第百六十七章 カンチャン村滞在記(二日目) 14.お使いクエスト(その1)
さて――運営管理室の怨嗟の声を他所に、運営曰くところの「要警戒人物」であるシュウイは、のんびりとカンチャン村への道を辿っていた。
何か色々と想定外の成果を上げた……上げてしまったような気もするが、取り敢えず最初に為すべきは、お使いクエストの成果を届けに食料品屋へ出向く事だろう。
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「おー、これだこれ。兄ちゃん、柔っこい見た目の割にゃ、良い仕事すんじゃねぇか」
「ははは……どうも」
リアルの女顔に根深いコンプレックスを抱く蒐一にとって顔の話はタブーなのだが……上機嫌を満面に浮かべてバンバンと背中を叩いてくる商店主の親爺には、毛筋ほどの悪意も底意も無いようだし、ここはキレる場面ではないだろう。
とは言え、あまり気分が好くないのも確かであるし、依頼完了のメッセージも出ているし、後はさっさとおさらばして……と考えていたシュウイであったが、その考えは直ぐに撤回される事になる。
「そんな兄ちゃんを見込んで、ちっと受けてもらいてぇ仕事があんだけどな。……あぁ、俺じゃなくて他のやつなんだが」
……な・ん・で・す・と?
唯のお使いクエストだとばかり思っていたが、これがチェーンクエストというなら話が別だ。何せチェーンの繋がり次第では、ボーナスポイントが期待できるというのが、SROをはじめとするVRゲームのチェーンクエストなのだ。この機を逃して何とする。
(そう言えば……森の中での【等価交換】も、何かチェーンクエストっぽかったんだよね。「藁しべ長者」って感じで)
あの時はチェーンクエストを示すメッセージは現れなかったが、チェーンクエストの中にはそういったものもあると聞く。何より今、現在進行形で持ちかけられている「お使いクエスト」、これも明らかにチェーンクエストと思われるのに、何のメッセージも出ていないのだ。
不親切だとも言えるだろうが、
(……SROの運営だもんなぁ。チェーンクエストかどうかをはっきりさせずに悩ませる……ぐらいの事はしておかしくないよね)
だって悪辣運営だし……などと、当の運営管理室スタッフが聞いたら、〝お前が言うな!〟と口を揃えて突っ込み返されそうな事を考えているシュウイ。知らぬは当人ばかりである。
――では、実際のところはどうなのかと言うと、これはシュウイの誤解と言うか冤罪である。
商店主から持ちかけられたのは――先に木檜が述べたように――普通のチェーンクエストであった。
ただ……ひょんな成り行きで【等価交換】主宰の俄チェーンクエストに取り込まれたせいで、単独ではチェーンクエストだと表示されなくなっているらしい。少なくとも、運営が仕込んだミスリードなどでは断じてない。
だがまぁ、そんな裏事情は扨措きシュウイにしてみれば、こんな美味しい話を逃す理由などどこにもない。力強く頷きを返すと、店の親爺はいそいそと次の職場へ案内してくれた。その態度から判断すると、
(満腹度実装の影響って、住人にとっても大きいんだなぁ……)
シュウイが感心するのも道理、持ちかけられた仕事の内容というのは、
(まさか保存食作りに関連して、漬け込み用の桶の洗浄だなんて――ね)




