インターバル ミリヲタであるが故にモニョる
「うわ……マジかよ」
学校を無断で休んで犬小屋に居た涼子はゲンナリとしてしまうと、煙草を燻らせて居たエレオノーレは珍しそうに尋ねる。
「どうした?」
「アイツの視界と聴覚に入って情報集めてたら、師匠が居た」
師匠が居た。
そう聞かされると、エレオノーレは涼子がゲンナリとした理由を直ぐに納得すると共に確認の為に尋ねる。
「奴が居るのか?」
「えぇ、オマケにアイツはアイツで綱渡りする羽目になってる」
正樹の身体に攻殻機動隊の枝を付けてたよろしく、発信器と盗撮機能。それに盗聴機能を仕込んでいた涼子は正樹の現状を詳しく知ると、正樹を中継機として師匠へ念話で語り掛け始めた。
「ハァイ、クソ師匠。コレはアンタの仕込みか?」
そう問えば、師匠たる永遠の名を持つ魔女は意外な答えを返して来た。
「驚くかもしれないけど、私は何も仕込んでないわ。バカ弟子」
否定と言う答えが返って来ると、涼子は訝しんでしまう。
「嘘臭ぇ……アンタ、自分の愉しみの為なら苦労を惜しまないじゃん。今回の茶番を仕込んだ脚本家してても私は驚かないわよ」
涼子が訝しみながらボロクソに言いながら疑えば、師である魔女は残念そうにボロクソな内容を肯定する。
「否定したいけど、今までの事を振り返ったら私の顔しか浮かばないのはツラいわね」
「それで?どう言う状況なの?」
前置きはコレで終わり。
そう言わんばかりに涼子が状況を問えば、師である魔女は答える。
「他所の世界の神様が戯れで私達の世界に門を構築。で、彼の言葉を借りるなら、ゲートってラノベみたくなってるって所ね」
簡潔明瞭な答えが返って来ると、涼子は更に詳しく知る為。確認する様に尋ねた。
「それで?その門はどうなってるの?」
「今は貴女の優秀な娘とティアが解析してる最中よ。私はオフェンスとして現地入りし、彼と一緒に暴れ回る事にしてる」
そんな答えが返って来ると、涼子は思案していく。
マナとティエリアが門を解析してるなら、閉ざす術を構築するのは時間の問題と見ても良い。
問題はクソ師匠と正樹。
今は理性を強く働かせて私が来るまでは暴発しない。
でも、最も殺したい相手を目の前にして我慢を強いられてるから何時爆発するか?解らない時限爆弾が起動してる様な状態。そう言わざる得ない。
下手に私が姿を見せたら、正樹は状況をメチャクチャにするのが目に見えてるわね……
確認と共に自分が現地入りした際に生じるだろう厄介事を予想すると、魔女は涼子に要求して来た。
「悪いんだけど、余計な荷物があるから貴女には荷物をソッチへ送って貰いたいのよ」
「その荷物以外に他に知っておくべき事は?」
「現地の政府。と、言うよりは王が勇者召喚して、貴女の住まう世界の住人が数名居るぐらいかしらね?」
師たる魔女から救出対象ないし、殺害対象が居る。
そう聞かされた涼子は念話で「少し待って」と、告げてからスマートフォンを手に取って島津に連絡を入れた。
「何か解ったか?」
島津が問うと、涼子は知り得た情報を共有する為に告げる。
「ウチの指揮官と2人の友人とは別に、勇者として異世界に召喚された者が複数居る事が判明」
涼子から悪いニュースを聞かされると、島津は悪くて汚い大人として答えた。
「そうか……日本に帰る意思を有してるなら保護。そうじゃない場合は始末してくれ」
そんな答えがさも当然の如く返ってくれば、涼子は了解と返して電話を切り、師たる魔女との会話を再開した。
「そっちとしては勇者が面倒を起こさないなら、何があっても良いのね?」
「えぇ、保護しても問題無いわね。要は脅威が去れば良いだけの話だから……」
保護しても構わない。
そんな答えが返ってくれば、涼子は他の事を尋ねた。
「敵の武装はどんな感じ?」
敵の脅威がどの程度か?ソレを問うように武装を尋ねれば、師はアッケラカンに答える。
「驚く事にボルトアクション式のライフルを有してるわ。大砲は昔の前装式なのにね」
「ハァ!?」
涼子が思わず間抜けな驚きの声を漏らしてしまうと、師は語る。
「状態の良いサンプルを幾つか確保出来たから調べてみたら、火薬式ではないけど銃としてはちゃんとした代物だったわ。因みに薬莢は金属製よ」
師が太鼓判を押す様にキチンとした物であった。そう答えると、涼子は確認する様に問うた。
「因みに風俗は?」
「風俗や技術に関して言うなら、貴女が居た頃の私達の世界と同レベルね」
師から答えが返って来ると、涼子は困惑してしまう。
「それなのにドライゼやら何やらすっ飛ばして金属薬莢用いるボルトアクションライフル?どんな世界よ?」
そんな様子を珍しそうに見ていたエレオノーレは沈黙を破る様に口を開き、どう言う事なのか?尋ねた。
「貴様が其処まで衝撃受けるとはな……そんなにおかしいのか?」
エレオノーレが恥ずる事無く無知を見せ、更には素直に聞けば、涼子はミリヲタとして語る。
「ハッキリ言ってありえない。出来るにしても悪くてハンドゴン。凄い奇跡が起きたとして良くて、火縄銃かフリントロックだろう技術レベルの世界……私の世界では恐らくだけど其処から更に100年から200年。下手すればソレ以上掛かって漸く産まれる代物。そう言ったら?」
「つまり、今ある技術と釣り合わない。そう言いたいのか?」
エレオノーレが何となくと言った様子で尋ねれば、涼子は半分だけ肯定する。
「その認識でも良いわ。ドライゼすっ飛ばしてちゃんとしたボルトアクションとか……どうなってんのよ?」
強く困惑した様子の涼子に追い討ちをかけるかの如く師たる魔女は告げる。
「テストしたら300メートル先の的に命中したわ。だけど、基本的には剣と槍。それに魔法使いが主流みたいだから此処最近出来たと見ても良さそうね」
「剣と魔法が主流なのにボルトアクションライフルが産まれるとか益々訳解んないわ……」
涼子がボヤく様に漏らすと、エレオノーレは尋ねる。
「お前がさっき言った事を踏まえるならば、おかしいのは理解してるが、其処までありえないのか?」
エレオノーレの問いに涼子は答える為、敢えて問うた。
「剣と槍。それに弓とか魔法が主流な世界で長く生きてきたアンタは銃を故郷であるあの世界を見た事ある?あ、私のカラシとかは除いてね」
そう問われると、エレオノーレは思い出した様に答える。
「言われると大砲はあったが、銃は無かったな……」
エレオノーレが自分の故郷とも言える世界の常識を口にすれば、それを肯定する様に涼子は言う。
「そう。私も大砲は見たけど、銃は無かった。そりゃ、当然よね。魔法と言うデタラメ極まりない技術が主流となっていて、科学技術の発展がある意味で疎かになってるんだから」
エレオノーレが思い出したかの様に答えると、涼子が当然の様に返した。
其処でエレオノーレは涼子の言わんとする事に漸く気付くと、確認する様に問う。
「つまり、銃が産まれるキッカケや下地が一切無いにも関わらず、お前の言うボルトアクション式のライフルが存在してる事はありえない。そう言いたいのか?」
「そう。ハンドキャノンや火縄銃。それにフリントロックのマスケットって具合に段階を踏んで漸く産まれる代物だと言うのに、いきなりボルトアクション。しかも、金属薬莢を用いる。普通なら……」
其処で何故か言葉を止めると、涼子は師へ確認する様に尋ねた。
「大砲はあった?」
「無かったわ」
師がアッサリ否定する様に答えると、涼子は其処で確信したかの様に独りごちる。
「大砲は無い。なのに金属薬莢を用いるボルトアクション式のライフルはある……どう見ても転生者の仕業と言わざる得ないわ」
その言葉に独り理解出来ずに居るエレオノーレは尋ねてしまう。
「どう言う事だ?」
「基本的に技術は段階を踏んで形を為していく。私の世界基準なら、大砲から銃って具合にね」
その答えにエレオノーレが首を傾げると、涼子は語る。
「銃が産まれる前に前装式の大砲が産まれ、大砲を小型化に成功した結果として銃が産まれた。私の故郷であるこの世界ではね……」
「つまり、お前の言う転生者とやらが何らかの形で関わってない限り、ありえない。そういう事か?」
エレオノーレが漸く合点のいった様子で問えば、涼子は肯定する。
「そう言う事になるわね。まぁ、異世界にジョン・ブローニング始めとしたデタラメ極まりない天才が居るか、居た可能性は否めないけど……それでも大砲が無いのはやっぱおかしいわね」
そう独りごちた涼子が心の底から困惑した様子で改めて「ほんと、どうなってんのよ?」そう漏らすと、脱線した話を戻す様に師は要求する。
「座標送るから来て貰えない?貴女達の力も借りれると助かるから」
「そう言う事なら手を貸す。でも、そっちの政治やら何やらが絡む話には首を突っ込むのは御免だし、そういうのはその世界の人間がケリ付けるべき事よ」
「解ってる。ソレ以前にこの件では、私は貴女に強制する気は無い。勿論、エリーに対してもね」
そう告げられると共に話が終われば、涼子はエレオノーレと共に座標が送られて来るのを煙草を燻らせながら待つのであった。




