第七十三章 トンの町 4.再会と消息(その1)
「あれ? シュウじゃないか」
「何やってんだ?」
新たな召喚獣のマハラを肩に、シルをいつものように懐に入れて歩いていたシュウイに、梢の上から声をかけた者がいた。
「ボックル! トックル!」
「ひっさしぶりだな~」
「こんなところで何やってんだ?」
シュウイに声をかけてきたのは、かつて北の森で会ったツリーフェットのボックルとトックルであった。
「こっちが訊きたいよ。 二人は北の森にいるんじゃなかったの?」
「あ~……餌探しにこの近くまで来てたらさ」
「何かが暴れてる気配がしたんで、見に来たんだ」
「またオークが出たってんなら、村に伝えなきゃいけないからな」
「あ~……ごめん。オークじゃなくて、モノコーンベアとバイコーンベアなんだ。狩ろうとしたら暴れてさぁ……」
そりゃ、モンスターだって一応は命が懸かってるんだから、狩られるとなったら暴れもするだろう。のほほんとした態度のシュウイに呆れたツリーフェットたちであったが、彼らは目敏くシュウイの肩にいるものに気付いていた。
「まぁ……お前がオークを狩った時の事は見てるからなぁ……」
「クマ公ごとき、ものの数じゃないだろうな……」
「けどさ、それはそれとして」
「肩にいるのはデスヘッドだよな?」
「どうしたんだ? そいつ」
幼虫とは言え明らかなモンスターがシュウイの肩に――機嫌好く――止まっているのを見て、不審そうな声を上げるツリーフェットたち。
その問いに答えて、実は斯く斯く然々と、ここまでの経緯を説明するシュウイ。――ついでにこの事も訊いておこうか。
「――という訳なんだけど……この子が普段食べてるものとか、怪我が早く回復するような食べものって、知ってる?」
【従魔鑑定W】のスキルを以てしても、デスヘッドの食草などという情報までは網羅されていない。契約した使役獣は契約者の魔力で生きていくから、食草などの情報は不要――と、言えばそのとおりなのかもしれないが、普段からシルと一緒に食事を摂っているシュウイとしては、マハラを除け者にするような事はしたくない。ならば食草の情報は必要不可欠。ついでに怪我の治りを早めるような食べ物があったら――ここの運営の事だから、きっとあるに違い無い――教えてもらおう。
シュウイの動機は斯くの如く純朴なものであったが……投げ返された回答は爆弾であった。
「デスヘッドの餌か?」
「木の葉っぱなら何でも食うぜ」
「あ~……でも、ズートの葉っぱが好いんじゃないか?」
「そうだな。ズートの葉っぱは滅多に食べらんないし」
「他の動物やモンスターにも効果があるしな」
「???」
意味が解らずキョトンとしているシュウイに、ツリーフェットの二人(?)組が説明する。曰く――ズートの葉には生き物の能力を向上させる効果があり、これはモンスターに対しても例外ではない。ズートの葉ほどではないにしても、レア度の高いものを与えれば、デスヘッドの能力は強化される。こういった効果を持つズートの葉は、【錬金術】や【調薬】の素材として利用される事もある。
「へぇ……そうなんだ……」
以前貰ったズートの芽生えにそんな効果があったとは……領主の庭番に渡したのは失敗だったか?
「でもシュウになら、ズートの木も葉っぱとか実とかくれるんじゃないか?」
「だな」
「???」




