第百六十七章 カンチャン村滞在記(二日目) 18.宿泊所自室~【人形遣い】問題~(その2)
自分の愛杖・打貫のような「付喪神」を狙っているのかと考えたシュウイであったが、ナントによるとそうではなく、
「鎧だよ鎧。フルプレートの鎧セットが動くんじゃないか――って、考えた連中がいたみたいで」
「……それって、『リビングアーマー』って言いません?」
どちらかと言うと、モンスターとして討伐対象になっていそうだし、そういうのを使役するのは【従魔術】ではないかという気がする。ひょっとすると【死霊術】なのかもしれないが、少なくとも【人形遣い】以外の可能性がある時点で、探しどころが間違っているような気がする。
『シュウイ君はどうやって拾ったの?』
「あー……僕のは多分一般的でないルートなので……」
手配犯を逮捕して没収したという、恐らくは運営的にも稀有なルートのような気がするから、あまり参考にはならないだろう。そう思ったシュウイであったが、何かの参考にでもなればと、仔細を教える事にした。どうせナントはこっちの事情を知っているのだし、今後アドバイスを貰えるのならその方が良い。
シュウイとしてはその程度の考えだったのだが……案に相違して、ナントは何やら考え込んでしまった。……何かおかしな事を口走っただろうか?
『おかしいと言うなら全部おかしい「はい?」……いや、そうじゃなくって』
何やら慌てたように言い直したナントの弁によると、
『再現性の低そうなルートで入手したにも拘わらず、新たな使役アーツが解放されたんだよね?』
「そう……いう事になりますね」
『うん。だとしたら、そこには運営の意図が関わっていると見るべきじゃないかと、そう思うんだよ』
「運営の意図……」
物事をそんな視点で見た事の無かったシュウイとしてみれば、感心すべきか呆れるべきか、判断に苦しむところなのだが、歴戦のβプレイヤーなら、こういう見方は珍しくないらしい。
『それがこのタイミングで――となると、疑わしいのはゴッタ沼じゃないかと思うんだよね』
「あー……『死刑宣告者』の討伐ですか」
『うん、そう』
成る程。あの難敵ボスの討伐を想定しているのなら、巨大ロボというのはありそうな解だ。遅延しまくっているロードマップの正常化を図りたい運営としては、早めにゴーレムを戦力化したいのかもしれぬ。
それと同時にゴーレム……と言うか【人形遣い】の職能は、戦闘に寄与するものである事も確定したようなものだ。
『この段階では推測でしかないけどね。フィギュアとか縫い包みの線は薄れたかな』
とは言え、裁縫系のスキルが無関係となると商況にも影響してきそうだから、当分の間は黙しておくつもりだとの事。そう言われてみて初めて、シュウイは自分が裁縫系のスキルを持っている事を思い出した。これは何かの要件なのだろうか。
思い返せば【裁縫】と【繕いもの】の二つのスキルは、【人形遣い】に先んじて入手していた。これらのスキルを保有しているという事が、【人形遣い】のスキル取得の条件だという事は……
(……いや。だけど【人形遣い】を持ってた手配犯からは、【裁縫】も【繕いもの】も没収しなかったっけ……)
ナワッキーがこの二つのスキルを持っていなかったとすると、取得の条件云々という話は成り立たなくなる。取得後直ぐに捨てたという可能性も無くはないが、だとすると【裁縫】と【繕いもの】は、【人形遣い】の取得だけに関わっているという事になる。縫い包み製作の出る幕は無い。
(……まぁ、巨大な縫い包みと死刑宣告者が取っ組み合いを演じるなんてのもアレだしね)
「ゴーレム」の正体が何なのかは、今後も修行を続けていれば判るだろう。
『て言うか、シュウイ君は使ってみた? 【人形遣い】』
「あぁ、はい。えぇと……」
取り敢えず、最初は土人形を作成するところからだと説明する。その際に、魔力の滲み込んだ土を使う必要がある事、【魔力浸潤】が必要な事も報告する。ナントが黙ってしまったのをみると、何か考え込んでいるようだ。
『あー……ご免ご免、ちょっと考え込んでいたんだよ』
「何か考えるような事がありました?」
『いや、【魔力浸潤】ってさ、そこまで普及したスキルじゃなかった筈なんだ。それを要求されるというのは何故か――というのが気になって』
「あー……必須というか、魔力の滲み込んだ土の方が良いと言われただけで」
『うん。だとしても、運営がその辺をどう考えているのか――とか、ね』
確かに……運営がゴーレム推しだとすると、チュートリアルゴーレムの材料となる「魔力の滲み込んだ土」をどう調達させるのか……これはナントならずとも気になるところだ。ナントは商機という視点から考えているのだろうが、現時点で恐らくプレイヤー唯一の【人形遣い】の保有者となったシュウイとしても、確かに気になる話ではある。
『まぁそれはいいさ。ところで、シュウイ君の相談って?』
「あ、はい。えぇと……」




