第六十九章 イーファンの町~「ワイルドフラワー」~ 1.センの疑問
「ねぇねぇカナちゃん、『マックス』の魔術師さんの件なんだけど……」
イーファンの町で馬車を降り、さて朝食でも――と露店を物色していた「ワイルドフラワー」の面々であったが、そんな中にあって珍しくも考え込んだ様子で口火を切ったのはセンであった。
「どうしたの?」
「うん。あたしたちって、モンスのテイムとかできるのかな?」
「「「「……はぁ?」」」」
やにわに奇妙な――しかも不吉な――事を言い出したセンに、もの問いたげなパーティメンバーの視線が集中する。
「……説明してくれるかしら?」
「うん。『マックス』の魔術師さんの事って要するに、召喚術取得前の経験で従魔の好感度が変化するって事でしょ? だったら……」
ここまで言われれば、勘の良い者ならセンの懸念に気付く。
「……私たちが討伐したのと同じ種類のモンスターが、テイムやサモンに応じてくれるのか……って事?」
「うん、そう」
ちなみに彼女たち「ワイルドフラワー」は、数多くのモンスターを討伐してきた優秀なパーティである。
「また……VRゲームの根本を揺るがすような事を……」
「そんな仕様にしてたら、ユーザーたちからクレームの嵐が来るわよ?」
「その考えを推し進めると、使役モンスを敵モンスと戦わせる事自体が微妙じゃない?」
「う~……そうなのかなぁ……」
パーティメンバーからの容赦無い突っ込みを受けて凹みかけたセンであったが、そこに再び爆弾を投下したのがカナである。
「いえ……逆に考えてみれば、無いとは断言できないわね」
「カナ?」
「どういう事?」
「つまり……討伐した者がテイムしにくくなる事は無くても、討伐していない者ほど好感度が高くなる可能性?」
「えぇ。その可能性は否定できないと思う。その一方で、強者に従うのを当然と考えるモンスターの場合、圧倒的な力量で討伐した方が使役し易くなる可能性も考えられるわね」
「むぅ……」
「ここの運営の事を考えると……可能性はあるか……」
「ねぇねぇカナちゃん、それって、ホーンドラビットには嫌われるけど、プレーリーウルフは認めてくれるって事?」
「概ねそんな感じかしらね」
普通ならそこまで面倒なデータ管理はしないと思うが、何しろこれは曲者ゲームとして名高いSROである。それくらいのトラップなら仕掛けてあるかもしれぬ。
「そうなると……これまでの戦果も考慮した上で、テイムするモンスターを選ばないと駄目なのか……」
「あくまで可能性よ? それに、好感度が下がるのでなく上がるだけだったら、当事者は却って気付きにくいかもしれないわよ?」
「うわ……」
「そこまで考え……そうだよね……ここの運営なら」
「ん。それに、露見した場合も非難は受けにくいと思う」
「従魔術はともかくとして、召喚術の場合はどうなるのかな?」
「あれって、倒した事のあるモンスターから選ぶ事になる筈だよね?」
「……最初の召喚で召喚されにくくなるとか?」
「いや、そしたらほとんどランダム召喚になるじゃん」
「……これって、下手に噂になったら、討伐依頼を受けない冒険者が増えたりしないかな?」
「……なりそうだよね」
「ゲームのシステムが破綻しない?」
「……確かにそうね。ノンアクティブで友好的なモンスターを攻撃した場合に好感度が下がるとか……そういう程度だと考えた方が良いかもしれないわね」
「出会い頭に魔法ブッパした連中は駄目って事か~」
「そっちの方がありそうだよね」
何にしても、使役候補のモンスターに出会わないと話にならない。折角だからテイム用に餌になりそうなものでも見繕うかと、町を散策していたカナたちであったが……




