表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
259/963

第七十三章 トンの町 3.召喚術の使い方

 ナントの店で無事に――運営側の視点では無事どころではないのだが――買い物を済ませ、トレード画面でタクマとカナにそれを送り付けた後、シュウイは改めて東のフィールドへと足を向けた。



「このところお前を外に出してあげられなかったしね。そういう意味でなら、時々お休みを入れるのも良いかもね」



 自分の都合でシルに日陰者生活を強いている自覚があるだけに、シュウイとしても申し訳ない思いに囚われる。しかし、シルはそんなシュウイに気にするなと言うように首を振った。良くできた従魔である。……が、シルにしてみれば、主人の懐で温々(ぬくぬく)楽々(らくらく)としていられる今の境遇が気に入っており、関係無い他人の目など知った事ではないというのも本音なのであった。ちなみにこれはシルに限った事ではなく、概して従魔は主人以外の人間の事には無関心であるのだが。


 さて、そんな主従が久しぶりに東のフィールドへ足を運び、久しぶりに手応えのある相手とやり合って満足していたのだが……



「あれ……? この子……死にかけてるのかな?」



 モノコーンベアとバイコーンベアの混群という、運営側の殺意が(ほの)()える敵モンスターの群れを――運営の期待に反して――危なげなく狩ったシュウイは、暴れたモンスターたちがへし折り倒した木の傍を見下ろした。そこにいたのは小さな身体を半分潰されて、息も()()えな幼虫であった。表示される情報によればデスヘッドという昆虫モンスターの幼虫らしい。成虫は翅を広げれば二メートル近くになるという怪物だが、この幼虫はまだ十センチ程度。正直モンスターには見えない。


 シュウイこと巧力(くぬぎ)(しゅう)(いち)は高校一年生男子。この年頃の少年の(たしな)みとして、幼虫の飼育にも少しばかり手を染めている。カブトムシやクワガタムシといった大物幼虫の飼育には手を出していない――成虫の飼育は何度でもある――が、アゲハチョウやハナムグリの幼虫を成虫にまで育て上げた事も一回ならずある。クマゼミの幼虫を掘り出して、アロエの鉢で成虫にまで育てた事もあるが、この時は羽化した成虫が奏する喜びの歌に休日の眠りを破られた両親から、以後絶対禁止を申し渡された。

 そんなシュウイから見れば、自分――とモンスター――の不始末で傷付けられ死にかけている幼虫というのは、罪悪感と憐憫(れんびん)の対象でしかなかったのである。



「どうしよう……僕は治癒系のスキルは持ってないし……」



 普通のプレイヤーであれば治癒系の魔法はお薦めなのだが、ユニークスキル「トリックスター」に呪われている身のシュウイには、そんなお役立ち系のスキルは寄って来ない。ポーションだけが命綱となっている。ならばポーションを与えて回復させてはと思うのだが……



「……液体のポーションが虫体の気門を(ふさ)いで窒息……ぐらいの罠は張りかねないからなぁ、ここの運営……」



 救おうとしてかけたポーションが原因で窒息死……などという結果になっては泣くに泣けない。

 これは詰んだか――と思いかけたところで、懐のシルが()(じろ)ぎした。



「あ……そうだ、確か……」



 慌てて使役術のヘルプファイルを開き、思っていたとおりの記述がある事を確認する。そこには〝……いずれの場合も使役獣は、使役者の魔力を消費する事で回復する……〟という文言が記されていた。つまり、シュウイがこの幼虫と使役契約を結べば、シュウイの魔力によって傷を癒す事が可能な筈。魔力の消費にしても、そこまで負荷が大きいとは思われない。

 この時点でシュウイは幼虫と契約を結ぶ事を決めていた。残る問題は、どの使役アーツ(・・・・・・・)で契約するか(・・・・・)である。



「生かしておくために契約するんだから、【死霊術】は却下。【従魔術】の場合は……」



 従魔が負傷した時の事を考えると……【従魔術】では回復魔法だとかポーションだとかに頼っていたような気がする。そしてこれが使えない事は既に検討済みだ。



「そうすると【召喚術】の方かな? 確か、召喚獣の身体は召喚者の魔力で形成されるとか聞いたような気がする……いや? あれは別のゲームだっけ?」



 ともかく召喚契約を試してみるとしよう。上手くいかなければ【従魔術】に切り替えればいいだけだ。

 出たとこ勝負――シュウイが【召喚術】を使うのはこれが初めて――で試してみたところ、幼虫との召喚契約に成功。その瞬間、傷付いていた幼虫の身体が光に覆われ……光が収まった時には、傷も癒え十五センチほどに成長した幼虫が嬉しそうにシュウイを見上げていた。



「え~と……」



《デスヘッドの幼虫がシュウイの召喚獣になりました》


《召喚獣に名前を付けて下さい》



「名前ねぇ……」



 幼虫の名前など、ゲームは勿論リアルでも付けた事が無い。どこかの漫画のように、芋虫だから芋ちゃんではあんまりだろう……何だか、目の光が消えたような気もするし。

 シルがガ○ラなら、この子は差し詰めモ○ラだろうか。そっち方面から名前を付けるとなると……



「蛾羅……ガラ? ガーラ? カーラ? いっそラモスとか……なんかピンとこないなぁ……二匹いたらエミとユミとか付けたんだけど……もうマハラでいいか……」



 モ○ラの映画の中で流れた歌の題名から名付けると、幼虫改めマハラの身体が淡く発光し、シュウイの身体から魔力が流れて繋がったような感覚があった。ステータスを確かめてみたところ、確かに召喚獣のところにマハラの名があった。



「ま、いいか。これからよろしくね、マハラ」

「キュイ!」


ずっと以前に読者の方から戴いた「モ○ラ=召喚獣」案ですが、こういう形になりました。歌については別途考えてはいるのですが、こちらはどうにも碌でもない話になりそうなので、形にするかどうか逡巡しています。もしも形にするとしても、お目見えはまだ先の事になりそうですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ