第八十六章 篠ノ目学園高校 1.昼休み(その1)
「――え? 職業解放クエスト……って、何?」
妙な経緯で妙なクエストに巻き込まれた瑞葉からのメールを読んで、こちらも同じように慌てたカナが改めて瑞葉にコンタクトを取り……双方共に〝能く解らない〟という結論に至ったのが昨夜の事。元凶となった種子を寄越した張本人にカナが話を訊くという事で、その時は一応の妥結をみた訳であったが……
一夜明けた昼休み、要に事情を説明された蒐一にしてもコメントに困る。〝職業解放クエスト〟とは何だ?
自分は寡聞にして聞いた事が無いが、βテスターなら知っているのだろうか……と思って匠に視線を巡らせてみたが、こちらもポカンとしているだけであった。
「……要ちゃん。間違ってたら謝るけど……何か珍しい事が起きた――っていう事なのかな?」
「えぇ……概ねその認識で間違ってないわ」
要本人は、〝珍しい〟ではなく〝初めての〟ではないかと疑っているのだが、既に解放クエストを熟した誰かが黙っている――という可能性も無きにしは非ずなので、要としても断定は避けた。だが、珍しいのは間違い無い。
「……てか、『職業解放クエスト』なんてのがあるなんて、俺は初耳なんだが?」
「言わせてもらえれば私も――そして『ワイルドフラワー』のみんなもよ」
隣に座る茜もコックリと頷いている。
「……僕、どう珍しいのかも解んないんだけど……」
「あぁ……蒐は転職の儀を受けてないんだっけ……」
きまり悪げな口調の転職未経験者に、βプレイヤーの三人が優しく、噛んで含めるように説明していく。
「えーと……つまり……未解放の職業が現れた事が問題な訳?」
「まぁそうだな。そんなもんがあるって事すら、公表されてなかったし」
「転職に際して、今まで知られていなかった職業が提示された事はあっても、クエストが必要だった事なんて無かったのよ」
「……色々訊きたい事はあるんだけどさ、その前に……〝今まで知られていなかった職業〟って……例えば?」
「そうね……確かトリマーがあった筈よ」
「トリマーって……犬の美容師だよね。……そんな職業があったの?」
思いがけない職種名を出されて驚く蒐一に、
「えぇ。確か随分悩んだ挙げ句に別の職業にしたらしくて、掲示板が炎上してたわね。……けど、あれをして〝根性無し〟と非難するのは、私としてはどうかと思うんだけど」
「うわぁ……」
軽く引いた蒐一であったが、やや置いて話を本筋に戻す。
「――話を戻すけどさ、要するに今まで提示されたレア職業と違って、何か特定の技術や知識を持っている必要があるんじゃないか――って、思ったんだけど……」
「その技術や知識を持っているかどうかを確認するためのクエスト――そう言いたいの? 蒐君」
「うん。……けど、トリマーがすんなり提示されたって聞いて……」
困惑する蒐一であったが、幼馴染み三人組は考え込んでいた。確かに犬猫のトリミングにコツは必要だろうが、そこまで特殊な知識が必要だろうか?
翻って今回の例を検討すると……




