第八十七章 トンの町 3.育てよ!タネ~瑞葉の場合~(その2)
ここでAIが目を付けたのが【整理整頓】というスキルである。
シュウイも拾ったスキルであるが、実はこれ……スキルレベルが3に上がると、一気に化けるスキルであった。具体的に言えば、アイテムバッグの中身を整理して実効容量を増やしたり、同じスキルを一つに統合してスキルスロットを空ける事ができるのである。
前者の機能についてはいずれシュウイが解き明かすであろうが、今問題にしたいのは後者の機能である。瑞葉は【木魔法の素地】【発芽】【成長】と、三つものスキルを二重に取得している。これらを一つずつに纏めるだけで、スキルスロットが三枠も空く事になる。
うち一枠は【整理整頓】に廻すとして、残り二枠が空く事になる。当座はこれで何とか凌げるだろう……
――などというAIの悪巧みの結果、斯くの如きカオスな事態になっているのであった。……まぁ、それぞれは間違い無く管理AIの職掌の範囲内なので、問題にされる事は無いだろうが。
そして……瑞葉の上に降りかかってきたイベントはそれだけでなく……
《クエスト「ズートの苗を育てよう」が発生しました。クエストを受けますか? なお、このクエストに期限はありません。 Y/N》
《クエスト「マンゴスタの苗を育てよう」が発生しました。クエストを受けますか? なお、このクエストに期限はありません。 Y/N》
《クエスト「バンレイの苗を育てよう」が発生しました。クエストを受けますか? なお、このクエストに期限はありません。 Y/N》
《クエスト「カランの苗を育てよう」が発生しました。クエストを受けますか? なお、このクエストに期限はありません。 Y/N》
《クエスト「チェールの苗を育てよう」が発生しました。クエストを受けますか? なお、このクエストに期限はありません。 Y/N》
「ふ、ふぇぇぇぇ……」
カナから「鳥撒布種子」が送られて来た時点では、【鑑定】してみても何の種子かは判らなかった。余人ならいざ知らず、【植物知識】のスキルを持つ瑞葉が鑑定しても不明であったのだから、運営が種名を隠していたのだろう。
発芽した時点で種名が明らかになったのだが、さすがに鳥が好んで食べるだけあって、SROでも食用として知られている種類ばかりであった。まぁ、マンゴスタなどという曲者果実がしれっと混じっているところはSROらしいと言えるが。
ちなみに、ズートとマンゴスタ――どちらの実もクエストのトリガーである――以外について見ておくと、バンレイは蕃茘枝――世界三大果実の一つに数えられるチェリモヤの仲間――に相当する植物であり、カランはフサスグリに近い種類である。また、チェールは桜桃すなわちサクランボに相当する種で、何れもSRO世界で市場に流通している果実であった。
種子を含んだ鳥の糞はあちこちに仕込んであるのだが、その中に何が入っているのかは糞によって異なっており、これは当たりの糞であったようだ。
それはともかく……一度に多数のクエストに襲われた形の瑞葉はすっかり混乱していたが、
「と、とりあえず全部Yにしとけばいいよね?」
――とばかりにクエストを軒並み受注する。
まぁ、期限などの縛りは無いようだし、受けたところで然したる問題にはならないであろうが。
クエストの受注を無事に済ませた事で、少しだけ落ち着きを取り戻した瑞葉であったが、まだ最大の問題が控えている事を思い出す。
「……一刻も早く種族レベルを上げるのって、一体どうやればいいんだろ? ……カナちゃんに訊いてみるしかないわよね……」




