第七十章 ナンの町~「黙示録(アポカリプス)」~ 1.死刑宣告者(デス・センテンサー)
「準備はいいな?」
「OK」
「いつでも行けるぜ」
ナンの町の外れ、ゴッタ沼にやって来たのは「黙示録」の面々であった。シュウイが作った【血小板】の効き目を確認するためである。
「今回の目的はあくまで【血小板】の効果確認だ。誰かが毒を浴びたら即座に待避する。製剤も二本しか無い訳だからな」
「解ってるって」
「どのみち俺たちだけじゃ力不足だしな」
「βテストでも悪名高かったレイドボスだものね」
彼らの視線の先に蟠るのは巨大な黒い影。ナンの町のエリアボスと目されている死刑宣告者である。
「多分だが、あいつを斃すのがシアの町に進む条件……少なくともその一つなんだと思う」
「全く……ハードルが高過ぎるだろうがよ……」
「βテストじゃ、幾つものパーティが全滅したのよね……」
「その最大の原因が紫斑毒だ。それに抗する事ができるアイテムがあると言うなら、攻略はぐっと現実的になる」
「だがその前に、本当に効くのかどうかを確かめなきゃならん訳だ」
「そろそろ行くぞ」
「おう」
覚悟を決めた五人のプレイヤーが、βテスト最凶と謳われたレイドボスに向かって行った。
・・・・・・・・
「ちっ! 相変わらず硬ぇっ!」
「怯むな! HPをある程度削らんと、肝心の紫斑毒を撒いてくれんぞ!」
死刑宣告者はただでさえ硬いレイドボスであり、本来なら五人などという少人数で挑むべき相手ではない。今回は血小板製剤の効き目を確認するのが目的で討伐目的ではない事、効果の確認がとれるまでは他者へ漏らす訳にはいかない事などから、「黙示録」の五人だけで挑んでいるのだが、毒抜きでも充分以上に手強い死刑宣告者に、泣き言が出るのも無理はない。だが、努力は何時か報われるもので……
「おしっ! ケイン! 喰らった! 紫斑毒だ!」
「こっちもだ!」
「よぉしっ! 全員待避!」
壁役のダニエルと重剣士のヨハネが紫斑毒を浴びたところで、ケインが全員に待避を指示する。手持ちの血小板製剤は二本だけ。これ以上の犠牲者は許容できない。
「まぁ遅効性だから、最悪トンの町へ戻って、シュウ坊に薬を作ってもらやいいんだけどな」
「毒を浴びたのはダニエルとヨハネだけか? 他に中毒者はいないか? 自分のステータスを確認しろよ?」
死刑宣告者から逃げ切ったところで、リーダーのケインが被害状況を確認する。
「まずは……ちぃとばかり飲んでみるか……ぶっ!」
「どうした!?」
「不味い……」
「「「「はぁ?」」」」
しかめっ面のダニエルの台詞に、思わず力が抜ける一同であったが……
「いや……案外重要な事なのかもしれん。飲むというのが正しい摂取法なら、味の方もそれなりの筈だ」
「……そのとおりだったみてぇだぜ。〝摂取方法が正しくありません〟ってメッセージが出やがった」
「……以外に親切設計なんだな……」
「ふむ……それなら今度は自分が……毒を受けた部分に振り掛けてみるか……」
ヨハネが外用を試してみるが、やはり不適切のメッセージが出ただけであった。
「とすると……いよいよ本命だな」




