第百六十七章 カンチャン村滞在記(二日目) 16.落とし物クエスト
「あの……森でこんなものを拾った――事にしておく――んですけど、落とし主に心当たりはありませんか?」
――そう。恐らくはこれもチェーンクエストであろうと睨んでいる、「落とし物クエスト(仮)」についての情報収集である。
何しろ「森の子熊さん」から「白い貝殻の小さなイヤリング」の片一方を渡されるという、とことん曰くありげな始まりなのだ。
シチュエーションに沿って想像するなら、〝(子)熊に追いかけられて、逃げる最中にイヤリングを落とした〟という事になるのだが……あの子熊の幼気な様子を見た身としては、どうにもこうにもピンとこない。
そりゃ、落とし主が子熊より小さな子供であれば、一応話としては成立するだろうが……今度はそんな幼子が、何で森なんぞに入ったのかという点がおかしくなる。かと言って、森に入るだけの分別を備えた年齢の子供なら、あんな子熊に追いかけられたという点がおかしくなる。
追いかけられた云々を無視して、単に落ちていたのを子熊が拾ったというのなら、話の不調和・不整合は生じないが……そうすると今度は、あの凝ったシチュエーションは何なのかという話になる。ミスリードにしては手が込み過ぎてはいないだろうか?
いや、しかし何しろあの運営だから、〝人を引っかけるための労力なら惜しまない〟という想定も説得力は(大いに)あるのだが……何にせよ、村で情報収集に務めた方が良いだろうという事で、シュウイは二人の店主に質問を放ったのであったが、
「んー……悪くないもんのように思えるが……判んねぇな」
「肉の良し悪しなら判るんだかなぁ」
いや――シュウイは別にイヤリングの品質を訊きたいのではない。落とし主の心当たりがあるかどうかを知りたいのだが。
「いやぁ……ウチに来る客は、こんなもん付けちゃいねぇからな」
「同じく――な」
どうやら訊く相手を間違えたらしいと察するシュウイ。ただそれでも、イヤリングの落とし物が――少なくとも最近では――噂になっていないらしい事は判明した。 なら、次は冒険者ギルドに当たってみるのが筋だろう。
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「いやぁ……そういった依頼は出されていないね」
「はぁ……」
シュウイからの質問を受けた冒険者ギルドの職員は、過去の依頼票まで引っ繰り返して調べてくれたが、そういった依頼は出ていないという。
「見た感じ子供用のものみたいだけど……子供って普通、冒険者ギルドに依頼を出したりしないからね」
「ご尤も……」
手近な訊き込みが二つほど空振った訳だが、十中八九これがクエストであるのは間違い無い。であれば、正着のルートというものがある筈で、それがこっち方面に無いという事は……
(……子供の事は子供に訊けって事かな? 少なくとも、今の段階での手懸かりは出てないみたいだから……)
ここは桶洗いに精を出しつつ、合間々々に訊いて廻るのが良いだろう。




