第七十三章 トンの町 1.特訓休みとナントの店
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「え? 今日は――」
「特訓お休みなんですか!?」
尻尾があればブンブンと凄い勢いで振られていただろう――そんな感じの二人を目にして、シュウイは反省の念に囚われていた。特訓が酷過ぎると友人たちから駄目出しされたが……この様子を見ると、あながち的外れな意見でもなかったらしい。
「連日の特訓じゃへばっちゃうんじゃないかって意見されてね。今日は特訓はお休みにするから、自分たちで好きな事をやっとくと良いよ」
そう聞いて手放しで喜ぶ二人に、シュウイは腹を括って告げる。
「それと……僕の遣り方が気に入らないんなら、無理して受ける必要は無いからね? 他の指導役に替えてもらうように、ギルドに頼んでも構わないから」
そう言ったら二人は暫くポカンとしていたが、凄い勢いで首を――横に――振った。指導役のチェンジを頼む気は無いらしい。
「不満なんかありません! ……要望なら少しありますけど」
「できたらこのまま指導をお願いします。……少し手加減してもらえると、もっと嬉しいですけど」
どうやら自分が指導役で構わないらしいと安堵したシュウイ。……後半の希望は耳に入っているのか?
「そう? 僕でいいなら構わないけど……じゃあ、取り敢えず今日は二人とも自分のやりたい事をやってて」
「はい」
「あの……先輩はどうするんですか?」
「僕? 狩りにでも行こうかと……一緒に来る?」
そうシュウイが問いかけると、二人とも凄い勢いで首を振った――やはり横に。
軽く苦笑して二人の意思を確認したシュウイは、そのまま狩りに出向こうとして……
「う~ん……狩りに行く前に、頼まれてた用事を済ませておいた方が良いよね」
シュウイはそう呟くと、「ナントの道具屋」の方へと足を向けた。
・・・・・・・・
「はいよ~。『鼓吹の鈴』二個、毎度あり~」
暢気そのものといった声で商品をシュウイに手渡しているのは、「ナントの道具屋」の店主ナントである。
「確かに。これって何か使用時の注意事項とかあります? 昨日のうちに聞いておけば良かったんですけど」
「う~ん……特に無いかな。強いて言えば所詮はレプリカだからね。効果もだけど、耐久性もそこまで無いかもしれないよ? 【鑑定】してみれば判るんだけど、耐久値の部分が見えなくなってるんだよね」
「え? そうなんですか?」
「あれ? シュウイ君は 【鑑定】持ってなかったっけ?」
「僕が持ってるのは【調薬(邪道)】と【錬金術(邪道)】の【素材鑑定】なので……今は【素材鑑定W】になってますけど……それだと耐久値とかは表示されないんですよ」
【素材鑑定】はあくまで素材としての特性や品質を鑑定するものなので、耐久値のような項目は抑表示されない仕様らしい。
「あぁ……そうなんだ……まあ、一応鑑定しておいたら?」
この時、ナントは深い考えもなくシュウイに【素材鑑定】を勧めただけであり、シュウイも何を訝る事なく【素材鑑定】を実施したのだが……
「はい……あれ?」
「……どうかしたかい?」
戸惑ったようなシュウイの様子に微かな不安を覚えるナント。この少年が持ち込む素材には色々と思うところがあるが……今回は自分が提供した商品だ。事前にちゃんと【鑑定】もかけているし、おかしなところは無い筈だが……?
一方、シュウイの目に移っている鑑定結果は……
【素材/装備アイテム】鼓吹の鈴 品質B レア度3
味方の力を増大させ敵の力を削ぐ能力を秘めた『聖呪の鈴』のレプリカ。オリジナルには劣るが、術者のバフやデバフを強化する能力がある。
素材アイテムと示しておきながら何の素材なのかは書いてない鑑定結果を見て、そう言えば前にも同じような事があったな――と、朧な記憶を探るシュウイ。確かオークメイジの杖を【素材鑑定】した時に、同じような鑑定結果が示された筈だ。
つまり……この「鼓吹の鈴」は、何かの素材に使えるらしい。レシピが表示されないのは、自分の熟練度がそこまでのレベルに達していないせいだろう。
「ナントさん……この鈴、何かの素材になるみたいですから、僕も三つほど購入しておきます」
「……え?」




