても仕方無い過去を持っている。
だが、セオドアス大佐がソレを何故かしなかった。
だからこそ、正樹はセオドアス大佐が自分に何かしらの汚れ仕事を押し付けたい。そう踏んでいた。
すると、そんな根拠を聞いたセオドアス大佐は憲兵達に命じる。
「2人の民間人を連れて席を外せ」
大佐と言う雲の上の存在が命じると、憲兵達は二人を連れて天幕から退出した。
そうして正樹と二人きりになると、セオドアス大佐は語る。
「君の言う通り、私はこの地に於ける面倒の処理を押し付けたい。無論、コールティクの情報も欲しいし、他にも情報を持ってるなら其れ等も欲しい」
「成る程。自分とは無関係な奴が勝手に殺ってる事にして、自分達の手は綺麗な状態に保ちたいのか……」
正樹が嫌味や皮肉にも似た納得の言葉を返せば、セオドアス大佐は当然の様に語る。
「世の中は綺麗事だけでは回らない。それに君の元祖国と同盟関係にある某国が我が国とこうして繋がりを持った異なる世界での利権を寄越せとチョッカイも出して来るんでな……ソレの対応を優先的にしたいのだよ。私本来の職分としてはね」
「で、用が済んだら俺は拷問施設送りか?」
「其処に関しては君次第だ。私としては今後、我が国に対して国益を損なう行為をしないならどうでも良いのが本音ではある」
セオドアス大佐にすれば、記録上は既に死んでる正樹が国家の敵にならないならば、姿を消しても別に構わなかった。
だが、正樹と言う邪悪な者が過去に行ってきた件で吊るしたい者達は違う。
そんなセオドアス大佐に正樹は尋ねる。
「俺はアンタの部下を多数殺したのにか?」
「士官と言うのは、下の者に死んで来いと命じるのが仕事の一端だ。それに私も部下を介してではあるが、君のお仲間を多数殺して来てる」
「凄い割り切りだな。俺には真似出来そうに無い」
本心から感心した様に漏らすと、セオドアス大佐は平然と言ってのけた。
「敵味方と言う概念は状況や情勢で幾らでも変わる。昨日の友が今日の敵。今日の敵が明日の友になる様にな……」
「そりゃそうだが、そう簡単に納得出来ないのが感情だし、人情だろ?」
「確かにその通りだ。だが、君も私も国家の為に汚れ仕事をして来てる……その時に共通の目的の為に手を組む事もあるんだ。ならば、納得だってしようと思えば出来るのが人間と言うモノだろう?」
大佐が本心から言って除けると、正樹は訝しみながらも先ほどの対価にオマケを付ける事にした。
「コールティクはずっと前に死んでる」
「…………どう言う事だ?」
セオドアス大佐が驚くを含んで訝しむと、正樹は言葉を続けていく。
「処置のしようが無くてな。奴はトドメを願って、俺はソレに応えた」
自らの手で相棒を撃ち殺し、安らかに眠らせた。
そんな答えが正樹から返ってくれば、セオドアス大佐は残った大きな謎を口にして問う。
「ならば、我々が捜そうとしてるコールティクは誰だ?」
「ソレを調べるのはアンタ等の仕事だろ?給料分働けよ……まぁ、兎に角だ。俺の知ってるコールティクは既に死んでるし、義体化して蘇ったとかも無い」
「何故だ?」
当然の様に問えば、正樹は相棒を殺した時の事と相棒の内面と言う形で答えた。
「俺は奴の頭に2発撃ち込んだし、奴は敬虔な信徒で宗教的な理由から義体化はしないし、電脳化もしてない」
正樹の居た世界では攻殻機動隊よろしく義体化や電脳化がある。
だが、コールティクは敬虔な信徒である事を知るが故に宗教的戒律を守り、電脳化も義体化もしていないし、する事も無い。
例え、誰かがしようとしても脳味噌を完全に破壊したから不可能である。
正樹がそう答えれば、セオドアス大佐は確認も込めて尋ねた。
「コールティクに家族は?」
「故郷に老いた両親が居るぐらいだ。結婚はしてないし、恋人は真っ当なカタギだから復讐するって考えすら無い筈だ」
こうして正樹が自分の知る情報を開示すれば、セオドアス大佐は思った事をそのまま漏らしてしまう。
「ならば、コールティクを名乗る謎の人物は何者なのだ?何の目的で動いてる?」
「知らんし、今の俺にはどうでも良い事だ。アンタとアンタの優秀な部下が頑張って調べてくれ……」
正樹が素っ気なく返すと、セオドアス大佐は天幕を後にした。
程なくして2人が天幕に戻ると、香澄が尋ねて来た。
「何を話してたの?」
「お前等には無関係な事だ。あ、一先ずは当面の間はお前等の安全を確約させる事に成功したから、安心して良いぞ」
「で、お前は人殺しをするのか?」
塚原が自己嫌悪や罪悪感。それに悍ましいモノを見る目を向けながら問えば、正樹はさも当然の如く肯定する。
「あぁ、そうだ」
「何で、そんな平然としてられんだよ?」
「何時もの事だからだ。軽蔑したけりゃしろ……されて当然だし、誰かを責めたくとも俺の顔しか浮かばねぇ」
正樹にすれば、塚原と香澄の反応は至極当然。寧ろ、自分の方がイカれてる。
それだけの事。それ故に責める気は起きなかった。
そんな正樹に沈痛な面持ちを向けながらも、香澄はハッキリと告げる。
「正樹が殺したお陰で助かってるんだから、私達が手を下したのと変わらないよ」
香澄の本心からの言葉を正樹は斬り捨てる様に吐き捨てた。
「バカかお前は?そりゃ、ハッキリ言ってくだらねぇ自己憐憫でしかねぇ」
正樹の言葉に塚原が怒り、殴ろうとした。
だが、正樹は塚原が叩き込もうとした拳を躱すと同時。
瞬時に背後に回り込んで左腕を脇下から入れて左手で口を塞ぎ、反対の右腕を右の脇下から入れて何時の間にか握っていた小さなカランビットの刃先を首筋に押し当て、語り掛ける。
「殴られても仕方無いのは認めるが、殴られっぱなしもムカつくから反撃してみた」
正樹が一瞬の間に塚原の生殺与奪を奪い取ったのを目の当たりにすると、香澄はどうすべきか?解らないながらも辞める様に説得しようとした。
「正樹。お願い、離して」
「なら、そのまま大人しくしとけ……さて、お前がキレる気持ちも解ってるつもりだし、俺が殴られるのも当然だと思ってる。勿論、俺の事を友達と思ってくれてる事にも感謝してる」
本心から告げると、正樹は更に告げる。
「だが、ハッキリ言ってお前等は足手まといでしかない。例え、召喚された時にチートをゲットしてたとしても役立たずである事に変わりはない」
コレも本心からの言葉であった。
そんな正樹に塚原が何も言い返せずに居ると、正樹は刃先をピタピタと何度も当てながら更に続けた。
「殺したのは俺の意思と行動であって、お前等の意思と行動じゃない。それで罪悪感やら自己嫌悪やらするのは御門違いだし、被害妄想でしかない。俺は生き残る為と自己満足にしただけでしかない。だが、俺はお前等を助けた事に後悔を感じてもいる」
正樹が口にした言葉に2人は信じられない。と、言った様子であった。
だが、正樹は気にする事無く淡々と告げる。
「だから、俺はお前等を見捨てる事も考えてる」
そう告げて塚原を解放すると、セオドアス大佐が部下と魔女を伴ってやって来た。
セオドアス大佐は2人の雰囲気と表情から何があったのか?察しながらも、気にする事無く告げる。
「私の迎えが来た。その2人を連れて私は後方へ戻るので、君も来たまえ」
その言葉に正樹が俺もか?そう首を傾げると、セオドアス大佐は呆れ混じりに理由を答える。
「その2人は君と違って言葉が通じない。それに此処は前哨基地でな……致し方なくと言う奴だ」
その答えからセオドアス大佐が作戦の為に必要な航続距離がとても長い機体を使わせようとしてる事を察すると、正樹は確認の為に尋ねる。
「早速仕事に取り掛かれって事か?」
「時は金なりと言うだろう?それに脅威は早い内に処理して貰う方が此方としても都合が良いからな……」
そう言う事になれば、セオドアス大佐に導かれるままに正樹は2人の幼馴染と共に天幕を後にするのであった。
前書きと作中でも正樹が言った様に2人の幼馴染に非は無い
後、コレに関しては無知は罪ってのは適用外でもあるからな?
真っ当に表社会を生きてる子供(高校生でも未成年なら子供だろう?)の感性的に正樹の言動はムカついて当然だし、正樹の居た世界(異世界とか言う意味でなくて)とは考え方も見方も大きく異なる別世界だから理解に苦しむのと当然なのよ…
つうか、幼馴染である正樹が人を殺した事に関してボロクソに貶めて無い時点で2人はマシレベル高い方だと思うよ(私見だけど




