表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
942/963

第百六十七章 カンチャン村滞在記(二日目) 13.種明かし~運営管理室~(その2)

 あの時には、ワイルドビーにとっての入手のコストが基準となって、花蜜と蜂蜜の交換が()された。純粋に市場価格で言うと、「バッツの花蜜」は――あまりに尖った効能のため――需要が少なく、もう少し低い評価となるのだが、ワイルドビーの価値基準に(のっと)った場合、あの量がフェアなトレードとなる訳だ。


 だが、木檜(こぐれ)の主張の要点はそこではなかった。



「市場価格に加えて入手のコストという複数の価値基準がある事、プレイヤー(ごと)にスキルやステータスの違いがある事、更にプレイヤー以外のNPC、就中(なかんずく)非人類NPCとの交易が成立する事。これらの条件が満たされた場合、【等価交換】によって『(わら)しべ(ちょう)(じゃ)』的な成り上がりが発生する余地がある。……まぁ、満腹度実装に伴うアレコレのせいで、物々交換の対象がNPC以外(・・)にまで拡大された結果、花を相手の『等価交換』なんて事態が(しゅっ)(たい)したのはご(あい)(きょう)だが」


(「いや……〝ご(あい)(きょう)〟じゃ済まないんじゃ……?」)

(「事案スレスレのアクシデントだよな?」)

(「ほとんどヒヤリハット案件ですよねぇ」)



 スタッフの(つぶや)きなどは軽やかにスルーして、木檜(こぐれ)は問題の中心に斬り込んでいく。



「そういった(もく)論見(ろみ)を背景に設計された【等価交換】には、交換対象の物品を持つ相手と出会う確率を高めるギミックが仕込んであるらしい。……開発のやつらをとっちめて訊き出したところでは――な」



 この爆弾発言に対して、スタッフたちは寸刻沈黙した後で、内心の鬱憤(うっぷん)(くっ)(たく)憤懣(ふんまん)・立腹といったものを、これ以上無いほどの勢いで喚き立てた。開発のクソッタレどもめ、一体何という事をしてくれたのだ(怒)。



「まぁ、交換対象を持つ相手がプレイヤーの場合、誘導の効果は(たか)の知れた範囲に収まるそうだが」



 ――という木檜(こぐれ)の追加説明も、スタッフたちのヒートアップを鎮火するには至らなかった。シュウイ(あのプレイヤー)は元々プレイヤーキャラクター(P C)よりNPCとの関わりが深い。PCとの邂逅率が心持ち下がるなど、何の気休めにもならないではないか。今からでもそのギミックを停止させる事はできないのか?



「【等価交換】がレアスキルならまだしも、あれは満腹度実装を睨んで仕込まれたコモンスキルだからな。今更の変更は無理だろうな」

「「「「「………………(泣)」」」」」



 スタッフたちたちの()憤慷慨(ふんこうがい)・失望落胆・悪口(あっこう)雑言(ぞうごん)の声は聞くに()えないものであったが、そんな中にも問題の要点を見失わない者はいた。不動不落のマイペースを(もっ)て鳴る一言(ひとこと)(ゆう)()である。



「えっとぉ~、つまり……『お使いクエスト』と『落とし物クエスト』の間の『(わら)しべイベント』ってぇ、【等価交換】が招き寄せたって事ですかぁ?」

「そういう事になるな」

「何て事だ……」

「〝チェーン〟どころかクエストですらなかった……」

「〝イベント〟と言うより〝アクシデント〟だったのか……」



 商店主のお使いクエストは始まったばかりで最初の依頼すら未達成、藁しべイベントは正規のチェーンクエストではなく、落とし物クエストは隠しクエスト……となれば、チェーンクエストの告知が()されなかったのも当然である。いや、間に非正規の「(わら)しべイベント」が挟まって……と言うか、「(わら)しべイベント」に組み込まれた体裁(ていさい)になっている現状では、今後も告知が()されるかどうかすら疑わしい。



「完全に想定外の展開になっているからな」



 これが「チェーンクエスト」として認定されるかどうかすら、現時点では不透明なのだという。



「全ては管理AIの判断次第という事ですか……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
開発とAIの『仕様上』のやらかしであり、コモンスキル故にシュウイ以外でも普通に起こるんかい!?www 次回「運営死す」にならないといいけどなあ⋯⋯()www
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ