第七十三章 トンの町 6.ズートの実(その1)
あの後ツリーフェットたちと別れて森を出たシュウイは、改めてアイテムバッグの中を確認してみた。そこにはあったのは……
「ズートの実と葉――結構大きい――が二十ずつかぁ……話を聞いた限りじゃ、これって一財産だよね」
ズートの葉は【錬金術】や【調薬】の素材にもなるらしいが、何より使役獣の餌として優秀らしい。それが判っている以上、いつになるか判らない【錬金術】や【調薬】の上達まで、これらを死蔵しておくつもりなど露ほども無い。
「……とは言え、一応ナントさんには話しておこうかな。前回みたいにクエストが始まったりする可能性もあるし……」
そう何回も想定外のクエストが突発するようでは、運営の胃に孔が開きそうだが。
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「…………」
「あの……師匠? ……ナントさん?」
帰りに立ち寄った「バランド薬剤店」に偶々ナントが顔を出していたので、これ幸いと事情を話してズートの実と葉を出して見せたところが……
「え~と……何か、拙かったですか?」
先述した事態となったのである。……そりゃ、【調薬】や【錬金術】で幻の素材扱いされるズートの素材が山積みになってれば、まともな薬師や商人なら、同じ反応を示すだろう。事情が解っていないのはシュウイだけである。
「……シュウイよ……お主、自重という言葉を知っておるか? (……弟に引き合わせるのが心配になってきたわい……)」
「そんなもの……シュウイ君が知ってる訳が無いでしょう……」
「???」
相変わらず事情が解っていないシュウイに、師たるバランドが説明していく。曰く――毒性分を含んでいないズートの葉など滅多に手に入るものではない事、そんなものを持っていると知られたら、王家から供出命令が出てもおかしくない事、「異邦人」であると住人であるとを問わず、ズートの葉と実が一山あるなどと知った日には目の色を変えるであろう事……
「え~と……」
「さっさと仕舞い込んで、知らぬふりを決め込んでおく事じゃ」
「……と言いたいのは僕も山々なんですけど……」
ここで怖ず怖ずと割って入ったのはナントであった。
「む……? 何ぞあったのか?」
「え~と……ここの領主に提出した方が良いような気が……」
少し困ったように曖昧な言い方をするナントを見て、シュウイは事情を察した。これはまたもや納品クエストが発生したのだろうと。
「……どちらを幾つ必要なんですか? 葉っぱの方は、さっきも言ったように召喚獣に食べさせたいので、全部はお譲りできませんけど」
シュウイがそう言うと、ナントはほっとしたように口を開く。
「大丈夫。クエ……納品すべきは実の方みたいだから。葉っぱの方は、僕も黙っていた方が良いと思う」
それなら――とシュウイは考える。ズートの親木からの依頼もあるし、どうせ実の方は師匠とナントに押し付けるつもりだったのだ。ついでにテムジンも呼び寄せて、ズートの実の試食会としゃれ込もう。




