第百六十五章 その頃の彼ら~リャンメンの村~ 2.「マックス」(その1)
さて――フランネルが自分の欲望のためにリャンメン村の雑用を総浚えしたせいで、思わぬ割を食う事になった者たちがいた。誰あろう「マックス」の面々である。
最初は「等価交換」の検証のために村を訪れようとしていたのだが、シュウイが「特殊ポータル」などという爆弾案件を掘り当てた事で、そっちの検証も新たに要確認のリストに加わった。
その〝確認〟をどうやって行なうのか。これが中々の難問だったのだ。
まず「等価交換」については、〝それっぽい事をしてスキルが生えるかどうかを確かめる〟という方針が、先日の幼馴染み会議で採択されている。なのでその方針を踏襲すればいいのだが……問題は、その〝等価交換っぽい行動〟というのがとんと思い浮かばないというところにあった。
単純にシュウイの真似をしてやれば……と、口で言うのは簡単だが、遺憾ながら【採蜜】のスキルも【花粉媒介】のスキルも持ち合わせない身で、シュウイと同じような事をするのは荷が重い。
然りとて他に上手い代案も思い浮かばないなると、暫くは「等価交換」の事を念頭に置いて、使えそうなシチュエーションに遭遇するのを待つぐらいしかできそうにない。
では、「特殊ポータル」の方はどうかと言えば、こちらも条件が確定していないが、少なくとも村人の好感度が一つのキーになっていると推測された。
となると、ここはリャンメンの村人の好感度を高めておくのが、現時点での最善手であろう。
――という判断の下、リャンメンの村で住人のお手伝いをして好感度を稼ごうと考えていたのだが……その悉くが、既にフランネルという女性プレイヤーによって片付けられていた事を知ったのである。
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「……どう思う?」
「その女子が特殊ポータル狙いだってのか?」
何しろタイミングがタイミングである。自分たちと同じく特殊ポータルの解放を目指しているのではないかと勘繰りたくなるのも無理からぬ事。
しかし、SROの運営が住民との交流を推奨しているという事実に鑑みれば、
「単に住民の好感度を上げようとしているだけ……っていう事もなぁ」
「あぁ。充分に考えられるな」
「けどよ、言っちゃ何だが、こんな僻地の村でか?」
「穴場を狙ったのかもしれんぞ? 他のプレイヤーとの競合を避けるために」
「あー……それはあるかもな」
「幾らリピータブルクエストだっても、クーリングタイムとかリスポーンタイムとかはあるからなぁ」
「況して、今はシアの町が開放されるとかされたとかの瀬戸際だし」
「あー、何かアナウンスがあったよな」
「シアの町で活動する事を見越して、その前に少しでも好感度を稼ごうとする連中が殺到……ってのは、ありか」
成る程。少し目端の利くプレイヤーなら、混雑を避けるために敢えて田舎で好感度を稼ぐ……というのはありそうな選択だ。こちらの可能性も棄却はできない。
ちなみに、「トリック3」ことやらかし三人組のシア到達については、先遣隊が少し早く到着したのだろうと、この時点では全員が誤解していたので、話題の端にも上らなかった。
そんな事より今後の方針である。
好感度稼ぎのお手伝い依頼が軒並み壊滅……という、この事態にどう対処すべきか。
「……ひょっとして考え違いをしていたのかもしれない」
――と発言したのは壁役のバルトであった。
「考え違い?」
「もしくは勇み足と言うべきかもしれんが」
それは一体どういう事だ? 考え違いでも勇み足でもいいから、思い付いた事があったらさっさと話せ……というパーティメンバーの圧を受けて、バルトは時折考え込みつつ、自分の想定を口に出す。




