第百六十五章 その頃の彼ら~リャンメンの村~ 3.「マックス」(その2)
「タクマのリアフレが発見した『特殊ポータル』というのは、プレイヤーがその場所を頻繁に訪れるという事……それだけの価値がある事が前提になっている。ここリャンメン村は、その条件に当て嵌まっているだろうか?」
あまりと言えばあまりにも根本的な問いかけに、仲間たちは互いに顔を見合わせる。
そう言えば……元々は「等価交換」の検証のために訪れようとしていたのが、「特殊ポータル」などという看過できぬ爆弾情報が飛び込んで来たので、済し崩しに追加したのだが……その検証の場としてリャンメン村が適切かどうかは検討していなかった。
という事は……特殊ポータルが存在するのは……?
「……ここじゃないってのか?」
だとしたら、方針の再検討が必要になる。
このままここで「等価交換」の検証を進めるか、それとも「特殊ポータル」の検証のために、新たな目的地を策定するか。
「いや、主街道から外れた村に複数のイベントが仕込まれてるっていう説は、恐らく正しい。それに抑この村には、追捕クエとコボルトのクエ、おまけに転移門なんて物まで仕込まれてるんだ。何かが〝ある〟と考えるべきだろう」
「……と言うと?」
「持って廻った言い方は止せよ」
焦れた様子で詰め寄って来る仲間たちに、寸刻苦笑を浮かべると、バルトは自分の考えを口に出す。
「特殊ポータルの前提条件として、不特定のプレイヤーたちがこの村を訪れる事が想定されている筈だ。にも拘わらず、プレイヤーを惹き付けそうなものが現状で見当たらないとすれば……」
「……それはまだ解放されていない……って事か?」
リャンメン村にプレイヤーを惹き付ける何かがあるとして、それはまだ解放されていないのではないか? 思えばペンチャン村の「芋掘り鉱山」(仮称)にしても、シュウイたちが暫く滞在した後で、漸くその全貌を現したのではなかったか?
「仮にそうだとしたら……解放される要素ってのは一体何なんだ?」
サントの疑問も尤もなものであったが、その後のマギルの発言は、更に問題を深くした。
「それもだが……解放される要素或いはポータルが、〝どこのものか〟という事も考える必要があると思う……少なくとも我々は」
「……リャンメン村のか、それとも……コボルトの村って事か?」
「考慮する必要はあるだろう?」
マギルの指摘にう~むと考え込むメンバーたち。
何しろ目標をどちらに置くかで、採るべき行動も違ってくる筈。余計な労力を省くためにも、目標は明確にしておくべきだ。
「……てかさ、俺たちコボルトとの友誼称号――正確にはコボルトの少年との友誼称号――を持ってんだから、放っといたらコボルトルートに進むんじゃないか?」
「あー……その場合特殊ポータルは……どうなるんだ?」
「多分だけどコボルトの村って、隠れ里的な位置づけだよな? そこの特殊ポータルって……」
「解放するのが大変そうな気が……」
「けどさ、折角ここまで育ててきた縁を、他所のヤツに掻っ攫われたら業腹じゃね?」
「それはそうだな……」
「けどよ、高校生は期末テストがあるんだろ? あまり長いクエは受けらんねぇぞ?」
「や、俺らの事は気にしなくてもいいから」
「いや、運営だってそれくらいのケースは想定しているだろう。猶予期間はちゃんと取ってある筈だ」
はてさてどういう方針を採るべきか。「マックス」の討議は続くのであった。




