第六十八章 追捕クエスト第一幕~「マックス」~ 2.リャンメンの村
ともあれ宿を取るのが先決と、マックスの面々は村の中を歩く。何しろ小さい村の事、さほど歩かずに村唯一の宿に辿り着く事ができた。まぁ、宿の受付が冒険者ギルド出張所の受付を兼ねていたのは予想外だったが。
「ここは小さな村だけど、収穫期には作物を購入する商人たちでごった返すし、その商人たちを護衛する冒険者たちもいる訳だ。出張所くらいはあった方が良いが、その時期以外には、お前さんたちみたいに採集目的の冒険者が時折やって来るだけだからな。態々支所を開くほどの事は無い」
「「「「「はぁ……」」」」」
「それに、この村には宿はここ一軒だけだからな。商人も冒険者もどうせここに泊まるんだから、兼業していた方が色々と便利なのさ。あぁ、心配すんな。お前さんたちの事は聞いてる」
世間話を装って、さり気なくタクマたちの役どころ――素材採集が目的の冒険者――を教えてくれる受付の男。与えられた部屋に収まった五人と一羽が、少し声をひそめて今後の予定を話し合う。
「要するに、俺たちゃ素材を採りに来た冒険者って事だ」
「けど、何の素材を採りに来たんだ? この辺りの素材の事なんか知らんぞ?」
「今晩にでも繋ぎがやって来るだろうから、その時に訊けばいいさ」
「けど……俺たちは一応他所者って訳だろ? 警戒されたりしないのか?」
「焦って根掘り葉掘り聞き込むような真似をしなければ、大丈夫じゃないか」
「うむ。ゲーム的な視点から見ても、着替えや変装を要求されるとは思えん」
「身も蓋も無い言い草だが……そのとおりなんだろうな」
「まぁ……幸か不幸か、今から採集に出るには時間も少し遅い。我々が宿に引っ込んでいても、そう奇異には映らんだろう」
納得しかけた一同であったが、
「んじゃ、俺はちょっくら訊き込みに出るとするか」
という斥候の発言が物議を醸す事になる。
「慌てんなって。ホシの事を訊き込もうってんじゃないんだ。この辺りのモンスターの出没状況だとか、山径が崩れたりしてないかとか……山に入る以上、そういうのは知っておかなきゃならんだろ?」
成る程。それくらいは確認しておかないと、却って不審に思われるかもしれない。
「下手を打つ気は無ぇから、安心して待ってろよ」
・・・・・・・・
訊き込みから戻ったバリスを交えて村周辺の状況を確認していると、マギルの頭上にいたルヴァがホウと鳴いた。
「――いるか?」
「……誰だ」
「頼まれていたものを届けに来た」
冒険者ギルドの潜入調査員であった。
「……すると、この山のどこかにアジトがあると?」
「あぁ。それ以上細かくは絞り込めなかった。気付かれて逃げられては元も子も無いんでな」
「いや、充分だ。我々はこの村へ素材採集に来た事になっているから、そのふりをして山に入るとしよう」
「問題の場所にいきなり行くのはお勧めせんぞ? 連中も監視ぐらいはしてるだろうからな」
「解った。最初は近場の山をウロウロするとしよう。それで訊きたいんだが、ホシがどこかに高飛びしそうな気配はあるのか?」
「いや、今のところそれは無い」
これで、このクエストにタイムリミットが設定されていないらしい事が判った。ただしそうは言っても、早く捕縛した方が高評価になるのは疑いない。
「もう一つ。我々が探しているという素材は何にすればいい? あちこちの山に分け入ってもおかしくない素材としてだが」
「それなら……ヴォークの実だな。日当たりの好い林に生えるが、生える場所が限られているから高値で取引される。この辺りで見かけたという話は無いが、だからといって生えていないとも限らん」
「成る程。一攫千金を狙う馬鹿な冒険者なら、欲に駆られて探そうとしてもおかしくないか」
「そういう事だ」
・・・・・・・・
繋ぎの男が帰った後で、五人と一羽は再び頭を寄せ合って話していた。
「この村、リャンメンっていうらしいな……」
「そうきたか……」
「俺はリャンペイコかと思ったんだけどな。で、次ぎに出てくるのがサンアンコとかスーカンツとか」
「長過ぎるからじゃないか?」
ちなみに、トンの町近くの村(未開放)はペンチャンとカンチャンであるが、彼らはまだその事を知らない。




