コミック版二巻発売記念挿話 レア魔石の拾い方
SROにおけるトップパーティの一角をなす「ワイルドフラワー」。魔法の実力者揃いの彼女たちであるが、実は彼女たちが引き受ける依頼の多くはモンスターの討伐ではなく……
「セン、どうだった?」
「やっぱり駄目、持ってないって」
「そうだよねぇ……」
「報酬のスキルに釣られて引き受けたけど……」
「この魔道具……思った以上に作成難度が高いよねぇ……」
彼女たちの金策手段は、基本的に魔道具作成と調薬である。なのでギルドで受ける依頼も、そういったものが中心になる。討伐依頼を受けない訳ではないが、そういうケースではモンスターのドロップ品目当ての事が多いので、肝心のドロップ品を提出させられる依頼は基本的に引き受けない。
そして今回彼女たちが引き受けたのは、魔道具を作製して納品する依頼であった。魔道具作製の難度も然る事ながら、彼女たちが難渋しているのはその材料であった。
「まさか複合属性の魔石なんてものが必要になるとは……」
「クエスト報酬が高い訳だよね……」
ナンの町辺りで得られるのかどうかすら怪しい素材にメンバーたちは挫けそうになるが、入手できそうな心当たりのある者がいない訳ではなかった。
「……魔石については、明日にでも心当たりを当たってみるわ。取り敢えず、他の材料を探してみましょう」
「明日?」
「何で今じゃなくて……あ、ひょっとして、例のワケありさん?」
カナとセンのリアフレが妙な事情に巻き込まれている事、その「事情」に関連してレア素材を得易くなっている事は、パーティメンバーにもそれとなく話してある。なのでその人物に相談するのかと察しを付けた者もいたが、
「えぇ。けど、貴女たちに隠しておきたいっていうよりも、本人が今、何に巻き込まれているか判らないのよ」
「巻き込まれ体質だもんね~」
「そ……そうなの?」
「えぇ、うっかりフレンド通信を入れたばかりに死に戻ったなんていうのは、さすがに後味が悪いから」
「簡単に死に戻るような事は無いと思うけどね~」
一体どういう人物なのかと興味は掻き立てられたが、メンバーたちは聞き分け良くカナに交渉を任せる事にした。
・・・・・・・・
「――という訳なんだけど、蒐君は持ってないかしら?」
「複合属性の魔石……って、属性が二つ以上付いてるやつだよね?」
「そう。持ってる?」
「おぃ待てよ要、そんな魔石があるなんて初耳だぞ?」
「そうね、私たちもこの依頼を受けて初めて知ったくらいだから」
「幾ら何でも、そんなレア素材がトンの町で落ちるのかよ?」
「ナンの町のギルドに張ってあった依頼だから、ナンの町までに得られる筈だとは思うのよね。ただ、結構なレアみたいだから、蒐君が持ってなければナントさんに訊ねてほしいんだけど……」
「持ってるよ」
「「「――え?」」」
あっけらかんと言い放った蒐一の台詞に、思わず呆気にとられる一同。ひょっとしたらとは思っていたが、こんなにあっさり首肯されるとは……
「で? どんな属性のやつが必要なの?」
「……おぃ蒐、その言い方だと、複数持ってるように聞こえるんだが……?」
「え? 持ってるよ? さすがに数は少ないけどさぁ……」
「「「はぁ!?」」」
複合属性の魔石など、いまだ掲示板にも流れた事の無い情報である。それを複数所持していながら情報を秘匿していた理由は……
「え? そんな珍しいもんなの? トンの町の南でカマドウマが落とすよ?」
「カマドウマ!?」
「え~……(嫌)」
「あら……でも、マッドカウマはドロップを落とさないとして嫌われていたんじゃなかったかしら?」
「嫌われてる理由はそれだけじゃないけどな」
マッドカウマ。トンの町の南のフィールドに出現する巨大カマドウマである。集団で出現する昆虫系モンスターで、悪食で何でも囓る性質を持つ。体液は腐蝕性で、斬り付けた鉄剣などは往々にして腐蝕の憂き目を見る。このモンスターに襲われて死に戻った場合、装備が囓られて耐久性が低下している事が多いため、見た目のキモさやドロップを落とさない事と相俟って、トンの町の嫌われ者モンスターの筆頭に挙げられている。遠距離から魔法を撃って斃すのが定番化しているが、そうするとドロップは得られずに……
「何だかさぁ、五頭ごとに魔石を落とすみたいなんだよね。で、偶~~に複合属性のやつが混じってる」
「……近接戦闘で戦う必要があるのかしら……?」
「魔法を使わないってのも条件かもな」
「物理一択?」
遠距離攻撃でなく近接戦闘で斃した場合のみ、マッドカウマは魔石を落とす。更に、魔法を使わず物理で仕留めた場合、低確率で複合属性の魔石を落とす仕様になっている。
「【錬金術】や【調薬】の材料になりそうな素材はできるだけ確保しておけってナントさんが言ってたし、魔石はシルの好物だから、売らずにとってあるんだよね」
「あぁ……そう言えば……」
「蒐は邪道スキルを持ってたっけな」
「うん。ベルさんからも、【錬金術】の素材について教わったし」
「ベルさんって……『黙示録』のベルさんか?」
「うん。βテストでは【錬金術】を取ったんだって。【調薬】の素材はバランド師匠から聞いてるし。今は使えなくても、取り敢えず持ってはおこうと思って」
「まぁ、そりゃ悪くない作戦だな」
「それで蒐君? 魔石は戴けるのかしら?」
「あ、うん。必要な属性を教えてくれたら、後で調べて送るよ。トレードってのを使えば良いんだよね?」
「おぉ……蒐はトレード機能を知ってたのか」
「ナントさんに教えてもらった。……僕の持ち込む素材は、トレード機能じゃ価格表かできないものが多いから、店頭に持ち込んでほしいって言われてるけど」
「あぁ……蒐のはレア素材が多いから……」
「レア素材って言うより、アレな素材よね」
「蒐君、普通と違う狩り方をしてるからかな?」
「……好きでやってるんじゃないやい」




