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第六十五章 トンの町 6.微睡みの欠片亭/運営管理室

 新人指導の初日を終えて、なぜかぐったりした様子の二人を伴ってトンの町に戻ったシュウイは、ナントの店の前で二人と別れた。本日の成果品についても、冒険者ギルドで買い取ってもらうと人目を引くだろうという事で、ナントの店に持ち込んだのである。

 シュウイのスキルについては他言しないように口止めしたが、二人もその方が良いと判断したようだ。馬鹿正直に事情を話して、不要なやっかみを背負(しょ)い込むなど、愚行以外の何物でもない。他の第二陣プレイヤーには(とぼ)け通す事で合意し、明日からの指導を約した上で、シュウイは宿に戻って来た。この「微睡(まどろ)みの欠片(かけら)亭」は、居心地が好い分宿代もお高めになっている。始めたばかりの新人がおいそれと泊まれる宿ではない。実際には本日のドロップ品でそれくらいの費用は捻出できた筈だが、何も態々(わざわざ)目立つ必要は無い――と、いう事で、二人はもう少しお安い宿を取る事にしたようだ。


 ともあれ、夕食を終えて自室に引き取ったシュウイは、懐からシルを出してやる。



「シル、しばらくあの二人の相手をしなくちゃならないから、お前は懐に隠れていてね? 思う存分暴れられないのは悪いと思うけど……」



 シュウイがそう謝ると、シルは気にするなと言うように頭を振った。つくづくできた従魔である。



「せめてものお詫びに、食事の方は少し(おご)ったものにしておいたから」



 そう言ってシルの好物を取り出すと、シルは嬉しそうに夕食に取りかかった。



(今日のところは食事で納得してくれたけど、そういつまでも日陰者扱いするのもなぁ……。かといって、為人(ひととなり)()く判らない相手にシルの事を話すのも躊躇(ためら)われるし……夜の狩りにでも行って、シルの不満を晴らした方が良いのかな……)



 シルの事を隠していたので、当然シルが活躍する事も無く、レベルアップはお預けである。まぁ、シルもシュウイも、トンの町近辺では既にレベルアップが難しくなってはいるのだが。



「あー……やっぱりレベルアップはしてないや。今日は隠蔽スキルも使ってないしね。警戒系のスキルは使っておいたけど、あれくらいじゃレベルアップの足しにはならない……あれ?」



 ステータスを眺めていたシュウイは、使用した覚えの無いスキルがレベル1になっているのを見て首を傾げる事になった。



「【掘り出し物】と【福笑い】がLv1になってるけど……」



 何が切っ掛けで解放されたのだろうかと、とりあえずヘルプを読んでみる。



「へぇ~……二つとも幸運値(LUC)に影響するスキルなんだ……。【掘り出し物】を持ってると、獲得したアイテムなどが値打ちものである確率が微上昇する……。あぁ、モンスターのドロップを獲得したのが切っ掛けになって発動した訳か。じゃあ【福笑い】の方は……」



 と、ヘルプを読んでいたシュウイが微妙な表情になる。



「笑うと幸運値が微上昇する。作り笑い不可……って……僕、笑ってたのかな?」



 (しゅう)(いち)の異名の一つである「微笑みの悪魔」は、かつて敵対者を()(まみ)れの半殺しにした時、ずっと微笑みを絶やさなかった事に起因している。あの時は、相手が大人数で武器を持っていた事もあって正当防衛が認められたが、不敵な(わら)いを浮かべて粛清の拳を振るう(しゅう)(いち)の姿は、本人が天使のような容貌をしている分、(かえ)ってインパクトが大きかったらしく、恐怖の体現のような扱いになっている。

 自分では自覚していなかったが、どうやらSRO(スロウ)内での狩りの時も、(わら)いを浮かべていたらしい。



「……そう言えば、デカブツを()した時にも、ベルさんがそんな事を言ってたっけ……」



 気付かないうちに「微笑みの悪魔」が降臨していた事に、少しばかり凹むシュウイであった。



・・・・・・・・



 この日、例によって運営管理室は沈黙が支配していた。


 最近この部屋は、怒号か沈黙のどちらかしか無いような気がする。そして、その沈黙を破ったのは、最近ここに配属されてきた一言(ひとこと)夕子という女性スタッフであった。



「あのぉ~、あのスキルって、シュウイ君と相性が好過ぎるんじゃないですかぁ?」



 彼女が言っているのは、そして他のスタッフたちを凍り付かせたのは、【掘り出し物】と【福笑い】による効果である。片や獲得アイテムの品質が高くなる確率が微上昇、片や笑う事で幸運値が上昇。薄笑いを浮かべて大量のモンスターを狩る事が半ば日常化しているシュウイと、あれらの幸運スキルがタッグを組んだ日には……



「……いや、効果はどちらも微上昇なんだろ……?」

「そう、そうだな。……実際に、大したものは落ちなかったし」

「目を()らすな。まだレベル1であれだけの効果なんだぞ。レベルが上がった日には何が落ちるか……」

「いや。そっちこそ考え過ぎだろう。こう言っては何だが、あの少年のドロップが破格なのは今に始まった事じゃない。多少幸運値が上がったところで、今更気に病む必要は無かろう」

「極悪が極悪+になったようなもんか……」

「むぅ……そう言えばそうだが……」

「どうするんですか? 木檜(こぐれ)さん」

「……幸運値に影響するレアスキルの配置を見直せ。これ以上妙な効果を強める事だけは避けた方が良い。……違うか?」

「いえ……早速取りかかります」

 


----------


★《シュウイのスキル/アーツ一覧》 


レベル:種族レベル8+


スキル:【しゃっくり Lv2】【地味 Lv6】【迷子 Lv3】【腹話術 Lv2+】【解体 Lv9】【落とし物 Lv10】【べとべとさん Lv3】【虫の知らせ Lv8+】【嗅覚強化 Lv7+】【気配察知 Lv7+】【土転び Lv3+】【お座り Lv3】【掏摸(すり) Lv3】【イカサマ破り Lv5】【反復横跳び Lv4】【日曜大工 Lv3】【(つう)() Lv1+】【腋臭(わきが) Lv1】【デュエット Lv5】【般若心経(はんにゃしんぎょう) LvMax】【弓術(基礎) Lv5】【狙撃(基礎) Lv7】【投擲 Lv6】【器用貧乏 Lv5】【飛礫(つぶて) Lv6】【擬態 Lv3】【ウェイトコントロール Lv3+】【隠蔽 Lv3】【疾駆 Lv3】【給水 Lv3 霊水に統合】【古道具屋 Lv1】【聴耳(ききみみ)()(きん) Lv5】【大食い Lv0】【闇魔法の素地(オーク) Lv0】【木登り Lv3】【霊水 Lv2】【福笑い Lv1】【掘り出し物 Lv1】【堆肥作り Lv0】【ろくろ首 Lv0】【メビウスの壁 Lv0】【整理整頓 Lv0】【捕り手術 Lv3】【奪刀術EX Lv1】


アーツ:【従魔術 使役術に統合】【召喚術(仮免許) 使役術に統合】【杖術(物理) 皆伝】【調薬(邪道) 初級】【錬金術(邪道) 初級】【火魔法(オーク) Lv3】【土魔法(ホビン) Lv3】【水魔法(ホビン) Lv0】【暗器術 初級 Lv2】【聖魔法 初級 Lv1】【死霊術(ネクロマンシー)(聖) Lv1 使役術に統合】【使役術 Lv1】


ユニークスキル:【スキルコレクター Lv7】


称号:『神に見込まれし者』『ホビンの友』『ツリーフェットの友』『霊魂の友』

『泉の精霊に祝福されし者』『泉の精霊の謝罪を受けし者』


従魔:シル(従魔術)

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