第七十三章 トンの町 5.再会と消息(その2)
再び当惑顔になったシュウイに、再度ツリーフェットたちが説明していく。曰く――ズートの葉は食べられそうになると強い毒を産生するため、草食動物がズートの葉を食べる機会はほとんど無い。そして、毒成分を含まないズートの葉は、【錬金術】や【調薬】の素材として珍重される。――ちなみに、毒成分は実には含まれていないそうである。
「俺たちはズートの木の世話とかしてるから」
「偶に実とか葉っぱとか貰えるんだけどな」
「ズートの木、シュウに感謝してたぜ」
「あの芽生えがちゃんと根付いて大きく育ってるから――ってな」
自分が関わったズートの芽生えのその後について、意外なところで意外な者から教えられて、驚くと同時に感心するシュウイ。
何しろ、シュウイの眼前には半透明のウィンドウが浮かび上がって、ずっと気になっていた謎の答えが示されているのだ。
《クエスト「ズートの芽生えの移植」を完全クリアーしました!!》
《クリアー報酬として、ズートの葉とズートの実を得ました!!》
(完全クリアーねぇ……ツリーフェットに再会して、その後の事を教えてもらうのが条件なのかな?)
「でさぁ……親木が言うには、その実の種をどっかに植えてくれないかって」
「日当たりの好い場所に植えて、時々魔力を注いでくれたら育つからって」
《クエスト「ズートの種蒔き」が発生しました。クエストを受けますか? Y/N》
うわぁと内心で引き攣るシュウイ。これは一種のチェーンクエストなんだろうか。ともあれ、ここで退くという選択肢は無い。
「僕は庭とか畑とか持ってないから、知り合いに頼んでみる事しかできない。それと、確実に芽が出て育つという約束もできない。それでも良いなら」
そうした場合、新たなクエストの報酬は誰に支払われるのか。――という疑問はシュウイの脳裏には浮かばなかった。そんなのは運営のお仕事です。
「あぁ、大丈夫」
「それでいいって言ってる」
ツリーフェットたちは離れていても、ズートの親木と意思の疎通ができるらしい。その事を心に留めて、シュウイはYを押していた。
用事は済んだと引き返そうとしていたツリーフェットたちであったが、今度はシュウイに呼び止められる事になった。
「中々会う機会が無くって渡せなかったけど……前に約束してたドライフルーツだよ。前より少しだけ腕が上がってるから、味の方も少しだけ上がってると思うよ」
「お、マジかよ!」
「シュウのコレ、こないだ貰った時も、村で取り合いになったからな~」
シュウイがこれまでに作ったドライフルーツは、かなりの量になっている。夕食の度にシルが果実水を要求するためだが、シュウイはそれとは別に旨味を残したドライフルーツも作っていた。友人となったツリーフェットのボックルとトックルに渡そうと、作り貯めていた分である。今回それらを惜しげも無く取り出した事で、その量は非力なツリーフェットにどうこうできる範囲を超えていた。
「……こないだと同じように、僕が村の近くまで運んで行くよ」
「でもさ、ここからだと結構あるぜ?」
確かにここから北のフィールド奥までは相当の距離がある。しかしシュウイは【疾駆】のスキルにものを言わせて北のフィールドまで駆け抜けて、ツリーフェットたちを呆れさせたのであった。




