第百六十六章 ボウリング場 1.リャンメン村現地リポート
リアル回です。四話構成になります。
ドームに轟くピンの音をBGMに、少女が力一杯に投げたボールは一筋のレーンを走り、
「あー……最後の最後でターキーかよ」
「やったね要ちゃん! 匠君たちの奢りだよ!」
「悪いわね、お二人さん」
「あー……まぁしょうがねぇか」
「あぁも鮮やかに逆転されたらね」
期末試験前の最後の「休日」――〝休めない休日は休日じゃない!〟というのは匠の弁――を楽しむため、市内のボウリング場へやって来ていた四人組。昼食代を賭けて男女のチーム戦となっていたのだが、勝利の女神は女性陣に微笑んだようだ。
ともあれゲームを済ませた後は、ボウリング場併設のファミリーレストランで昼食と相成った。話題は勿論SROであるが、最初に俎上に載せられのは、脱獄三人組によるシアの町到達の件である。
まぁ尤も、廻り道プレイを強いられているシュウイや、〝我が道を行く〟を標榜している「ワイルドフラワー」の二人は言うに及ばず、他のプレイヤーとは別方向からのグランドクエスト攻略を狙う「マックス」も、シアの町の先陣争いには然したる関心を示さなかった。なので、この時も蒐一の、
「へぇ、そうなんだ」
――という軽いコメントで終わってしまったのであるが。
そんな彼らが興味を示したのは、匠たち「マックス」の進捗報告――と言うか、正確には〝進捗しなかった事の報告〟――別けても「マックス」が狙っていたお手伝い依頼の悉くが、既に他のプレイヤーの手で片付けられていたという一件であった。
まぁ確かに、「特殊ポータル」の取得条件の一つと目されている〝村人の好感度上昇〟が、他のプレイヤーに先取りされていたというのだから、幼馴染みたちが色めき立つのも無理はない。蒐一などは〝特殊ポータルの事に気付いたプレイヤーが他にもいたのか?〟と解して興味を覚えたようだが、女子二人の関心は別のところにあったようだ。
「え……? フランネル?」
「確かなのね?」
「あ? あぁ、バートが探ってきたところじゃ、そんな名前だったらしいぜ」
女子二人が顔を見合わせているのを見て、男子二人も互いに顔を見合わせる。茜と要の二人は名前が気になるようだが……ひょっとして……?
「私たちが知っている『フランネル』と同一人物ならね」
「ミモちゃんの友達なの!」
「ミモザの……?」
「ミモザって……エンジュの姉さんの?」
蒐一もミモザの事は憶えている。と言うか、出会い早々に蒐一の事を「朱の君」呼ばわりした人物なのだから、忘れろという方に無理がある。確か「二つ名厨」だとか言われていたが……
「えぇ。その彼女の友人なのよ」
〝友人〟という語に〝同類〟とか〝同じ穴の狢〟とかの副音声が被っていたような気もするが……取り敢えず、二人の知人らしいという事は理解した。
「――で? だとしたら何なんだ?」
「私たちの知っている『フランネル』なら、『特殊ポータル』に拘るような娘じゃない筈なのよ」
「モフモフの亡者だよ!」
「「モフモフの亡者……」」
「二つ名厨」の同類にして「モフモフの亡者」とは、また濃いキャラがいたものだ……と、呆れるしか無い男子二人。
しかし、だとしたらその「フランネル」の狙いは何なのか? リャンメン村住民の好感度を上げて、一体何を狙っている?
「いえ……だから、そういう事を画策するような娘じゃないのよ」
「単純にコボルトさん狙いじゃないかな?」
「「コボルト……」」
「その可能性が高いわね」
これについては女子二人の方で確認を取ってみるというので任せる事にして、匠の話の主題は、「マックス」の面々が直面した疑問点についてである。リャンメン村はまだその要素が十全に解放されていない……という可能性はあり得るのか?
要は「マックス」の疑念を妥当なものとした上で、更に一つの点を指摘した。即ち、「マックス」が村のお手伝いクエスト(仮)を受注できなかったという事実である。
「特殊ポータル」の性質に鑑みると、その獲得がワンタイムクエストであるとは考えにくい。そしてこれがリピータブルクエストであるとするならば、「マックス」がお手伝いクエスト(仮)を受注できなかった事が不可解になる。
「考えられる説明は幾つかあるのよね」
「幾つか?」
「えぇ。例えば〝競合者――この場合はフランネルになるのかしら――がいる場合は、そっちのクエスト進行が優先される〟というのはどうかしら」
「あー……」
「無い……とは言えない、か?」
「でもでも要ちゃん、何でそんな事するの?」
「正にそこが問題なのよね」
「要ちゃん的には本命じゃないって訳?」
「で――本筋は?」
「例えば……『マックス』は既に必要なだけの好感度、或いは認知度を稼いでいて、これ以上のクエストは不要と判断された――か、或いは」
「「「或いは?」」」
「既にコボルトのルートに入っていて、村人の好感度は問題にならない……っていうのはどうかしら?」
「「「う~ん……」」」




