第百六十七章 カンチャン村滞在記(二日目) 5.予定変更
童心に返って一頻りコネコネと泥と戯れていたシュウイであったが、ふと我に返ってみると、いつの間にやら午を過ぎている。思いの外泥遊びに熱中していたようだ。
リアルではそろそろ昼食を摂る時間……と、何とはなしに考えていて気が付いた。SROの昼食事情はどうなっている?
思い返せば、自分は【空腹】などという地雷スキルを持っていながら、満腹度に関して無関心に過ぎたのではないか? マジックバッグを複数所有している――という事実に、胡座をかいていた部分があるのも否めない。
しかし、満腹度の実装に伴って食糧確保の難易度が変化するのではないか、賞味期限や消費期限もついでに実装されるのではないか、等という議論が喧しい事を考えると、鮮度や品質の劣化がどこまで及ぶのか、果ては〝マジックバッグの保存効果は現状のままなのか〟という点すら疑わしい。何しろ相手はあの運営なのだ。
それを考えると、
「SRO社会の昼食事情……て言うか、住民は昼食をどうしているのか、それくらい知ってても損は無いよね」
確かにシュウイの呟きにも一理ある。今更という気も同じくらいするが。
それに、シュウイとしては他にも考えるべき点があった。
当初の予定では、時間が許せば【5トンの術】の検証まで済ませておきたかったのだが……もしも幼馴染みたちの(不吉な)見込みどおり、これが「忍者」に関係しているなら、下手をすると「忍者」ジョブの解放をもたらし、又候ワールドアナウンスをぶち上げる可能性が捨てきれない。数日に一度のワールドアナウンスでもどうかと思うのに、一日に二つのワールドアナウンスは多過ぎだろう。そんな危険は冒せない。
となると【5トンの術】の検証は、大事をとって後日に廻すのが無難だろうという事になる。そしてその代わりに浮上して来るのが、
「御神酒の原料とか薬草も、探さなくっちゃなんだよね」
この後に控えている神殿詣でのために、お供え用の御神酒は不可欠である。となるとその調達の手段として、自作という手も考えるべきという事は、既に何度も述べてきたところ。
そして旅先という身の上を考えると、【調薬】のスキルも上げておいた方が無難である。況してペンチャン村を発つ時に、村の薬師アラベラから――思わせ振りな台詞とともに――薬草を餞別に貰っているのだ。何かのフラグを立てられたような気が犇々とする。
自生しているのを探す手も無論あるが、村での販売・流通状況を確認しておくのも必要だろう。実は昨日、教会の帰りに店を探してぶらついてはみたのだが、
「……少し時間が遅かったみたいで、めぼしいものは全部売り切れてたからなぁ」
その反省に鑑みれば、次はもう少し早いうちに訪ねるのがベストだろう。今なら丁度好い時間帯ではないのか?
「……うん! ゴーレム作成の練習なら宿の隅でもできそうだし、この後は一旦村へ戻って、お店を探してぶらついてみよう!」
――という次第で、シュウイはカンチャン村の食堂・食料品店・薬店を探して、村内を散策する事にしたのであった。
無論、帰り道で何か見つけたら、その都度採集していくのも既定の方針であるのだが。




