表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
252/968

第七十章 ナンの町~「黙示録(アポカリプス)」~ 2.血小板製剤

 そう言ってケインが二人に注射器――こちらの呼び名では吸血器――を手渡す。血小板製剤を吸い上げて……



「……まさかゲームの中でまで、注射のお世話になるたぁ思わなかったぜ……」

「……あまり好ましい事ではないんだが……」



 揃って注射嫌い――好きな者はいないと思う――をカミングアウトした二人に、他のメンバーから叱咤と激励の声が掛けられる。



「……解ってらぁ……やるよ……」

「……ゲームでも、注射の痛みはあるんだな……」

「……マジかよ……つっ! ……おぉ、けど……」

「正解だったみたいだな。毒状態解除のメッセージが出た」



 勇気ある二人の志願者による人体実験の結果、ワイルドボアの血小板製剤は死刑宣告者(デス・センテンサー)の紫斑毒に有効であると確認された。



「これで討伐の目処は立ったな」



 心強そうに(うなず)くケインであったが、そこへ何やら考え込んだような様子のヨハネが待ったを掛けた。



「何か問題があるのか?」

「問題と言うほどではないが……これは本来の討伐法ではないかもしれん」

「何?」

「どういうこった?」



 ()(げん)そうなパーティメンバーたちに、訥々(とつとつ)と自分の考えを述べていくヨハネ。一応はトンの町のモンスターから得られているのだから、正規の方法ではあるのだろう。しかし……



「入手方法があまりにもイレギュラー過ぎる。シュウイ君の話に()れば、住人(NPC)の薬師すら知らなかったらしいからな」



 ヨハネの指摘にう~んと考え込む一同。確かに、【調薬(邪道)】なんて妙なアーツで発見された特効薬である。普通のプレイヤーが気付くようなものではないような気がする。



「……だとしたら、本来の討伐法は何なんだ?」

「βテストでやったようなレイド戦じゃないのか? シュウイ君が面白い方法を提案してくれたそうじゃないか」

「犠牲が出るのは覚悟の上かよ……」

「いや、盾のようなものを揃えておけば、毒による被害は最低限に抑えられるだろう」

「いや……ちょっと待て。……この解毒剤だが、少なくとも住人(NPC)の薬師なら作れるわけだ。そうすると問題は、薬の処方(しょほう)を知っているかどうかじゃないのか?」



 何かに気が付いた様子のケインが割って入った。



「あぁ? だったらどうだってんだ?」

「いえ……ナンの町の住人(NPC)なら知っている――って事ですか?」

「あり得ない話じゃないだろう?」



 成る程。死刑宣告者(デス・センテンサー)がいない町の(くす)()であれば、解毒剤の事を知らなくても不思議ではない。逆に、死刑宣告者(デス・センテンサー)に脅かされているナンの町の(くす)()なら、解毒剤の処方を知っていてもおかしくない。



「解毒剤に関する情報を得るには、ナンの町の住人(NPC)との交流が必要……ここの運営が好きそうな展開よね」



 ベルの台詞(せりふ)に納得の声を上げる仲間たち。そういう展開なら充分に考えられる。運営の想定をシュウイ少年がひっくり返しただけだろう。



「ま、運営の思惑は()いといてだ、死刑宣告者(デス・センテンサー)を討伐するってんなら、解毒剤の数は揃えておく必要があらぁな」

「ナントが幾つかストックを持っている筈だが……」

「足りるかどうかは微妙よね」

「足りないと考えた方が良いだろう。ごく短時間の闘いでも、五人のうち二人が毒を喰らったんだ。戦闘が長引いたり、討伐に参加するパーティが増えれば、被害者も当然多くなる」

「つまり……」

「原料となるワイルドボアの血液を、もっと集める必要があるな」

「シュウイ少年にばかり頼る訳にはいかん。ここは一つ……」

「あぁ、ボア狩りの周回って事になるな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ