表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
242/966

第六十七章 トンの町 2.新人指導~モックの場合~(その2)

「ギター……じゃないよね?」

「マンドリン?」

「リュート……いや、チャランゴかな?」

「さすが、β商人ともなると、楽器の事も()くご存知なんですね」

「β商人って……いや、チャランゴの事なら偶々(たまたま)だけどね。て事は、やっぱりチャランゴで合ってるのかい?」

「はい」



 不得要領な表情のシュウイとエンジュに、ナントが解説する。曰く、チャランゴとは南米のリュートのようなもので、胴はアルマジロの皮でできているのだと。



「アルマジロ……」

「言われてみれば……って、SRO(スロウ)にもいるんですか? アルマジロ」

「もしくは、アルマジロに似たモンスターだろうね」

「あ、モンスターだそうです。そういう素材は魔力が乗り易いんだとか」

「「「成る程~」」」



 そこは一同納得したところで、今度はシュウイが新たな問いを放つ――三人を代表して。



「でもさ、何でアルマジロ? 吟遊詩人って、普通は竪琴とかじゃないの?」

「僕もそう思ってたんですけど……ハーフリングにはハープよりこっちだって言われて……」



 ハーフリングという種族は好奇心が強く、どこにでも何にでも首を突っ込み、()く飲み、食い、喋って人生を楽しむ。そういう陽気で騒がしい種族という設定だった筈だ。確かにそれならハープのしっとりした音色より、陽気なリュート系の楽器の方がピッタリくるかもしれないな――と、納得するナント。一方でそこまでの設定を知らないらしいシュウイとエンジュは、解ったような解らないような表情である。



「まぁ、その辺は気にしなくてもいいだろう。ちゃんと弾けるんだろう?」

「え~と……楽器の演奏は吟遊詩人の特性らしくって、これだけじゃなく大抵の楽器は扱えるようですけど……僕はまだ転職前なので……」

「お察しってレベル?」

「ははは……」



 聞けばリアルでギターの扱い方を習っているそうだが、まだまだ弾くなどというレベルではないとの事。



「そういう事なら、サブ楽器も扱いが簡単なものの方が良いね。ついでに、持ち歩きに便利で壊れにくい、ある意味原始的な楽器の方が良いと思う。あくまで万一への備え、間に合わせみたいなものだからね」

「「「成る程」」」

「タンバリンとかカスタネットでも良いんだろうけど、今回僕がお勧めするのはコレ」



 そう言ってナントが取り出したのは……



「「「鈴?」」」



 見た目は風鈴のような感じの、鋳物でできているような鈴であった。銅鐸の小さいようなものを想像してもらえればいいだろう。



「ただの鈴じゃないよ。これは、この国でも名高い魔道具、味方の力を増大させ、敵の力を削ぐ能力を秘めた『聖呪の鈴』!」

「「「おぉぉ~!」」」

「……のレプリカ、『()(すい)の鈴』」

「「「おぉぉ……?」」」



 上がりきったテンションが一気に降下したような三人に対して、レプリカと言ってもそう馬鹿にしたものではないのだと説明するナント。



「オリジナルの『聖呪の鈴』ほどじゃないけどね、これも術者のバフやデバフを強化する能力があるんだよ」

「あぁ……それで『()(すい)の鈴』……」

「鈴の名前としては微妙ですよね……」

「太鼓でも笛でもないものねぇ……」

「名前はともかく、確かに強力そうな、そして吟遊詩人と相性の良さそうな魔道具ですよね」

「そう、これを特別に金貨四十枚!」

「「「高っ!」」」

「……のところ、割引価格で金貨二枚! しかも分割払いでOK!」

「「「――は?」」」



 毒気を抜かれた(てい)の三人に、ナントが自分の事情を説明する。



「つまり、モック君に広告塔になってほしい訳さ。吟遊詩人ならこの鈴を効果的に使えるだろうしね」

「え?」

「広告塔って……?」

「つまりね、僕はこれのオリジナルを保有している領主様から、このレプリカの販売を委託されたんだよ」



 意味ありげにシュウイを見るナントの視線から、ピンと事情を察するシュウイ。恐らくこれは、先日ナントが受注したという「領主への献上クエスト」の褒美なのであろう。ちらりとシュウイがナントを見遣(みや)ると、僅かに(うなず)いてみせた事から、シュウイは自分の想像が合っている事を知った。



「そういう事ならありがたく買わせて戴きますけど……ご期待に添えるかどうかは判りませんよ?」

「なに、大丈夫。シュウイ君が指導してるんならね」



 それはどういう事なのかと、シュウイとモックが問い詰めようとするが、そこをさらりと流すようにナントが話を続ける。



「で、身を守るための武器とかスキルとかは?」

「あ……いえ、そっちはまだ……」

「素質とか適性とかが判らないから、それを見てからアドバイスしようと思って」

「ふぅん……だったら、あとは防具くらいかな。戦闘を考慮してないんなら、革鎧が良いかな?」



 という具合にサクサクとモックの装備が決まっていく。



「そっちのお嬢さんは宝石職人(ジュエラー)だったね。という事は、原石の採掘なんかもするのかな?」

「あ、はい。一応」

「だったら、これも詩人君と同じ理由で、道具の予備を持っていると良いよ。軽めの鶴嘴(つるはし)とハンマー、それにタガネとかは消耗品だし、場合によっては道具をうっちゃって逃げ出す事もあるからね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >場合によっては道具をうっちゃって逃げ出す事もあるからね うっちゃる って確か方言なので注釈入れるか直すかした方がいいと思います
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ